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おままごと
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ぽっと薄く明るくなった部屋、寝台の上には私と小さなエヴ嬢だ。
「ちょ、ちょ、ど、どういうことっすかぁ」
口を両手で覆って小声で問う。
「小さいがエヴ嬢だ。匂いは間違いない」
目を丸く見開きエヴ嬢の顔を凝視している。
「リーグ、リーグ、さっきお祭り楽しかったね!」
ぴょんぴょんと膝を跳ねて身を乗り出した。
「ラウルと腕相撲してたね、勝った?負けた?私、ダリウスとベアードの対決見てたから、二人を見そびれたの!ラウルね、教えてくれないの!だからリーグが勝ったのかなって!ねえ、どっちが勝ったの?」
「ほ、本当にエヴ嬢?」
「見て分かるでしょ?毎日会うのに?」
「いや、小さいし髪色が、黒じゃないから」
「黒は嫌い!いらない!切って!いらない!」
「わっ、だめっす!危ないっす」
パッと降りてリーグの腰の剣を握った。
「大丈夫だ、今は金色だ。よく見ろ」
リーグとの剣の取り合いに私も寝台から追い掛けて脇を抱えて抱き上げる。
「皆と一緒だぁ。良かった」
「危ないことはするな」
「怪我しないもん」
「リーグは?」
はっと顔を上げて眉が下がった。
「ごめんなさい、リーグ」
「いえ、大丈夫っす。それにしても顔立ちも、声も。この感じは本当にエヴ嬢っすね。でも、どういうことっすか?子供を連れ込んだのかと焦りました」
「なぜこうなったか分からん」
「お耳は?私、ふわふわが好き」
背中から抱き上げていたが、身体をねじって首にしがみついてくる。
「わかった」
しゅっと獣化して耳と尻尾が生える。
身体もむくむくと膨らみ一回り大きくなった。
「お耳~」
喜ぶエヴ嬢を抱え直して耳を触らせた。
考えても埒が明かないと諦めて夕飯を食べることにした。
着席し、エヴ嬢は抱っこしたまま好きに触らせた。
中休みの差し入れと夕飯、リーグの差し入れた摘まみと酒。
豪勢な夕飯だ。
「エヴ嬢も食べるか?」
「いらない、お耳と尻尾がいい」
「リーグは?」
「少し頂きます。食べてから来たんであんまり入んないっすけど。エヴ嬢は肩にこれかけてください」
テーブルクロスの布を肩から引っかけた。
「小さいったってかなり際どい格好っす。ひと前でダメっす」
ずっと膝に乗せていたから気づかなかったが、夏用の薄い布地は透けていたらしい。
「…見たか?」
「いいえ、子育ての常識っす。女の子は小さいうちから身なりの整え方を教えていくんです。今にも殺しそうな視線はやめてください」
ふん、と鼻を鳴らすとエヴ嬢からフォークを取り上げられた。
肉を刺して私の口許へ運ぶ。
「団長、あーん」
機嫌を直して、ぱくっと口にする。
「旨い」
「次、どれがいい?」
「同じのだ」
はーいと返事をしてまた同じ肉を刺して私の口許へ運ぶ。
また同じように食べた。
「うおお、濃厚すぎる、甘すぎて見てらんないっす。酒、貰いますよ。団長もいるっしょ?」
顔を真っ赤にしたリーグがグラスの支度をしてワインを注いでいた。
「あーもう、マジでビックリしすぎて酔いが冷めました。目の前はこんなだし。また酔った方が気楽っす」
「私も眠気が飛んだ」
起こされて見たら小さいエヴ嬢が泣いていたんだ。
リーグに話すと私と同じように混乱していた。
「リーグ、あーん」
「いや、いいっす」
しょぼんと項垂れたので頭を撫でる。
「付き合ってやれ」
「…殺そうとしないならいっすよ」
「ごっこ遊びだ」
「子供のですね。こっちも分かってますよ。でも保護者が怖くて。エヴ嬢、あーん、もぐ、」
「リーグは腹一杯だからあとは私にしてくれ」
「はーい。団長、あーんして」
「ゆっくり頼む。酒も飲みたい」
「お酒、どうぞ」
グラスを取って渡してくれるので取ろうとしたら口許に寄せる。
「ゆっくり頼む」
そう言うと慎重に傾けて飲ませてくれた。
「いたせりつくせりっすね」
「お世話楽しい」
「旦那様のお世話っすか?」
「んー?違うよぉ?お父様とお母様はしないもん」
「エヴ嬢がしてあげたいお世話をすればいいんすよ。夫婦は自由だから。旦那様が喜べばそれでオッケーっす」
