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タイロンの復讐
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※ざまぁ、流血、暴力表現多数
※Uターン推奨
※三人の騎士、その他使用人の処分はタイロンが対応しました。
胸くそわりぃ。
今日もあいつらの叫び声。
どいつもこいつも毎晩よくやるよ。
いや、当たり前か。
「殺すのはおやめくださいね。あとが控えておりますので」
「あ、……ああ。すまないね。つい、はあ、はあ、」
息があがってる。
体力のない御仁だ。
背中を向けて並んだ三人の男がひいひい言いながら泣いている。
手は壁の鎖に繋がれて。
毎晩、貴族様方が取っ替え引っ替えでこいつらの背中を打ち付ける。
愛娘への狼藉をしたこいつらへの鞭打ち。
「娘を思うと、はあ、手が、止まらない。こんな、こんな、はあ、」
仕方のないことと黙って頷いた。
牢の隅には同じ離宮で勤めた女達。
破れて糞尿のついたボロをまとって石畳に正座させている。
黙って男らを指させば、静かに立ち上がって男らの手当てをする。
「こんな奴らでも、手当てをするのか、この!」
「ぎゃっ!」
「ひぃ!」
ビシッと鞭を女達にも振るった。
止めるつもりはない。
もっとやれと内心は笑った。
この女達は王女の愚行を止めもせずに笑っていたのだから。
「明日は他の方々がお待ちです。まだ死なすわけにはいきません」
「はあ、はあ、わ、分かった」
私より年上の御仁は手の鞭を私に押し付けるとさっさと牢を出ていく。
ご令嬢達への醜聞を隠すため各家には秘密裏に事の詳細は告げた。
メイドや騎士達の証言で死んだと思っていた娘達は庭師の尽力で生きていると分かり、大勢が戻った。
残念な娘もいたが。
貴族達の鬱憤を押さえるために毎晩こうやって交代でこいつらをいたぶらせている。
ひっそりと娘達を助けた庭師は功績で罪は免れたのに。
同罪だと言ってここに来ようとする。
今は皇太子となったフィンレー王子とサフィア様の諌めで大人しく王子宮の庭師をしている。
昔から馬鹿だと思っていたが、本当に馬鹿だ。
あの馬鹿ヅラを見たい。
この汚い光景を見るよりマシだと他の近衛に始末を頼んで王子宮の中庭に向かった。
覆面の大男が呆れて俺を見る。
パッと見は俺より少し大きい。
でも、こいつは猫背だから。
本当は拳ひとつ俺より大きい。
「マタ来た。騎士は暇なのカ?」
首をかしげると覆面の布が揺れる。
「暇じゃねぇ」
「足を洗エ。庭が汚れル」
言われてブーツを見るとかなり血がついていた。
「どこで?」
「アッチだ。行ケ」
黙って水場で洗うと、あいつは血のついた芝生に水を撒いて丁寧に俺の足取りを洗っていた。
「悪い」
「別にイイ」
しばらくそうやって洗うのを見ていたら、パッと頭をあげた。
「“ごめん”を知ってルか?」
「あ?なんだよ、急に」
ユニコーン娘の母国語だ。
唐突に何を言い出した。
桶を持ったまま俺の目の前に。
「どうヤッテ、言葉を学んダ?」
「家令からだ。俺はもと貴族。没落したがな」
下地はあるということでメランプス王子が言葉を教えるように上官に指示したおかげで今じゃ数ヵ国語はペラペラだ。
筆記は難しいが。
いや、ちょっとは出来る。
本当に少しだが。
「……ソウか。知らなかっタ」
「言ってねぇから」
何勝手に落ち込んでるんだ。
桶を取り上げて池の水を汲む。
こいつの落ち込んだ顔は嫌いだ。
呑気に笑え。
昔みたいに。
俺はこいつの家族が好きだった。
美人なお袋さん、優しそうな親父さん。
ニコニコ笑うチビども。
へらへら笑うこいつもだ。
いつも呑気にうっすら笑っててからかうと眉がへにゃりと下がって、でもいつも余裕で。
チビどもや俺が何やっても、しょうがないなぁと呑気に構える気楽な奴。
