水華館−水の中の華たち−

桜月 翠恋

文字の大きさ
10 / 13
女神編

8葬目−初恋の華−

しおりを挟む
ジメジメと蒸し暑い中、雨さえも蒸発してるんではないかと勘違いしそうになるくらい、茹だるような暑さの中

今日も館は開いていた


日高は意気揚々と館に入っていく

今日はとても面白い話を聞けると感じていた

なぜなら




とある噂が流れていたからだ



「女神様にそっくりな少女が館に現れた」



という噂が…




「女神様ー!」


日高は勢い良く館に入る
だが、周りの客が注目してるのは別のものだった

客が集まってる方へ日高も向かうと、その人だかりの中心には
小学生くらいであろう少女が立っていた

しかもその少女は
女神とうり二つだった…

『日高さん、いつも入るときはお静かにと…』

「女神様!?」

いつの間にか背後に立っていたのは女神だった

『彼女がきになりますか?』

女神は何かを確かめるように日高を見つめる

「いいえ、噂が気になっただけです。俺が気になってるは一つだけですから」


いつもと変わらない人懐っこい笑顔…
その笑顔に女神は小さく安堵の息を吐く

『今日は彼女に語ってもらう日なの、あわよくば、次期館長になってもらうために練習してもらおうと思いまして』

「なるほど、彼女は女神様の妹か何かですか?」


その言葉に女神はそっと目を伏せる

「女神様?」

「そこまでになさってくださいな…」

女神と似ているが少し大人びた、女性の色香のようなものをまとわせた声が聞こえ日高は振り返る

そこには少し厳しい目をした女神そっくりの女性が立っていた
ただ、彼女と女神が違うのは

彼女は白ベースの服で、女神が黒ベースの服ということだけだった

『あっ……申し訳ございません…』

「記者さん、申し訳ございませんが、あまり彼女をいじめないでくださいな、うちの自慢のなのですから」


「すみません」

咄嗟に頭を下げる日高、気にもとめないように白い服の女性は立ち去った

暫く訪れる静寂、正確には少女の取り巻きは少女に夢中なのだが……


何故かその中心である少女は瞳を輝かせ日高を見つめている

『行きましょうか、日高さん。イベリス、来なさい。』

「はぁい、女神様」

ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべ、イベリスと呼ばれた少女はかけだす


三人はいつものように別室に入る

イベリスと呼ばれた少女は嬉しそうに微笑む

「では、記者様、私のお話をきいてくださいませ!」

少し舌っ足らずな愛らしい声
日高は優しく微笑む


「では、今日のお話は…こちらのお花です」



女神がカーテンを開けるとそこには
幼い少女が眠っていた
顔にはソバカスの跡がある


「女神様…いくら私が罪を侵したからと言って!こんな!!」


イベリスが女神に掴みかかる
女神は微笑んだまま変わらない


「貴方だって罪人のくせに!!記者様に私のお話をしろというのですか!?」


イベリスの言葉に日高は首を傾げる


「イベリスさん?のお話?彼女はなくなっているのでは…」


『えぇ、亡くなってますよ。だからこうして罪を償うためにここにいます』


その言葉とともに、イベリスの姿が水槽の中の少女に変わる


「いや、戻りたくない、やっと見つけたの、謝れるの!消えたくない!」


イベリスは暴れるが、水槽の中のツタが彼女を水槽に引きずり込んだ…



『イベリスは…初恋の子を殺したんです。正確には未遂、でしたけど…』


日高は目の前の光景についていけず、口をつぐむ


『日高さんは、幼い頃、殺されかけたことがありませんか?』


「一度、階段からつき落とされたことが…」


『イベリスの思い人は貴方ですよ、幼い頃の』



水槽の中でもう喋らないイベリスを見て
日高は無言だった


『この館の役目は2つあります

一つは華の願いを叶えること

もう一つは
華のことを管理すること』


女神はそっとイベリスの水槽にカーテンをかけた



『彼女の役目は管理でした。
ですが、自分が華だと言ってしまった時点で契約違反なのです』


「女神は…」


『はい?』


「あなたも…そう、なのですか?」


『答えることはできません、が…私もずっと人を探しています』



そのときの女神の笑顔はどこか悲しげで

日高は、女神のことを知りたいと



そう、強く願うようになった











可哀想なのはイベリスなのか
眠れない華たちなのか……




















イベリス

…初恋の思い出
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百万年の孤独

プレアデス
ミステリー
世界中の人々から愛されるスーパーアイドル、ヨハン。しかし彼の心は虚ろだった。かれは成功したK−POPアイドルで、すべてを手に入れたかのように思われていた。しかし気づいたときには、一番大切なひとは彼のそばから永遠に去っていた。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

処理中です...