「団長は旦那様ね?」
尋ねられて、ぎゅんと胸が高鳴る。
小さいが初めての旦那様呼びだ。
心の中でリーグでかしたと盛大に誉めた。
「ああ、嬉しい」
尻尾がバタバタやかましい。
「団長が旦那様で私がお嫁さん、リーグは?」
「俺は団長の部下っす」
「子供だよ、あーんしてあげるの」
「…まさかごっこ遊びだとか言わないっすよね?」
「うん、そう」
「うーん。やっぱりだいぶ幼いんすね?」
「…そうだな」
エヴ嬢のはしゃぐのをなだめて世話は私が受けることにした。
尻尾が静かになった。
「で、今日はなんでこんなに小さくなったんすか?」
「分かんない。夢だから?」
「夢なんすか?」
「だって天幕で寝てたもん。気づいたらここだし、団長いるし。夢でしょ?」
「ああっ、影送りか」
急に思い出したそれに大きな声が出た。
「何すか、それ」
「色魔の能力だ。分身を相手に送る。色魔の分身も下位種の少年だった」
「じゃあ、これはエヴ嬢の分身すか?」
「多分な。あいつは性格は変わらないようだったが」
エヴ嬢の幼さが分からん。
「会いたくて来たんすかね」
「泣いててわからなかったが、ジェラルド伯とロバート殿と何かあったらしい。嫌われたと不安がっていた」
「エヴ嬢、喧嘩したんすか?教えてくれます?」
じわぁっと目に涙が浮かぶ。
「喧嘩してない。でも、今日お祭りでせっかく会えたのに、一緒にいてくれなかった。こんなの初めて、ふぇ、ずっとお姫様たちのところで、ひっく、お姫さまがいいんだ」
リーグは何か思い当たったようで納得して頷いた。
「ジェラルド伯とロバート様はお客さんの相手で忙しかったみたいっすね。本当はエヴ嬢の側が良かったんだと思いますよ?ちらちら様子を見ていたから」
「本当?」
「はい。お二人ともエヴ嬢が団員らとニコニコしてるのを眺めてましたよ。ちゃんと見ました。それに、今日のお客さんは気むずかしいっしょ?すぐ怒るし。エヴ嬢の側にやりたくなかったんですよ。お二人ならきっとそうお考えだと思いますよ?」
「…うん、あのお姫様ずっと怒ってた。変なの。来なきゃいいのに」
少し静かになって尻尾を抱いて大人しくなった。
「ちょ、ちょ、ど、どういうことっすかぁ」
口を両手で覆って小声で問う。
「小さいがエヴ嬢だ。匂いは間違いない」
目を丸く見開きエヴ嬢の顔を凝視している。
「リーグ、リーグ、さっきお祭り楽しかったね!」
ぴょんぴょんと膝を跳ねて身を乗り出した。
「ラウルと腕相撲してたね、勝った?負けた?私、ダリウスとベアードの対決見てたから、二人を見そびれたの!ラウルね、教えてくれないの!だからリーグが勝ったのかなって!ねえ、どっちが勝ったの?」
「ほ、本当にエヴ嬢?」
「見て分かるでしょ?毎日会うのに?」
「いや、小さいし髪色が、黒じゃないから」
「黒は嫌い!いらない!切って!いらない!」
「わっ、だめっす!危ないっす」
パッと降りてリーグの腰の剣を握った。
「大丈夫だ、今は金色だ。よく見ろ」
リーグとの剣の取り合いに私も寝台から追い掛けて脇を抱えて抱き上げる。
「皆と一緒だぁ。良かった」
「危ないことはするな」
「怪我しないもん」
「リーグは?」
はっと顔を上げて眉が下がった。
「ごめんなさい、リーグ」
「いえ、大丈夫っす。それにしても顔立ちも、声も。この感じは本当にエヴ嬢っすね。でも、どういうことっすか?子供を連れ込んだのかと焦りました」
「なぜこうなったか分からん」
「お耳は?私、ふわふわが好き」
背中から抱き上げていたが、身体をねじって首にしがみついてくる。
「わかった」
しゅっと獣化して耳と尻尾が生える。
身体もむくむくと膨らみ一回り大きくなった。
「お耳~」
喜ぶエヴ嬢を抱え直して耳を触らせた。
考えても埒が明かないと諦めて夕飯を食べることにした。
着席し、エヴ嬢は抱っこしたまま好きに触らせた。
中休みの差し入れと夕飯、リーグの差し入れた摘まみと酒。
豪勢な夕飯だ。
「エヴ嬢も食べるか?」
「いらない、お耳と尻尾がいい」
「リーグは?」
「少し頂きます。食べてから来たんであんまり入んないっすけど。エヴ嬢は肩にこれかけてください」
テーブルクロスの布を肩から引っかけた。
