行き交うは 夢か現か 春の宵【山姥は捜す 時空を渡り時代を世界を)

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行き交うは 夢か現か 春の宵  4

第4章 崖からダイブ~その後

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 火ノ川国 再び令和時代

 いつの時代に出現したか わかるまで、わずかだが時が要る。
 崖下、逆巻く波と岩に激突する直前 ドライバーの青年に憑依して、車から飛び出した。いま 崖上の隘路に立ち、眺めおろしているところだ。
 江戸川時代の娘に憑依したときは、娘は自ら命を絶とうとしていたので、山姥のコントロールを素直に受け入れた。が、今回は、突然の事故死、本人もなにが起きたかわかっていない。青年の体の中に、本人の混乱と山姥が入り込み、ややこしい事態になっている。99パーセント死亡確率だが、甚だしく肉体が損傷する直前の一瞬に憑依して損傷を免れる。

 その上、出現時代が21世紀。日本でいうなら、昭和初期くらいまでは、山姥も馴染みやすい。人々が百鬼夜行を信じ、闇夜を体感しているからだ。令和の時代、人の暮らすところに闇夜は存在しない。百鬼夜行もはるかかなたの昔話だ。

 憑依される人間の方からすれば 長期間は耐えれらない。当然山姥も承知している。
この青年の 直近の心残りを解いて成仏させなくては、と思っている。
この青年の心残りは、それゆえに事故にいたった事故前々日の逢瀬にある。行きずりの少年のような青年をさがすとしよう。崖下に落下したボルシェを運転していた青年智也に 同じ体内に存在する山姥夜叉波が、「行きずりの相手」の情報を共有した。
 山姥は 天狗の子孫の情報網に問い合わせた。江戸川時代までは 奥深き山に集団で暮らす拠点があったが、令和の時代では、天狗の子孫たちは、集団で暮らすものはいなくなり、各々人間に交じって暮らしていた。付喪神も骨董品とともに生き延びていた。

 足利義満公遺愛品「漆塗り螺鈿青貝四方盆」の付喪神から 行きずり青年の居所がもたらされた。
「漆塗り螺鈿青貝四方盆」は 京都川にある古刹「猩々寺」宝物殿に保管されていたが、江戸川での美術展に出品され、観覧者の中に行きずり青年を見つけ、烏に後をつけさせて住まいを把握していた。

 ボルシェダイブ事故の「大葉 智也」青年は 青山の高級スーパー紀ノ川屋で、偶然を装って 行きずりの少年のような青年「神野 真」に再会を果たした。

 真は自分の部屋で目覚めた。どう考えてもおかしい。あいつを自分の部屋に入れるなんて、おかしい。覆い被さってくるあいつを 跳ね除けられなかったなんておかしい。見かけは、俺はあいつより小柄だが、半妖の俺の方が腕づくで負けるなんておかしい。で、あいつはどこにいる? 

キッチンを覗くと 老婆がいる。俺は夢を見ているのか?銀髪を後ろで束ねた老婆がいる。
「朝飯をつくってやったぞ。食べよう。」と言われた。なにがどうなっている?ここは俺の部屋か?それに、妖の匂いがする。

真は老婆とテーブルに向かい合って座った。
「おぬし 半妖であろう。」
《そうゆう お前は、妖か?》

老婆は山姥であり、心配せずとも おぬしを食ったりせぬ と言い、智也青年の成仏に手を貸してくれたと礼を言われた。
お互い探し人がおり、互いの得意時代の情報を交換することで、手を組むことになった。
半妖は 妖のように 時を渡って 他の時代にゆくことが出来ないので、半妖「神野 真」にもメリットはある。山姥「夜叉波 弥生」にとっても、苦手な令和時代の助っ人(半妖)が出来た。

山姥は 令和時代の情報は持っていたが、体験は初めてで、この時代の暮らしに慣れるまで、半妖のところに無理やり同居することにした。お金は違うし、スマホも カードも 初めて見るものばかりで、学びが必要だった。令和での 山姥のしのぎは、これからなので、半妖には 小判で支払った。金(きん)はどの時代でも通用した。神野青年名義で、夜叉波用のスマホも買ってもらった。
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