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最果ての森編
10. 決意
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赤ん坊が起きたので、スープを食べさせた。沢山食べていたし、時折笑顔も見られたから、味は悪くなかったのだろう。
再び寝かせてしばらくすると、赤ん坊がいる部屋で魔力が動いているのに気づいた。何かが起きているのだろうか。あの子は大丈夫なのか?
急いでドアを開けた。
「おい、大丈夫か?」
「あう?」
変わった様子はないか見ていると、キョトンとした顔で見つめ返された。
「魔力が動く気配がしたから様子を見に来た。お前がやったのか?」
「あう!」
元気な返事だ。
「···そうか。お前、魔力に関して知識があるのか?」
「···あう?」
「無いなら教えよう」
「あう?あうあう!」
「ただ今日はもう遅い。もう一眠りして、明日になってからだ」
「あう···」
この子は俺と違って表情が豊かだ。言葉は分からないが、何となくシュンとした感情は伝わってきた。
「そんな顔をするな。明日教えてやるから」
また笑顔が見たくて、頭を撫でてみる。
ふわふわした髪が心地良い。
「おやすみ」
いい夢を見て欲しい。
···明日、あいつらに来てもらおう。
そう思って連絡を取る。
明日の食事の準備をしていると、声が聞こえてきた。
···泣いている?
様子を見に行ってみると、赤ん坊が泣いていた。小さな声ですすり泣く姿に胸が締め付けられる。
こんなに小さいのに、何故こんなにも辛そうなのか。
俺がいる。
俺は味方だ。
ここには、お前を悲しませる者はいない。
そんな思いを込めて頭を撫でる。
しばらくすると落ち着いたのか、柔らかな笑みを浮べて寝息を立て始めた。
この子がこの森に現れたのには、何か意味があるのだろうか。俺がすべきことは何なのだろうか。
この子にとっての最善が何かはまだ分からないが、俺が出来ることはしてあげたい。
頬に残った涙を拭い取り、部屋を後にした。
翌日。
赤ん坊と食事をしていると、あいつらがやってきた。相変わらずうるさい。まあ、こんなでも頼りになる心強い奴らだ。本人達には言わないが。
この赤ん坊は、喋れはしないがこちらの言っていることはきちんと理解しているようだ。そのことは事前にこいつらに伝えている。
だから皆で自己紹介をした。ここで俺は名乗っていなかったことに気がついた。
まあ、そういうこともある。
こいつら、特にライを呼んだのは、鑑定スキルを持っているからだ。
ライが言うには、この子に名前は無いらしい。ライの笑顔に身構える。こういうとき、何か企んでることが多い。
「だからさ、ジル。君が名前を付けてあげたらどうかな?」
案の定、突拍子もない提案をされる。
俺が名付け?そんなこと、したことが無い。そもそも子供を持ったことがない。
突然の提案に驚き戸惑う。俺が名前を付けていいのだろうか?
「···お前は、それでいいのか?」
断られたらどうしようかと不安に思いながら訊ねる。
「あう!」
返ってきたのは元気な返事。
「···そうか」
俺が付けていいのか。嬉しくて思わず頭を撫でる。
「···ウィル」
森で見た眩い光を思い出す。
「ウィルシュアード、古代語で『神からの光』という言葉からとった」
「あう!」
由来を説明すると、愛らしい笑顔を見せてくれた。
「あうあうー!!」
俺の都合の良い解釈かもしれないが、ありがとうと言われた気がした。
「ふふ、ウィル君かあ。いい名前だね」
またこの笑顔。今度は何だ。
「ジルはさ、昨日ウィル君が森で寝ている所を保護したんだよね?」
「ああ」
「この子の近くに何か落ちてなかったかい?もしくは人がいた形跡とか」
「ないな」
「だよねえ。この辺りは森の最深部に近いから、人が入って来れるとは思えない。だからリイン様が転生者であるウィル君をここに送り込んだと考えるのが一番自然なんだ」
まあ、そうだろう。あの光を見た者として、それが真実だと確信している。
「ということはね、彼には親がいないと思うんだ」
ライの笑みが深まる。
「だからさ、ジル。ウィル君の父親になってみない?」
想定を超えた提案にピシリと固まる。だが、それはいい考えだ、と自然に思えた。何より、俺がこの子の成長を近くで見たいと思っている。自分にこんな感情があったことに驚くが、悪い気はしない。
「···ウィル、お前はどうしたい?」
俺の気持ちは決まっている。
あとはウィル次第だ。
「あう!」
黒い瞳がキラキラと輝いている。
「そうか。···それなら、お前は俺の息子だ」
「あうあう!」
最初は好奇心から保護したつもりだが、今では愛しく思う。
おそらくこの子は前世で辛い経験をしたのだろう。だからこの世界では、幸せをたくさん感じて欲しい。そのために俺が出来ることは、何でもやろう。
そう心に誓った。
ウィルは俺の愛しい息子だ。
ステータスに表示されたのは気恥しいが、まあ、その通りだからな。
···あまり笑うな。
再び寝かせてしばらくすると、赤ん坊がいる部屋で魔力が動いているのに気づいた。何かが起きているのだろうか。あの子は大丈夫なのか?
