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29※フィンレー
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「それでロルフ。ダンスくらいはいいよな?」
一回くらいリリィと踊りたい。
婚約者へ尋ねた。
横ではリリィが首をブンブン振って嫌がる。
「……嫌がるならダメです。諦めてください」
「何でだよおおお」
「兄上、うるさいですよ。リリィ、代わりに私と踊りますよ?」
「え?」
「メランプス!こら!待て、あーっ!」
戸惑うリリィを連れてダンスの輪の中へ。
ぶすくれてるとロルフが通りがかりの給仕から受け取ったグラスを手渡してきた。
「周囲へのアピールならメランプスでも構いませんからね」
「俺の方が適任だろうが」
「フィンレー王子の方が適任なのは認めますよ」
こいつは背が伸びて一段と生意気になった。
「去年までちびっこだったくせに」
「お会いしない期間で頭ふたつ分ほど伸びました。目線は……俺の方が高そうですね」
に、と口許が歪んで笑ってやがる。
「生意気になった」
リリィと婚約したのも腹が立つ。
「今年の始めに婚約したんだったか。……去年からか?気づかなかった」
「リリィのことでしたら会った時からです。それよりご自身は?ご結婚もされたのに」
「はあ?サフィアとは結婚したがそれとこれとは別だ。お、俺はあのちんまいのを、下心とか邪な想いではなく、こう純粋にだな、」
純粋って何だと我ながら言いたくなるが本当にそうなのだから言いようがない。
アイツを構いたくてしょうがない。
だけど、もっと話をしたいというか側にいたいとか、見かけに惹かれてどうこうしたいという不純な気持ちじゃないんだ。
出会った時から変わらない、恐れもへりくだりもなく、まっすぐ見るあの目と態度が好ましい。
最初は気に入らなかったはずなのに、嘘のない態度を国では経験したことなかったから分からなかった。
去年、外交で大きな失敗をしてからは俺に対してそつなく素っ気なかったメランプスも素が出るようになり、以前より気ままな関係になって、嬉しくて。
リリィともそうなれそうだから、ついいまだに構いたくて仕方がなくなる。
「ちんまい?またそういう貶した物言いを。俺の婚約者に止めていただきたい」
「ああ、ちが、」
呆れた様子のロルフに慌てて否定する。
「誤解のもとです。今回のこじれのきっかけだと思われませんか?」
「うぐぅ、」
返す言葉がない。
嫌がるリリィに手をこまねいて遠慮してるうちに、姉の狙い通りこちらの社交界では遠巻きに扱われていた。
「リリィが頑なでもやりようはあります。今からでも牽制してもらえませんか?」
「例えば?」
「お任せいたします」
「……ふぅん」
「この国の社交界はあなたの手腕にかかってますので。良しなに。」
「珍しく煽てるか」
含んだ物言いに立場の表明を察した。
内政は俺が、社交界は姉のグラッセ、外交は弟のメランプス。
メランプスは唯一、腹違いで俺たちと比べて王家とは違う色なせいで弾かれている。
幼い頃は俺が王太子、メランプスがスペアのはずだったが。
父の寵愛は王家の色をまとう姉と俺だけに向けられ、家臣の大半は俺か姉のどちらにつくか、風見鶏のように忙しくくるくる回っている。
姉と俺の継承争いは各国で注目されて、横やりを入れてきている国もあるが、内政不干渉を気取るロルフの国は沈黙に徹していた。
「いいえ、事実ですよ」
「風見鶏、と言うわけではなさそうだが」
「干渉するつもりはありませんでしたよ?ですが、巻き込まれてきたもので」
「姉か」
「ええ。……お耳を」
耳を寄せるようにと肩を近づけてきたので応えるように顔を寄せた。
「次期王女となると宣言されました。俺を王配にするつもりだと。それについてフィンレー王子のご意見をお聞きしたい」
「それは、……話し合いが必要だな」