「小さいったってかなり際どい格好っす。ひと前でダメっす」
ずっと膝に乗せていたから気づかなかったが、夏用の薄い布地は透けていたらしい。
「…見たか?」
「いいえ、子育ての常識っす。女の子は小さいうちから身なりの整え方を教えていくんです。今にも殺しそうな視線はやめてください」
ふん、と鼻を鳴らすとエヴ嬢からフォークを取り上げられた。
肉を刺して私の口許へ運ぶ。
「団長、あーん」
機嫌を直して、ぱくっと口にする。
「旨い」
「次、どれがいい?」
「同じのだ」
はーいと返事をしてまた同じ肉を刺して私の口許へ運ぶ。
また同じように食べた。
「うおお、濃厚すぎる、甘すぎて見てらんないっす。酒、貰いますよ。団長もいるっしょ?」
顔を真っ赤にしたリーグがグラスの支度をしてワインを注いでいた。
「あーもう、マジでビックリしすぎて酔いが冷めました。目の前はこんなだし。また酔った方が気楽っす」
「私も眠気が飛んだ」
起こされて見たら小さいエヴ嬢が泣いていたんだ。
リーグに話すと私と同じように混乱していた。
「リーグ、あーん」
「いや、いいっす」
しょぼんと項垂れたので頭を撫でる。
「付き合ってやれ」
「…殺そうとしないならいっすよ」
「ごっこ遊びだ」
「子供のですね。こっちも分かってますよ。でも保護者が怖くて。エヴ嬢、あーん、もぐ、」
「リーグは腹一杯だからあとは私にしてくれ」
「はーい。団長、あーんして」
「ゆっくり頼む。酒も飲みたい」
「お酒、どうぞ」
グラスを取って渡してくれるので取ろうとしたら口許に寄せる。
「ゆっくり頼む」
そう言うと慎重に傾けて飲ませてくれた。
「いたせりつくせりっすね」
「お世話楽しい」
「旦那様のお世話っすか?」
「んー?違うよぉ?お父様とお母様はしないもん」
「エヴ嬢がしてあげたいお世話をすればいいんすよ。夫婦は自由だから。旦那様が喜べばそれでオッケーっす」
「団長は旦那様ね?」
尋ねられて、ぎゅんと胸が高鳴る。
小さいが初めての旦那様呼びだ。
心の中でリーグでかしたと盛大に誉めた。
「ああ、嬉しい」
尻尾がバタバタやかましい。
「団長が旦那様で私がお嫁さん、リーグは?」
「俺は団長の部下っす」
「子供だよ、あーんしてあげるの」
「…まさかごっこ遊びだとか言わないっすよね?」
「うん、そう」
「うーん。やっぱりだいぶ幼いんすね?」
「…そうだな」
エヴ嬢のはしゃぐのをなだめて世話は私が受けることにした。
尻尾が静かになった。
「で、今日はなんでこんなに小さくなったんすか?」
「分かんない。夢だから?」
「夢なんすか?」
「だって天幕で寝てたもん。気づいたらここだし、団長いるし。夢でしょ?」
「ああっ、影送りか」
急に思い出したそれに大きな声が出た。
「何すか、それ」
「色魔の能力だ。分身を相手に送る。色魔の分身も下位種の少年だった」
「じゃあ、これはエヴ嬢の分身すか?」
「多分な。あいつは性格は変わらないようだったが」
エヴ嬢の幼さが分からん。
「会いたくて来たんすかね」
「泣いててわからなかったが、ジェラルド伯とロバート殿と何かあったらしい。嫌われたと不安がっていた」
「エヴ嬢、喧嘩したんすか?教えてくれます?」
じわぁっと目に涙が浮かぶ。
「喧嘩してない。でも、今日お祭りでせっかく会えたのに、一緒にいてくれなかった。こんなの初めて、ふぇ、ずっとお姫様たちのところで、ひっく、お姫さまがいいんだ」
リーグは何か思い当たったようで納得して頷いた。
「ジェラルド伯とロバート様はお客さんの相手で忙しかったみたいっすね。本当はエヴ嬢の側が良かったんだと思いますよ?ちらちら様子を見ていたから」
「本当?」
「はい。お二人ともエヴ嬢が団員らとニコニコしてるのを眺めてましたよ。ちゃんと見ました。それに、今日のお客さんは気むずかしいっしょ?すぐ怒るし。エヴ嬢の側にやりたくなかったんですよ。お二人ならきっとそうお考えだと思いますよ?」
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少し静かになって尻尾を抱いて大人しくなった。
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