転生少女は悪役になりたかった −音と精霊ともう一人の私−

桜月 翠恋

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第一節

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私は…元々、ただの学生だった…

私、桜木さつきは一般人でした

幼い頃から独りぼっちだった
共働きだった両親とは、小学生になった頃から一切会わなくなった
そのせいなのか、幼い頃から本を好んで読んでいた

一人でいることが当たり前だった私は学校でも小説を読んでいた

どんな本も基本は変わらない

主人公やヒロインは何があっても幸せになる…
どんなことがあっても…


そんな物語のヒロイン達が嫌いだった

むしろ…
ただ一人でも…どれだけ蔑まれても…凛としているライバル達の方が好きだった

そんな中でも悪役令嬢に転生するお話はとても好きだった

元々、目つきが悪かった私…長く黒い髪も合わさり、人から怯えられていた
だからなのか、私は悪役令嬢達が好きだった
いい意味でも悪い意味でも、自分を貫く彼女達は私の憧れだった

桜木 さつき
それが私の名前…だった

高校生だった私はあの日、帰り道の階段から落ち…死んだ

薄れる意識の中で、最後に見たのは…
涙を流すクラスメイトだった

そして今に至るわけだけど…


フカフカのベッドから起き上がり、周りを見る
ピンクと白をメインにした家具や小物
昔の私ならこんな物は使わなかっただろう…


「…変な感じ」


棚にあるぬいぐるみを抱きしめ、フッ…と息を吐く

この世界はよくありの転生物と同じように転生したあとの世界

この世界について整理しよう


「ノートは……」


カタン…と引き出しを開き、可愛らしいノートを取り出した

昔の私なら使わないであろうピンク色のノートをみて苦笑する
色んなところに日本譲りの設定のあるこの世界

よく知っている世界だ


「まずは……」


私は独り言のように呟きながらカリカリとこの世界のあらましを書き始めた



この世界は私が死ぬ前にやっていた乙女ゲームの世界だ

【シンフォニーストーリーメモリーズ】
それがこのゲームのタイトル

確かパッケージに書かれていたあらすじは…


『音楽に乗せて魔法を使う国
ある日を境に魔法の中でも一番強い力を持ったを歌えるもの…魔法が使える人が消えてしまった!?
国王は慌てて音楽を紡げる若者を貴族の通う学園に集め、この国の再復興を考える

シオン・メロディア…彼女は歌を歌える希少な存在だった!
令嬢ではないシオンを国王は無理矢理学園に入れることに…

パートナーと共に音楽を紡ぎこの世界の真相を知ろう!パートナー以上の関係になると……?』


今更ながらなんでこの乙女ゲームが好きだったのだろうか…
まぁ、内容的にもなかなか面白かったし

登場人物はたしか…

攻略人物は三人

【ユーリオ・ファゴット】
第一王子であり、水色のサラサラとした髪が特徴。瞳は黒い
確か腹黒


【ハーリス・ファゴット】
第二王子であり、ユーリオとそっくりな顔立ち。黒髪がよく似合う。瞳は青い
ユーリオがずっとヘラヘラ笑ってるのに対して、ハーリスはいつも眉間にシワを寄せてる


【アイリス・ソノリティア】
隣国の王子だが、魔法の才能を認められ、ユーリオに張り合うかのように学園に通い始めた
緑の瞳に、薄く赤い髪が特徴
女ったらし
私とは縁遠い人


この三人だったはず
そしてこのゲームにもそれぞれ婚約者…つまり悪役令嬢…もとい、ライバル令嬢が登場する


こちらも三人

【マリアーナ・コンチェ】
セミロングの薄い金髪で瞳はきれいな黄緑。
一番ルールなどを厳守する。
貴族ではないシオンに不信感を持っていた
ユーリオの婚約者


【フリージア・アリア】
腰までの長い髪は氷のような薄い水色。体が弱く、あまり表に出ていない。瞳の色も薄い水色
ザ、儚い女性
ハーリスの婚約者

【ジニア・グレース】
長い茶髪をポニーテールにしており、文武両道の珍しい令嬢。瞳は黒
どこか男まさりに感じるが本来はとても優しい方らしい
アイリスの婚約者


「このくらいかな?」

そしてノートの隅にもう1人書きたす


【シオン・メロディア】
ヒロイン。弱い。ふわふわな桃色の髪を肩のあたりで束ねている。瞳は薄い桃色
髪留めに桜の形をした石がついている。
とにかく弱い



そしてそっとノートを閉じる


「まず最悪なのが私がルートを覚えてないこと」


そう呟き溜息を漏らす


どのライバル令嬢も、バッドエンドはあったはず
しかも…どれも生死に関係する話……


それはフラグを折るからいいとして


「一番の問題は……」


震える手で手鏡をとり、自分の顔を見る


そう、そこにあるのは
悪役ともライバル令嬢ともとれない

優しいタレ目にふわふわした


そう……私、桜木さつきは
このゲームのヒロイン…シオン・メロディアに転生していたのだ…


「最悪………」


前世の私の極悪顔と言われた釣り目は??
前世の私の長い黒髪は?

鏡の向こうのシオンである私とにらめっこをしながらうなだれる


「どうせなら最推しのマリアーナ様になりたかったァァあ!」

「いや、ジニア様でもあり??…フリージア様だと体弱いから…うーん…」


ノートにカリカリと書きなぐりながら私は溜息を漏らす


「ヒロインに転生したからって浮かれてハーレム作ろうとして仕返しされるヒロインにも、ふわふわしたヒロインにもなりたくなぁぁあい!!」


バンッと机を叩き立ち上がる


「そう、そうなの、最悪なのはもう一つ…」


学園で配られている予定表を取り出し、日付を確認する


「なんで……」








「なんで記憶を取り戻すのがエンディングまであと一年ちょっとしかない2年生の春なのよぉお!」


予定表を机に叩きつける
その指先に明日の予定イベントがあることも知らずに………






 
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