「メランプスも共に。よろしいですか?」
「了承した」
口許が緩む。
こいつは最も風見鶏を気取っていた弟を巻き込む気だとわかったから。
「察していただけて嬉しい限りです」
「なぁに、可愛い弟の頼みだ」
「は?」
「リリィが義理の妹だ。お前は遠くともいずれ俺の弟だろう?」
「……は?」
「……冗談だ」
言って後悔した。
やはり俺よりでかい弟はふたりもいらない。
メランプスで充分だ。
「……兄上とお呼びしましょうか?」
「いや、やめろ。冗談だから」
「フィンお兄様の方がよろしいですか?」
「やめろ、からかうな。それはリリィ用だ」
憤慨してるとロルフは肩を震わせて笑っていた。
「楽しそうですね」
リリィを連れて戻ったメランプスが加わり、ロルフがメランプスまで兄と呼んで遊ぶ。
訝しげなメランプスにロルフは笑いを押さえて答えた。
「親戚になるので、ふ、俺を弟だと、あはは」
「はあ?また訳のわからんことを」
「もうやめろと言ったんだ。こいつが勝手に、」
「ロルフ様が兄と呼ばれるなら私も呼ばなきゃ、ですかね?」
可愛らしく子首をかしげて小さく呟いたのを俺はばっちり見たし聞いた。
「よし!呼べ!ロルフ、お前は俺の弟だ」
「リリィが絡むと本当に短絡的に。兄上は落ち着いてください。ロルフは笑いすぎです。リリィ、燃料を投下するな」
「はい、ごめんなさい。メランプスお義兄様」
「メランプスが止めるからリリィが遠慮してしまったじゃないか。あ、そうだ。リリィ、手を出せ」
「え、はい」
すっと差し出した手を受け取ってキスを落とす。
「牽制はこんなもんだろ?こら、ぶすくれるな。」
「うう、……はい」
「大丈夫だよ、リリィ。このくらいなら挨拶だから」
ロルフに肩を抱かれただけで赤らめて扇に隠れた。
「相思相愛か」
リリィは隠れて見えないがロルフは満足げに笑っている。
「妹さんをお嫁にくださいと言いましょうか?」
「ロルフ、遊ぶな」
「楽しそうだな」
「兄上」
呆れるメランプスを交えて会話が弾む。
ロルフが弟でもありかもしれない、その方がリリィもなつくと一人頭の中で考えて過ごした。
一回くらいリリィと踊りたい。
婚約者へ尋ねた。
横ではリリィが首をブンブン振って嫌がる。
「……嫌がるならダメです。諦めてください」
「何でだよおおお」
「兄上、うるさいですよ。リリィ、代わりに私と踊りますよ?」
「え?」
「メランプス!こら!待て、あーっ!」
戸惑うリリィを連れてダンスの輪の中へ。
ぶすくれてるとロルフが通りがかりの給仕から受け取ったグラスを手渡してきた。
「周囲へのアピールならメランプスでも構いませんからね」
「俺の方が適任だろうが」
「フィンレー王子の方が適任なのは認めますよ」
こいつは背が伸びて一段と生意気になった。
「去年までちびっこだったくせに」
「お会いしない期間で頭ふたつ分ほど伸びました。目線は……俺の方が高そうですね」
に、と口許が歪んで笑ってやがる。
「生意気になった」
リリィと婚約したのも腹が立つ。
「今年の始めに婚約したんだったか。……去年からか?気づかなかった」
「リリィのことでしたら会った時からです。それよりご自身は?ご結婚もされたのに」
「はあ?サフィアとは結婚したがそれとこれとは別だ。お、俺はあのちんまいのを、下心とか邪な想いではなく、こう純粋にだな、」
純粋って何だと我ながら言いたくなるが本当にそうなのだから言いようがない。
アイツを構いたくてしょうがない。
だけど、もっと話をしたいというか側にいたいとか、見かけに惹かれてどうこうしたいという不純な気持ちじゃないんだ。
出会った時から変わらない、恐れもへりくだりもなく、まっすぐ見るあの目と態度が好ましい。
最初は気に入らなかったはずなのに、嘘のない態度を国では経験したことなかったから分からなかった。
