人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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胡麻すり

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「貴族の交流についてはまだ妻が許してないので申し訳ない。しかしその時は娘をお願いします。ところでお飲み物のお代わりはいかがですか?会話が弾んで喉が乾いたでしょう」
ジェラルド伯がやんわりと興奮し始めたペリエ嬢を抑えて会話を変える。
「そうだ。お父様、お話し合いは済んだんですか?」
「興味あるのか?」
「話し合いが済んだらお姫様とお友達になる約束なんです」
目を丸くしたジェラルド伯がエヴとペリエ嬢を交互に見つめて、本当かと両者に問いかけた。
二人は頷いて、のんびり構えたエヴと違い不安げなペリエ嬢は拝むよう手を組んで話し合いをした父親達を見つめた。
納得したジェラルド伯はエヴへ微笑みを向けた。
「ああ、実のある会話が出来た」
「お姫様、約束通りお友達ですね。よろしくお願いします」
「お友達に。いずれお、お友達以上に、」
「ペリエ嬢のご帰還はいつ頃ですか?いつまでもこんな戦地にいるのは大公と宰相が不安になられるでしょうから」
言わせるかと話を遮って保護者に問いかけた。
両手を組んでエヴにみとれるペリエ嬢は私の妨害に気にせずぼんやりしていた。
頭の中は行き過ぎた妄想でいっぱいのようだ。
「明日にでもここを出立するつもりだが、人員が足らんと言う。困ったことだ」
「…人員が、ですか?」
不機嫌な大公の話が分からず聞き返した。
「宰相はともかく、か弱いペリエをワイバーンに乗せるのは無理だろう。馬車と人員を頼んだのに手の空いている貴族籍の者がいないとか」
ぽんとテーブルを軽く叩いて思い付いたと顔を緩めた。
「カリッド、そなたのところから人員を出せ。私も共に帰るから50程いる」
馬車も3台とのたまう。
「そうですね、そのくらいは当然かと」
思わず隣で胡麻をする宰相に白い目を向けた。
「…この戦地の状況からその人数ですか?」
「お前も無理と言うのか?」
「出来かねます」
きっぱり断るとジェラルド伯も頷いた。
「無理にと仰るなら仕方ありません。近隣に魔獣を逃してしまうかもしれませんが仕方のないことです。お二方のために。もし、説明を求められたらこちらは正直に事の顛末を周知いたしましょう。彼らも知る必要がありますから」
不機嫌な大公にしれっと脅すと宰相が慌てて取りなす。
「あちらから、迎えの者がもうすぐ来ますので。ワイバーンに乗ったので私共が追い越したので!大公、それまで滞在することにしましょう!」
「戦地と言うことで、王都ほどのおもてなしは出来ません。それでよろしければ構いません」
「ペリエの側仕えも返してもらおう。世話がおらんと困るのでな」
「よろしいですよ。保釈金をお支払いただければ」
正面を見据えたまま睨むように目を細め、にぃと歪む笑みを張り付けた。
自分の食事のマナーに気がそぞろになったエヴと違い、ジェラルド伯の心境を理解したらしいロバート殿の微かなため息を聞き逃さなかった。
もう取り返しがつかないようだ。
「まだ金を無心するか。…ふん、そのくらい構わん」
背もたれに寄りかかり尊大に答えた。
項垂れて隠した宰相のほっとした顔に大公は公爵家の財布と心の中で名付けた。
「では、先程の話し合いの額をいただきます。実質二倍のお支払いです」
「なんだと、」
やおら前のめりに屈んで目の色を変えた。
「ペリエ嬢ひとりであの額。罪人となるあの四人と女騎士は同額です。バラ売りにいたしましょうか?まとめての方がお得ですけど」
「そ、そんな、そんな高額な」
あまりの額に卒倒しかける宰相と目をつり上げて気色ばむ大公を相手に微笑む。
「父上、お言葉が」 
「おおっと、これはいかん。失礼いたしました。私は額をそれから変えるつもりはございませんが、」
ロバート殿のからかいめいた取りなしに大袈裟に手を叩いて破顔する。
「半日と掛からないのですから。ワイバーンでお帰りなればよろしいこと。それ以上、大公の懐も痛みませんよ」
「がめつくもっ!まだむしる気か!」
唾を飛ばしながらがなりたて、どんと強くテーブルを叩きつけたせいではねた皿がひっくり返る。
「大型討伐を専門とするふたりが負傷して人も金も足りません。よそからの中隊規模の傭兵団を検討しているところです。彼らふたりでそのくらいはかかってますからね」
いくらかかるのか正確に弾いて、いない間の戦闘員の人数と費用を口にすると、妥当ですよねと再確認する。
「うるさい!お前は昔から気に食わなかったのだ!」
「存じております」
「その態度が気に食わん!」
「大公!落ち着かれませ!」
「はは、今さらですか?」
「クレイン辺境伯!煽らないでください!」
立ち上がってジェラルド伯に詰め寄り、憤然と座ったまま大公をあしらい、追い掛けて宰相が大公の背中にしがみついている。
王宮育ちの華奢な大公と恰幅のいいジェラルド伯のいがみ合いが始まり、思った以上の激しい口争いに目を丸めた。
「先程もこのようなやり取りだったのですか?」
「はい、お二人とも因縁がありますから」
「…どんな?」
「…嘘でもいいから付き合って大公の妹君を誉めればいいのにいつも知らん顔で無視していたそうです」
昔は王宮仕込みのおべっかが苦手だったそうですと小さく答えた。
「調子に乗ったあちらも母のことを貶したりと余計こじれまして。おかげで冷遇されたクレインは独自に発達するしかありませんでした。先程もエヴを引き合いに出して揉めてました」
「…馬鹿か?」
「どちらが馬鹿でしょうかね」 
呆れた顔で良い歳をした二人の口争いを眺めた。
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