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42※近衛隊長
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顔立ちは見えないが髪の色が似ている。
体格も。
だが、会場の女性より奥様の方が華奢だ。
それにもっと所作が拙い。
似ているだけではっきりとご本人ではないと分かった。
まず王宮のプライベートから要警護の奥様が無断で出ることは出来ないし、リカルド王子に今夜も捕まっている。
ついでにべったりなわりに、まだ幼い奥様にリカルド王子が気遣って清い関係なのは王宮のプライベートに仕える者達の公然の秘密だ。
お二人の仲が良いということは憚ることではないので色んな所から漏れているが。
何しろ、あのあり得ないほど奥手な奥様がこのような場所をいるはずがないのだ。
あそこにいるのは奥様を騙る偽物。
こういうことかとリカルド王子の思惑とルーラの仕事を察して首を揺らした。
「驚いたっしょ?バカだよねー。今度はあの尻の軽い伯爵家の末子とご結婚だ。娼婦並みって噂の。俺もお相手願いたいが貢がねぇと相手しねぇ。昔から守銭奴な女」
「……なんだと?」
「本当に知らないのか。……いや、貴族にはそうだろうな。あんたは外国にいたって言うし。俺達の業界じゃそれなりに知られてんの。男ならありだけど伯爵家の未婚の女がパトロン探しなんてさ。どうやってだまくらかしたのか、結婚してしかも王子のご寵愛を受けてるらしいよ。そんな女を可愛がって女見る目がねぇよなぁ。王家もそんなの内側に入れて何考えてんだか」
「……あの女性はかなり若い頃から仕事をしてるのか」
「まあ、ばらしたのは最近かな。半年くらい前にペラペラと得意気に話してた。仕事は俺と変わらないくらい。3年前から。たしか今の歳は15?16だったかな。……逆算したらデビュー前からかぁ。すげえね。さすがの俺もそこまで出来なかったわ」
小さくなる声に同情が混じっている。
「お前はなぜこれで稼ごうと思った?」
「……金。それ以外何がある?」
「貴族か?」
「だったら何?早くそれを渡してもらえる?」
刺々しい態度で手を向けたので金貨を乗せた。
「他に仕事を探せ」
割りきれるほど達観していないのを察してつい言ってしまった。
「同情するなら使ってくれよ」
そう言われてもな。
近衛の私に男娼の小飼がいても使い道はない。
黙って手を払う。
どこかに行けと意味を込めて。
「金の分は働くから。お宅、ここで商売か何か考えてんだろ?疎すぎるのはヤバいっしょ」
見ため通りの商人と思ったらしい。
口許に曖昧な笑みを浮かべると男は一方的に名乗り連絡先を教えて階段を下りていく。
やっと行ったとため息をこぼす。
あれだけ王家の批判を私にこぼした。
見ためで商人と判断して王宮勤めの者だと察していなかった。
それに私のマスクに隠れた顔からは分からなかったのだろう。
イラついているのに。
好んで遊ぶ者ならまだしも自分より若い男女が蔑みや憎しみを隠して肌を晒すことが気に食わない。
マスクの隙間から男の見せた目の光が淀んでたことも不快だった。
耳に残る恨みのこもった低い声の響き。
あの男の境遇に同情してしまう自分も。
だからこういう場は嫌いだ。
微かに黒いモヤがかかった気分の落ち込みを払って場に溶け込むルーラを上から眺めた。
ルーラの目当てが奥様の偽物だと思うのだが付かず離れずの距離で他の男と過ごしてる。
今の男達に見せる微笑みが偽物と理解しているのに腹が立つ。
あの視線の先にいる男どもが羨ましくて殴りたいし、彼女にもどろどろとした感情が湧いてくる。
「……チッ」
平静を保てず舌打ちをしてしまう。
大きめの仮面で良かった。
口許は手で覆えば全て隠せる。
今は人を殺しそうな顔をしてるはずだ。
ここから彼女の様子は見えるが男達に囲まれているのを指を咥えて眺めるだけ。
何が謝礼に充分だというのか。
あの根性悪の王子め。
リカルド王子を恨みたくなるが、しばらくすると気が晴れてきた。
目立つのを避けるために飾り階段の他に会場を移動しているとその都度、ルーラが私を探して視線をさ迷わせ、こちらを見つけるとまた顔をそらす。
それだけなのに何度も繰り返すそれに頼られていると実感してくすぐったい心地にさせられた。
「ん?」
初めてルーラから視線を合わせて手招きをして見せた。
目立たないように隠しながら明後日の方向に指を向ける。
さした先は偽者の側にいる若い男。
少し地味なマスクと服装だが艶のある金髪とスタイルのよさで偽者の回りの中でも目立っていた。
遠目から見て分かるほど何度も熱心に口説く。
今夜の相手に気に入ったのか偽者は満更でもない様子で男を側に置いて、今は合図と同時に二人が連れだって移動を始め、それに合わせてルーラも動き始めた。
