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行き交うは 夢か現か 春の宵 3
第3章 崖からダイブ
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走るように下りながら、ふたりとも、獣の気配を感じていた。囲まれたと思った瞬間、眼前を影がよぎった。後ろからは 松明の群れが追ってきていた。よぎった影は狼で、松明の群れは山賊に違いない。
火ノ川国 令和時代
岩に打ち寄せるは波はるか下、波しぶきから立ち上がる断崖絶壁の頂点に幅狭く、連続する急カーブを、エンジン音高く、空色のボルシェがはしり抜ける。はずだった。曲がり損ね、空色の車体は真っ逆さまにダイブしてゆく。ガードレールを突き抜けた衝撃でエアバッグが膨らみ ドライバーは気を失っていた。岩と逆巻く波に呑まれれば 車体は潰れ、ちぎれ、命もまた。
ひしゃげたガードレールから 落下してゆくボルシェを見つめる青年が現れた。先ほどまで、誰もいなかったはず。なんで、俺はここにいる。すでに死んでいるのか?どうやって車から脱出した?むしゃくしゃした気持ちを持て余してアクセルを踏み込んでいたのに、妙にすっきりしている。まるで生まれ変わったかのように。
先ほどまで空色のポルシェを運転していた「大葉 智也」に見える。
おととい、智也は新幹線で移動中だった。江戸川駅発車間際に隣の窓側席に乗ってきた青年、ひと目見たときから、タイブだった。天王洲行き最終新幹線。そいつは乗車してすぐから眠ってしまい、天王洲に着いても起きなかった。智也は起こそうとしたが、起きないので、見知らぬ青年を背負い、自分と青年の荷物を持って降りた。もともと駅前のホテルに予約を入れてあったので、背負ったままホテルに入り、機械でチェックインした。相手は智也より ひと回り小柄で、しなやかな肢体、真珠のつやをもつ肌、ウエーブのかかったショートカットに紫のメッシュを入れていた。荷物チェックで、「神野 真」と知れた。真をベッドに横たえ、智也は自分だけシャワーを浴びて ベッドに入った。真を脱がせて、背中から抱きしめた。
翌朝、智也は
「君の名前、聞いていいかな?」と問いかけると
《行きずりだろ。これっきりだ。お互い名乗る必要ないよね。》
「俺に拾われてラッキーだったんだ、礼くらい言っても罰はあたらないぜ。いいか身ぐるみ剥がれるとか、男娼に売られるとか、内臓目当てに海外に売られるとか、危険な闇ルートは存在するんだ」
今後も付き合いたいと思っているのに、この塩対応に 思わず声を荒げ恩着せがましく言い返した。後味悪く別れた。後味の悪さが尾を引いて 崖っぷちを走る隘路なのに アクセルを踏み込んでしまった。
再び江戸川時代
天狗大巻と武士は前に狼、後ろに山賊が迫り、万事窮すと思ったそのとき、大巻に山姥の声が聞こえた。大巻は瞬時に声の通り、背中の羽を拡げ、武士をひっつかむと 飛んだ。狼の群れを越えて山すそに着地した。自分でも 大の男を掴んで、こんなに飛翔できるとは思っていなかった。八鬼山の夜の山道を越えることができた。
山姥夜叉波は、お守り袋を作る前から、天狗の衣の襟元に「山姥の髪の毛」を仕込んでおいた。この繋がりを使って、天狗に山姥の力を貸してやった。が、反動で、山姥は時空の割れ目に吸い込まれ、21世紀青年の中に出現した。
火ノ川国 令和時代
岩に打ち寄せるは波はるか下、波しぶきから立ち上がる断崖絶壁の頂点に幅狭く、連続する急カーブを、エンジン音高く、空色のボルシェがはしり抜ける。はずだった。曲がり損ね、空色の車体は真っ逆さまにダイブしてゆく。ガードレールを突き抜けた衝撃でエアバッグが膨らみ ドライバーは気を失っていた。岩と逆巻く波に呑まれれば 車体は潰れ、ちぎれ、命もまた。
ひしゃげたガードレールから 落下してゆくボルシェを見つめる青年が現れた。先ほどまで、誰もいなかったはず。なんで、俺はここにいる。すでに死んでいるのか?どうやって車から脱出した?むしゃくしゃした気持ちを持て余してアクセルを踏み込んでいたのに、妙にすっきりしている。まるで生まれ変わったかのように。
先ほどまで空色のポルシェを運転していた「大葉 智也」に見える。
おととい、智也は新幹線で移動中だった。江戸川駅発車間際に隣の窓側席に乗ってきた青年、ひと目見たときから、タイブだった。天王洲行き最終新幹線。そいつは乗車してすぐから眠ってしまい、天王洲に着いても起きなかった。智也は起こそうとしたが、起きないので、見知らぬ青年を背負い、自分と青年の荷物を持って降りた。もともと駅前のホテルに予約を入れてあったので、背負ったままホテルに入り、機械でチェックインした。相手は智也より ひと回り小柄で、しなやかな肢体、真珠のつやをもつ肌、ウエーブのかかったショートカットに紫のメッシュを入れていた。荷物チェックで、「神野 真」と知れた。真をベッドに横たえ、智也は自分だけシャワーを浴びて ベッドに入った。真を脱がせて、背中から抱きしめた。
翌朝、智也は
「君の名前、聞いていいかな?」と問いかけると
《行きずりだろ。これっきりだ。お互い名乗る必要ないよね。》
「俺に拾われてラッキーだったんだ、礼くらい言っても罰はあたらないぜ。いいか身ぐるみ剥がれるとか、男娼に売られるとか、内臓目当てに海外に売られるとか、危険な闇ルートは存在するんだ」
今後も付き合いたいと思っているのに、この塩対応に 思わず声を荒げ恩着せがましく言い返した。後味悪く別れた。後味の悪さが尾を引いて 崖っぷちを走る隘路なのに アクセルを踏み込んでしまった。
再び江戸川時代
天狗大巻と武士は前に狼、後ろに山賊が迫り、万事窮すと思ったそのとき、大巻に山姥の声が聞こえた。大巻は瞬時に声の通り、背中の羽を拡げ、武士をひっつかむと 飛んだ。狼の群れを越えて山すそに着地した。自分でも 大の男を掴んで、こんなに飛翔できるとは思っていなかった。八鬼山の夜の山道を越えることができた。
山姥夜叉波は、お守り袋を作る前から、天狗の衣の襟元に「山姥の髪の毛」を仕込んでおいた。この繋がりを使って、天狗に山姥の力を貸してやった。が、反動で、山姥は時空の割れ目に吸い込まれ、21世紀青年の中に出現した。
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