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60※ルーラ
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食事を終えたあとも楽しい気分が名残惜しくてもう少しとお願いした。
「構いませんよ」
それだけ言って、他に話題はありますかねぇと首を捻る。
しばらく考え込んで無言になるけど待っている間も楽しい。
次はどんな話かしらと待ち遠しかった。
「若いあなたを楽しませる話題が思いつきませんねぇ」
今もこうやって困った顔を見るのも楽しい。
「奥様のお話はとても楽しゅうございました」
「面白い人でしたから。彼女には長いこと楽しませてもらいました」
「ふふ」
次は息子さんと娘さんのお話。
母親似の息子さんと執事長に似た娘さん。
「性格が、ですか?」
「性格がです」
どんなお子さんかしら。
もっと聞きたくて質問を重ねようとしたら、ノックが鳴った。
「ディアナかな。心配してましたから」
そう言ってすぐに扉を開けてくださる。
「おや?こんばんは?」
「え?」
そこにいたのは近衛隊長。
「……どうしてライオネル殿がここに?」
妬むな。
ジト目をやめろ。
楽しかった気分が一気に冷めた。
髪にさしたままのコームの髪留め。
何だかんだで気に入って気分が良かったのにそれも色褪せてつまらないように感じ、ふつふつと腹が立ってきた。
「近衛隊長、あなた様こそお立場を忘れてなぜここにいらっしゃったんですか」
つい刺々しい物言いをしてしまう。
「……心配だったからだ」
「だからと言ってこんな時間に女性の部屋を尋ねるのは非常識では?」
「そうか」
では、こいつは?と問う視線で執事長に眼差しを向けたから、不躾な態度に執事長の眉がぴくりとはねた。
「誤解されませんように。食事を届けに来たんです。リカルド王子への報告が必要ですので診察も」
「診察?何か怪我をしたのか?!」
「違います。普段から執事長は私共の健康管理をしているんです。それだけです」
根掘り葉掘り聞きたがるのも大きすぎる怒鳴り声もうんざり。
「医師ではないのに?」
「ある程度の見立ては出来ますので」
訝しげな近衛隊長に執事長が短く答えた。
「……多才ですね」
「リカルド王子のもとで勤めるなら当然のことかと」
伸ばした背筋、尊大な物言い。
何か執事長を怒らせた。
こんな厳しく接する姿は一度も見たことがない。
「食器を下げる予定でしたが、あなた様がいるなら私はお目付け役に残らねばなりません」
執事長の言葉を聞いて悔しそうに少し顔を歪めて思案してる。
何を期待していたのよ。
若い男女を二人っきりにするなんてあり得ないもの。
私にとっても助け船でほっとした。
「それでご用事は?お顔を見るだけでしょうか?暗くなってから女性の部屋に押し掛けてまでされたのはどういうおつもりなのでしょう」
執事長の問いかけにうっと声を詰まらせてもたついてる。
「……また私の顔を見せ物にする気でしたの。ご覧になって楽しいのですか?」
今だって目元は腫れぼったくてヒリヒリしてる。
そんな顔を見られて怒ったのにまた見に来たのか。
性懲りもなく。
鈍いにも程があるわ。
腹の底から低い声が出た。
「ち、違う、そうじゃない!」
「それでしたらお帰りください。心配だからとそれを免罪符に女の部屋に押し掛けられるのは迷惑です」
「だから、その、」
もたもた言い訳ばかりして部屋から出ていかない。
「私一人で部屋にいる時でなくて良かったです。私まで貞操観念が疑われますもの」
「そうですね。私がここにいて幸いと言いますか。しかし近衛隊長の訪問は初めてですか?あなたが望んだんわけではないのですね?」
「はいっ」
「そうですか。それはよろしくありませんね。別の部屋を考えましょう」
「え?」
「は?」
「リカルド王子には進言いたします。特にルーラは奥様のために必要な侍女です。それがこのように地位の高い厳つい男に迫られているなど見過ごせません」