そして呼ばれたなら私もだ。
見える位置から付かず離れずを意識して三人のあとを追った。
体格も。
だが、会場の女性より奥様の方が華奢だ。
それにもっと所作が拙い。
似ているだけではっきりとご本人ではないと分かった。
まず王宮のプライベートから要警護の奥様が無断で出ることは出来ないし、リカルド王子に今夜も捕まっている。
ついでにべったりなわりに、まだ幼い奥様にリカルド王子が気遣って清い関係なのは王宮のプライベートに仕える者達の公然の秘密だ。
お二人の仲が良いということは憚ることではないので色んな所から漏れているが。
何しろ、あのあり得ないほど奥手な奥様がこのような場所をいるはずがないのだ。
あそこにいるのは奥様を騙る偽物。
こういうことかとリカルド王子の思惑とルーラの仕事を察して首を揺らした。
「驚いたっしょ?バカだよねー。今度はあの尻の軽い伯爵家の末子とご結婚だ。娼婦並みって噂の。俺もお相手願いたいが貢がねぇと相手しねぇ。昔から守銭奴な女」
「……なんだと?」
「本当に知らないのか。……いや、貴族にはそうだろうな。あんたは外国にいたって言うし。俺達の業界じゃそれなりに知られてんの。男ならありだけど伯爵家の未婚の女がパトロン探しなんてさ。どうやってだまくらかしたのか、結婚してしかも王子のご寵愛を受けてるらしいよ。そんな女を可愛がって女見る目がねぇよなぁ。王家もそんなの内側に入れて何考えてんだか」
「……あの女性はかなり若い頃から仕事をしてるのか」
「まあ、ばらしたのは最近かな。半年くらい前にペラペラと得意気に話してた。仕事は俺と変わらないくらい。3年前から。たしか今の歳は15?16だったかな。……逆算したらデビュー前からかぁ。すげえね。さすがの俺もそこまで出来なかったわ」
小さくなる声に同情が混じっている。
「お前はなぜこれで稼ごうと思った?」
「……金。それ以外何がある?」
「貴族か?」
「だったら何?早くそれを渡してもらえる?」
刺々しい態度で手を向けたので金貨を乗せた。
「他に仕事を探せ」
割りきれるほど達観していないのを察してつい言ってしまった。
「同情するなら使ってくれよ」
そう言われてもな。
近衛の私に男娼の小飼がいても使い道はない。
黙って手を払う。
どこかに行けと意味を込めて。
「金の分は働くから。お宅、ここで商売か何か考えてんだろ?疎すぎるのはヤバいっしょ」
見ため通りの商人と思ったらしい。
口許に曖昧な笑みを浮かべると男は一方的に名乗り連絡先を教えて階段を下りていく。
やっと行ったとため息をこぼす。
あれだけ王家の批判を私にこぼした。
見ためで商人と判断して王宮勤めの者だと察していなかった。
それに私のマスクに隠れた顔からは分からなかったのだろう。
イラついているのに。
好んで遊ぶ者ならまだしも自分より若い男女が蔑みや憎しみを隠して肌を晒すことが気に食わない。
マスクの隙間から男の見せた目の光が淀んでたことも不快だった。
耳に残る恨みのこもった低い声の響き。
あの男の境遇に同情してしまう自分も。
だからこういう場は嫌いだ。
微かに黒いモヤがかかった気分の落ち込みを払って場に溶け込むルーラを上から眺めた。
ルーラの目当てが奥様の偽物だと思うのだが付かず離れずの距離で他の男と過ごしてる。
今の男達に見せる微笑みが偽物と理解しているのに腹が立つ。
あの視線の先にいる男どもが羨ましくて殴りたいし、彼女にもどろどろとした感情が湧いてくる。
「……チッ」
平静を保てず舌打ちをしてしまう。
大きめの仮面で良かった。
口許は手で覆えば全て隠せる。
今は人を殺しそうな顔をしてるはずだ。
ここから彼女の様子は見えるが男達に囲まれているのを指を咥えて眺めるだけ。
何が謝礼に充分だというのか。
あの根性悪の王子め。
リカルド王子を恨みたくなるが、しばらくすると気が晴れてきた。
目立つのを避けるために飾り階段の他に会場を移動しているとその都度、ルーラが私を探して視線をさ迷わせ、こちらを見つけるとまた顔をそらす。
それだけなのに何度も繰り返すそれに頼られていると実感してくすぐったい心地にさせられた。
「ん?」
初めてルーラから視線を合わせて手招きをして見せた。
目立たないように隠しながら明後日の方向に指を向ける。
さした先は偽者の側にいる若い男。
少し地味なマスクと服装だが艶のある金髪とスタイルのよさで偽者の回りの中でも目立っていた。
遠目から見て分かるほど何度も熱心に口説く。
今夜の相手に気に入ったのか偽者は満更でもない様子で男を側に置いて、今は合図と同時に二人が連れだって移動を始め、それに合わせてルーラも動き始めた。
そして呼ばれたなら私もだ。
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