幸せ一家なこいつらと違って没落寸前の我が家は地獄だった。
※Uターン推奨
※三人の騎士、その他使用人の処分はタイロンが対応しました。
胸くそわりぃ。
今日もあいつらの叫び声。
どいつもこいつも毎晩よくやるよ。
いや、当たり前か。
「殺すのはおやめくださいね。あとが控えておりますので」
「あ、……ああ。すまないね。つい、はあ、はあ、」
息があがってる。
体力のない御仁だ。
背中を向けて並んだ三人の男がひいひい言いながら泣いている。
手は壁の鎖に繋がれて。
毎晩、貴族様方が取っ替え引っ替えでこいつらの背中を打ち付ける。
愛娘への狼藉をしたこいつらへの鞭打ち。
「娘を思うと、はあ、手が、止まらない。こんな、こんな、はあ、」
仕方のないことと黙って頷いた。
牢の隅には同じ離宮で勤めた女達。
破れて糞尿のついたボロをまとって石畳に正座させている。
黙って男らを指させば、静かに立ち上がって男らの手当てをする。
「こんな奴らでも、手当てをするのか、この!」
「ぎゃっ!」
「ひぃ!」
ビシッと鞭を女達にも振るった。
止めるつもりはない。
もっとやれと内心は笑った。
この女達は王女の愚行を止めもせずに笑っていたのだから。
「明日は他の方々がお待ちです。まだ死なすわけにはいきません」
「はあ、はあ、わ、分かった」
私より年上の御仁は手の鞭を私に押し付けるとさっさと牢を出ていく。
ご令嬢達への醜聞を隠すため各家には秘密裏に事の詳細は告げた。
メイドや騎士達の証言で死んだと思っていた娘達は庭師の尽力で生きていると分かり、大勢が戻った。
残念な娘もいたが。
貴族達の鬱憤を押さえるために毎晩こうやって交代でこいつらをいたぶらせている。
ひっそりと娘達を助けた庭師は功績で罪は免れたのに。
同罪だと言ってここに来ようとする。
今は皇太子となったフィンレー王子とサフィア様の諌めで大人しく王子宮の庭師をしている。
昔から馬鹿だと思っていたが、本当に馬鹿だ。
あの馬鹿ヅラを見たい。
この汚い光景を見るよりマシだと他の近衛に始末を頼んで王子宮の中庭に向かった。
覆面の大男が呆れて俺を見る。
パッと見は俺より少し大きい。
でも、こいつは猫背だから。
本当は拳ひとつ俺より大きい。
「マタ来た。騎士は暇なのカ?」
首をかしげると覆面の布が揺れる。
「暇じゃねぇ」
「足を洗エ。庭が汚れル」
言われてブーツを見るとかなり血がついていた。
「どこで?」
「アッチだ。行ケ」
黙って水場で洗うと、あいつは血のついた芝生に水を撒いて丁寧に俺の足取りを洗っていた。
「悪い」
「別にイイ」
しばらくそうやって洗うのを見ていたら、パッと頭をあげた。
「“ごめん”を知ってルか?」
「あ?なんだよ、急に」
ユニコーン娘の母国語だ。
唐突に何を言い出した。
桶を持ったまま俺の目の前に。
「どうヤッテ、言葉を学んダ?」
「家令からだ。俺はもと貴族。没落したがな」
下地はあるということでメランプス王子が言葉を教えるように上官に指示したおかげで今じゃ数ヵ国語はペラペラだ。
筆記は難しいが。
いや、ちょっとは出来る。
本当に少しだが。
「……ソウか。知らなかっタ」
「言ってねぇから」
何勝手に落ち込んでるんだ。
桶を取り上げて池の水を汲む。
こいつの落ち込んだ顔は嫌いだ。
呑気に笑え。
昔みたいに。
俺はこいつの家族が好きだった。
美人なお袋さん、優しそうな親父さん。
ニコニコ笑うチビども。
へらへら笑うこいつもだ。
いつも呑気にうっすら笑っててからかうと眉がへにゃりと下がって、でもいつも余裕で。
チビどもや俺が何やっても、しょうがないなぁと呑気に構える気楽な奴。
幸せ一家なこいつらと違って没落寸前の我が家は地獄だった。
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