口上をあっという間に捲し立てて近衛隊長を追い払うと、ついてきなさいと私を呼んでさっさと歩きだした。
「構いませんよ」
それだけ言って、他に話題はありますかねぇと首を捻る。
しばらく考え込んで無言になるけど待っている間も楽しい。
次はどんな話かしらと待ち遠しかった。
「若いあなたを楽しませる話題が思いつきませんねぇ」
今もこうやって困った顔を見るのも楽しい。
「奥様のお話はとても楽しゅうございました」
「面白い人でしたから。彼女には長いこと楽しませてもらいました」
「ふふ」
次は息子さんと娘さんのお話。
母親似の息子さんと執事長に似た娘さん。
「性格が、ですか?」
「性格がです」
どんなお子さんかしら。
もっと聞きたくて質問を重ねようとしたら、ノックが鳴った。
「ディアナかな。心配してましたから」
そう言ってすぐに扉を開けてくださる。
「おや?こんばんは?」
「え?」
そこにいたのは近衛隊長。
「……どうしてライオネル殿がここに?」
妬むな。
ジト目をやめろ。
楽しかった気分が一気に冷めた。
髪にさしたままのコームの髪留め。
何だかんだで気に入って気分が良かったのにそれも色褪せてつまらないように感じ、ふつふつと腹が立ってきた。
「近衛隊長、あなた様こそお立場を忘れてなぜここにいらっしゃったんですか」
つい刺々しい物言いをしてしまう。
「……心配だったからだ」
「だからと言ってこんな時間に女性の部屋を尋ねるのは非常識では?」
「そうか」
では、こいつは?と問う視線で執事長に眼差しを向けたから、不躾な態度に執事長の眉がぴくりとはねた。
「誤解されませんように。食事を届けに来たんです。リカルド王子への報告が必要ですので診察も」
「診察?何か怪我をしたのか?!」
「違います。普段から執事長は私共の健康管理をしているんです。それだけです」
根掘り葉掘り聞きたがるのも大きすぎる怒鳴り声もうんざり。
「医師ではないのに?」
「ある程度の見立ては出来ますので」
訝しげな近衛隊長に執事長が短く答えた。
「……多才ですね」
「リカルド王子のもとで勤めるなら当然のことかと」
伸ばした背筋、尊大な物言い。
何か執事長を怒らせた。
こんな厳しく接する姿は一度も見たことがない。
「食器を下げる予定でしたが、あなた様がいるなら私はお目付け役に残らねばなりません」
執事長の言葉を聞いて悔しそうに少し顔を歪めて思案してる。
何を期待していたのよ。
若い男女を二人っきりにするなんてあり得ないもの。
私にとっても助け船でほっとした。
「それでご用事は?お顔を見るだけでしょうか?暗くなってから女性の部屋に押し掛けてまでされたのはどういうおつもりなのでしょう」
執事長の問いかけにうっと声を詰まらせてもたついてる。
「……また私の顔を見せ物にする気でしたの。ご覧になって楽しいのですか?」
今だって目元は腫れぼったくてヒリヒリしてる。
そんな顔を見られて怒ったのにまた見に来たのか。
性懲りもなく。
鈍いにも程があるわ。
腹の底から低い声が出た。
「ち、違う、そうじゃない!」
「それでしたらお帰りください。心配だからとそれを免罪符に女の部屋に押し掛けられるのは迷惑です」
「だから、その、」
もたもた言い訳ばかりして部屋から出ていかない。
「私一人で部屋にいる時でなくて良かったです。私まで貞操観念が疑われますもの」
「そうですね。私がここにいて幸いと言いますか。しかし近衛隊長の訪問は初めてですか?あなたが望んだんわけではないのですね?」
「はいっ」
「そうですか。それはよろしくありませんね。別の部屋を考えましょう」
「え?」
「は?」
「リカルド王子には進言いたします。特にルーラは奥様のために必要な侍女です。それがこのように地位の高い厳つい男に迫られているなど見過ごせません」
口上をあっという間に捲し立てて近衛隊長を追い払うと、ついてきなさいと私を呼んでさっさと歩きだした。
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