急いでドアを開けた。
「おい、大丈夫か?」
「あう?」
変わった様子はないか見ていると、キョトンとした顔で見つめ返された。
「魔力が動く気配がしたから様子を見に来た。お前がやったのか?」
「あう!」
元気な返事だ。
「···そうか。お前、魔力に関して知識があるのか?」
「···あう?」
「無いなら教えよう」
「あう?あうあう!」
「ただ今日はもう遅い。もう一眠りして、明日になってからだ」
「あう···」
この子は俺と違って表情が豊かだ。言葉は分からないが、何となくシュンとした感情は伝わってきた。
「そんな顔をするな。明日教えてやるから」
また笑顔が見たくて、頭を撫でてみる。
ふわふわした髪が心地良い。
「おやすみ」
いい夢を見て欲しい。
···明日、あいつらに来てもらおう。
そう思って連絡を取る。
明日の食事の準備をしていると、声が聞こえてきた。
···泣いている?
様子を見に行ってみると、赤ん坊が泣いていた。小さな声ですすり泣く姿に胸が締め付けられる。
こんなに小さいのに、何故こんなにも辛そうなのか。
俺がいる。
俺は味方だ。
ここには、お前を悲しませる者はいない。
そんな思いを込めて頭を撫でる。
しばらくすると落ち着いたのか、柔らかな笑みを浮べて寝息を立て始めた。
この子がこの森に現れたのには、何か意味があるのだろうか。俺がすべきことは何なのだろうか。
この子にとっての最善が何かはまだ分からないが、俺が出来ることはしてあげたい。
頬に残った涙を拭い取り、部屋を後にした。
翌日。
赤ん坊と食事をしていると、あいつらがやってきた。相変わらずうるさい。まあ、こんなでも頼りになる心強い奴らだ。本人達には言わないが。
この赤ん坊は、喋れはしないがこちらの言っていることはきちんと理解しているようだ。そのことは事前にこいつらに伝えている。
だから皆で自己紹介をした。ここで俺は名乗っていなかったことに気がついた。
まあ、そういうこともある。
こいつら、特にライを呼んだのは、鑑定スキルを持っているからだ。
ライが言うには、この子に名前は無いらしい。ライの笑顔に身構える。こういうとき、何か企んでることが多い。
「だからさ、ジル。君が名前を付けてあげたらどうかな?」
案の定、突拍子もない提案をされる。
俺が名付け?そんなこと、したことが無い。そもそも子供を持ったことがない。
突然の提案に驚き戸惑う。俺が名前を付けていいのだろうか?
「···お前は、それでいいのか?」
断られたらどうしようかと不安に思いながら訊ねる。
「あう!」
返ってきたのは元気な返事。
「···そうか」
俺が付けていいのか。嬉しくて思わず頭を撫でる。
「···ウィル」
森で見た眩い光を思い出す。
「ウィルシュアード、古代語で『神からの光』という言葉からとった」
「あう!」
由来を説明すると、愛らしい笑顔を見せてくれた。
「あうあうー!!」
俺の都合の良い解釈かもしれないが、ありがとうと言われた気がした。
「ふふ、ウィル君かあ。いい名前だね」
またこの笑顔。今度は何だ。
「ジルはさ、昨日ウィル君が森で寝ている所を保護したんだよね?」
「ああ」
「この子の近くに何か落ちてなかったかい?もしくは人がいた形跡とか」
「ないな」
「だよねえ。この辺りは森の最深部に近いから、人が入って来れるとは思えない。だからリイン様が転生者であるウィル君をここに送り込んだと考えるのが一番自然なんだ」
まあ、そうだろう。あの光を見た者として、それが真実だと確信している。
「ということはね、彼には親がいないと思うんだ」
ライの笑みが深まる。
「だからさ、ジル。ウィル君の父親になってみない?」
想定を超えた提案にピシリと固まる。だが、それはいい考えだ、と自然に思えた。何より、俺がこの子の成長を近くで見たいと思っている。自分にこんな感情があったことに驚くが、悪い気はしない。
「···ウィル、お前はどうしたい?」
俺の気持ちは決まっている。
あとはウィル次第だ。
「あう!」
黒い瞳がキラキラと輝いている。
「そうか。···それなら、お前は俺の息子だ」
「あうあう!」
最初は好奇心から保護したつもりだが、今では愛しく思う。
おそらくこの子は前世で辛い経験をしたのだろう。だからこの世界では、幸せをたくさん感じて欲しい。そのために俺が出来ることは、何でもやろう。
そう心に誓った。
ウィルは俺の愛しい息子だ。
ステータスに表示されたのは気恥しいが、まあ、その通りだからな。
···あまり笑うな。
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