転生したらドラゴンに拾われた

hiro

文字の大きさ
11 / 115
最果ての森編

10. 決意

しおりを挟む
 赤ん坊が起きたので、スープを食べさせた。沢山食べていたし、時折笑顔も見られたから、味は悪くなかったのだろう。

 再び寝かせてしばらくすると、赤ん坊がいる部屋で魔力が動いているのに気づいた。何かが起きているのだろうか。あの子は大丈夫なのか?
 急いでドアを開けた。

「おい、大丈夫か?」

「あう?」

 変わった様子はないか見ていると、キョトンとした顔で見つめ返された。

「魔力が動く気配がしたから様子を見に来た。お前がやったのか?」

「あう!」

 元気な返事だ。

「···そうか。お前、魔力に関して知識があるのか?」

「···あう?」

「無いなら教えよう」

「あう?あうあう!」

「ただ今日はもう遅い。もう一眠りして、明日になってからだ」

「あう···」

 この子は俺と違って表情が豊かだ。言葉は分からないが、何となくシュンとした感情は伝わってきた。

「そんな顔をするな。明日教えてやるから」

 また笑顔が見たくて、頭を撫でてみる。
 ふわふわした髪が心地良い。

「おやすみ」

 いい夢を見て欲しい。

 ···明日、あいつらに来てもらおう。
 そう思って連絡を取る。



 明日の食事の準備をしていると、声が聞こえてきた。
 ···泣いている?

 様子を見に行ってみると、赤ん坊が泣いていた。小さな声ですすり泣く姿に胸が締め付けられる。
 こんなに小さいのに、何故こんなにも辛そうなのか。

 俺がいる。
 俺は味方だ。
 ここには、お前を悲しませる者はいない。

 そんな思いを込めて頭を撫でる。

 しばらくすると落ち着いたのか、柔らかな笑みを浮べて寝息を立て始めた。

 この子がこの森に現れたのには、何か意味があるのだろうか。俺がすべきことは何なのだろうか。
 この子にとっての最善が何かはまだ分からないが、俺が出来ることはしてあげたい。
 
 頬に残った涙を拭い取り、部屋を後にした。



 翌日。

 赤ん坊と食事をしていると、あいつらがやってきた。相変わらずうるさい。まあ、こんなでも頼りになる心強い奴らだ。本人達には言わないが。

 この赤ん坊は、喋れはしないがこちらの言っていることはきちんと理解しているようだ。そのことは事前にこいつらに伝えている。
 だから皆で自己紹介をした。ここで俺は名乗っていなかったことに気がついた。
 まあ、そういうこともある。

 こいつら、特にライを呼んだのは、鑑定スキルを持っているからだ。

 ライが言うには、この子に名前は無いらしい。ライの笑顔に身構える。こういうとき、何か企んでることが多い。

「だからさ、ジル。君が名前を付けてあげたらどうかな?」

 案の定、突拍子もない提案をされる。

 俺が名付け?そんなこと、したことが無い。そもそも子供を持ったことがない。
 突然の提案に驚き戸惑う。俺が名前を付けていいのだろうか?

「···お前は、それでいいのか?」

 断られたらどうしようかと不安に思いながら訊ねる。

「あう!」

 返ってきたのは元気な返事。

「···そうか」

 俺が付けていいのか。嬉しくて思わず頭を撫でる。

「···ウィル」

 森で見た眩い光を思い出す。

「ウィルシュアード、古代語で『神からの光』という言葉からとった」

「あう!」

 由来を説明すると、愛らしい笑顔を見せてくれた。

「あうあうー!!」

 俺の都合の良い解釈かもしれないが、ありがとうと言われた気がした。

「ふふ、ウィル君かあ。いい名前だね」

 またこの笑顔。今度は何だ。

「ジルはさ、昨日ウィル君が森で寝ている所を保護したんだよね?」

「ああ」

「この子の近くに何か落ちてなかったかい?もしくは人がいた形跡とか」

「ないな」

「だよねえ。この辺りは森の最深部に近いから、人が入って来れるとは思えない。だからリイン様が転生者であるウィル君をここに送り込んだと考えるのが一番自然なんだ」

 まあ、そうだろう。あの光を見た者として、それが真実だと確信している。

「ということはね、彼には親がいないと思うんだ」

 ライの笑みが深まる。

「だからさ、ジル。ウィル君の父親になってみない?」

 想定を超えた提案にピシリと固まる。だが、それはいい考えだ、と自然に思えた。何より、俺がこの子の成長を近くで見たいと思っている。自分にこんな感情があったことに驚くが、悪い気はしない。

「···ウィル、お前はどうしたい?」

 俺の気持ちは決まっている。
 あとはウィル次第だ。

「あう!」

 黒い瞳がキラキラと輝いている。

「そうか。···それなら、お前は俺の息子だ」

「あうあう!」


 最初は好奇心から保護したつもりだが、今では愛しく思う。
 おそらくこの子は前世で辛い経験をしたのだろう。だからこの世界では、幸せをたくさん感じて欲しい。そのために俺が出来ることは、何でもやろう。
 そう心に誓った。


 ウィルは俺の愛しい息子だ。

 ステータスに表示されたのは気恥しいが、まあ、その通りだからな。
 ···あまり笑うな。
しおりを挟む
感想 380

あなたにおすすめの小説

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処理中です...