去年、外交で大きな失敗をしてからは俺に対してそつなく素っ気なかったメランプスも素が出るようになり、以前より気ままな関係になって、嬉しくて。
リリィともそうなれそうだから、ついいまだに構いたくて仕方がなくなる。
「ちんまい?またそういう貶した物言いを。俺の婚約者に止めていただきたい」
「ああ、ちが、」
呆れた様子のロルフに慌てて否定する。
「誤解のもとです。今回のこじれのきっかけだと思われませんか?」
「うぐぅ、」
返す言葉がない。
嫌がるリリィに手をこまねいて遠慮してるうちに、姉の狙い通りこちらの社交界では遠巻きに扱われていた。
「リリィが頑なでもやりようはあります。今からでも牽制してもらえませんか?」
「例えば?」
「お任せいたします」
「……ふぅん」
「この国の社交界はあなたの手腕にかかってますので。良しなに。」
「珍しく煽てるか」
含んだ物言いに立場の表明を察した。
内政は俺が、社交界は姉のグラッセ、外交は弟のメランプス。
メランプスは唯一、腹違いで俺たちと比べて王家とは違う色なせいで弾かれている。
幼い頃は俺が王太子、メランプスがスペアのはずだったが。
父の寵愛は王家の色をまとう姉と俺だけに向けられ、家臣の大半は俺か姉のどちらにつくか、風見鶏のように忙しくくるくる回っている。
姉と俺の継承争いは各国で注目されて、横やりを入れてきている国もあるが、内政不干渉を気取るロルフの国は沈黙に徹していた。
「いいえ、事実ですよ」
「風見鶏、と言うわけではなさそうだが」
「干渉するつもりはありませんでしたよ?ですが、巻き込まれてきたもので」
「姉か」
「ええ。……お耳を」
耳を寄せるようにと肩を近づけてきたので応えるように顔を寄せた。
「次期王女となると宣言されました。俺を王配にするつもりだと。それについてフィンレー王子のご意見をお聞きしたい」
「それは、……話し合いが必要だな」
「メランプスも共に。よろしいですか?」
「了承した」
口許が緩む。
こいつは最も風見鶏を気取っていた弟を巻き込む気だとわかったから。
「察していただけて嬉しい限りです」
「なぁに、可愛い弟の頼みだ」
「は?」
「リリィが義理の妹だ。お前は遠くともいずれ俺の弟だろう?」
「……は?」
「……冗談だ」
言って後悔した。
やはり俺よりでかい弟はふたりもいらない。
メランプスで充分だ。
「……兄上とお呼びしましょうか?」
「いや、やめろ。冗談だから」
「フィンお兄様の方がよろしいですか?」
「やめろ、からかうな。それはリリィ用だ」
憤慨してるとロルフは肩を震わせて笑っていた。
「楽しそうですね」
リリィを連れて戻ったメランプスが加わり、ロルフがメランプスまで兄と呼んで遊ぶ。
訝しげなメランプスにロルフは笑いを押さえて答えた。
「親戚になるので、ふ、俺を弟だと、あはは」
「はあ?また訳のわからんことを」
「もうやめろと言ったんだ。こいつが勝手に、」
「ロルフ様が兄と呼ばれるなら私も呼ばなきゃ、ですかね?」
可愛らしく子首をかしげて小さく呟いたのを俺はばっちり見たし聞いた。
「よし!呼べ!ロルフ、お前は俺の弟だ」
「リリィが絡むと本当に短絡的に。兄上は落ち着いてください。ロルフは笑いすぎです。リリィ、燃料を投下するな」
「はい、ごめんなさい。メランプスお義兄様」
「メランプスが止めるからリリィが遠慮してしまったじゃないか。あ、そうだ。リリィ、手を出せ」
「え、はい」
すっと差し出した手を受け取ってキスを落とす。
「牽制はこんなもんだろ?こら、ぶすくれるな。」
「うう、……はい」
「大丈夫だよ、リリィ。このくらいなら挨拶だから」
ロルフに肩を抱かれただけで赤らめて扇に隠れた。
「相思相愛か」
リリィは隠れて見えないがロルフは満足げに笑っている。
「妹さんをお嫁にくださいと言いましょうか?」
「ロルフ、遊ぶな」
「楽しそうだな」
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