蔑まれた令嬢の幸せ -少女は幸せを探して旅をする-

桜月 翠恋

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冒険の始まり

三つ編みの女性

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次の日、シアンへまた伝言を飛ばすが一向に宿の前にも現れない…
少し寂しいが、ギルドへと一人で歩みを進める


「シアンさん、ありがとうございました」


シアンの名前が聞こえて振り返ると少し離れたところで昨日の女性と話しているシアンがいた

やましいことはないのに、こそっと物陰に隠れてしまう

何をしてるんだろう


「いや、世話になった」

「シアンさんに助けて貰ったんです。このくらい当然ですよ」

「そっか、じゃあ俺行かなきゃ」

「昨日のあの人と旅を続けるんですか?」

「うん、俺の相棒だから」

「…私じゃ、だめですか?」


ごくっと息をのむ
きっと彼女が旅に出たいと言ったらシアンは断らないだろう
だって、同じなんだから

ぎゅっと自身の目を閉じる
そうなったら私は一人で旅を続けよう
死ぬのは決まった運命なんだ。一人で旅をして死んでしまったらその時はその時だ

そう思い、立ち去ろうとする


「ごめん、アリアと約束してるから。それじゃ、気をつけて」


その声と共に、私を見つけたのか、走ってくる


「アリア、待っててくれたんだ、お待たせ」

「…シアン、良かったの?」

「ん?なにが?」

「あの子のこと…」


んー、と悩んだあと、私の方を見て無邪気な笑みを浮かべた


「俺が約束してるのお前だし」

「で、でも」

「気にすんなよ。親父にも言われてるし、アリアの保護者代わりなんだから」


わしゃっと頭を撫でられ、それ以上は何も言えなくなった

そして二人してギルドへ向かった

ギルドで換金が終わり、昼ごはんを食べることになった


テラスの席に座るとシアンが私の分もメニューを頼んでくれたらしい


「ここは小麦粉使ったもんと香辛料がなんか美味いらしい」

「どういうこと」

「知らん」


二人でくすくす笑っていると、料理が運ばれてくる

湯気の立っている温かいパスタだった

トマトのソースに、サーモンの切り身だろうか?
美味しそうだった

シアンの方はホワイトソースにサーモンの切り身
二人して満腹になるまで食べた

デザートもいる?なんて聞かれたけれどこんなに食べたのは初めてで、もう入らない、とお断り

シアンは美味しそうにバニラのアイスを食べていた


「ねぇ、シアン。シアンはどこまで行きたいの?」

「んー、満足するまでどこまででも」

「なにそれ、終わりがないじゃない」

「そう、終わりがない旅に出たかったんだ」

「なんで?」

「……そうだなぁ」


ふっ…と海が見える方に顔を向けるシアン
そのシアンの横顔がとても寂しそうで…
黙ってシアンの言葉を待つことしかできなかった


「…母さんの仇をうつことしか、ずっと考えてなかった」

「うん」

「でもさ、旅をして、各地を回ったら気分が晴れるよって親父に言われて…それで見てこいって」

「ダイさんが…?」

「そう、親父は昔冒険者で、それで母さんに会ったらしい」

「…瞳で、ですか?」

「瞳はあとから知ったらしいよ。親父は母さんとも暫く旅をして、あの街で俺を産んで育ててくれた」


私の方に向き直るシアン
その瞳はどこか子供のようで、でも、とても大人びていた


「母さんや親父の見た景色をみて、それで大人になりたい。ちゃんとした意味で」

「…それで終わりの無い旅、ですか」

「そっ。アリアは?」

「私は……」


幸せを見つけたくて
なんてバカげてるだろうか?
うまく説明できない気がして口ごもる


「…見たことないものに触れてみたくて」

「なるほどなぁ」

「はい」

「だから楽器見たとき子供みたいにはしゃいでたわけか」

「は、はしゃいでません!」


はいはい、と笑われてしまう
この旅がそう簡単に終わらないことがわかって少し胸が暖かくなった

きっとこの先もこの人と旅をできるのならまだ




まだもう少しだけ



生きていたい…そう思えた日だった
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