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最果ての森編
11. 魔力
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「ふふ、じゃあ無事に父親が決まったところで、次は魔力について話をしようか。···ふふっ」
「お、おう、そうだな。ブフッ。ウィルにはすげー魔力があるみたいだし、制御は早めに出来たほうがいいぜ。···ブハッ」
「もう、みんな笑いすぎだよー。ジルが真っ赤になっちゃってるよー。あはは、かわいいねー」
みんなひどい。僕は父さんの味方だよ、という思いで膝の上に座る僕を支えているジルの左腕をぽんぽんする。
右腕の頭を撫でるスピードが上がった。
うん、僕の父親が可愛い過ぎる。
「ふう、あー面白かった。じゃあ、説明するよ」
悪びれもなく散々面白がって、魔力の話になる。
「ウィル君は魔力について知らないようだけど、前世では魔法やスキルは無かったのかい?」
「あーう」
ありません。
「へえ、どんな世界なんだろうねえ。いつか色々教えてくれると嬉しいな」
「魔法が無い世界って不便そうだな!オレなんか魔法が無きゃ何にも出来ねーぜ!」
テムが胸を張る。
「怪我したら大変だねー。回復はどうやるんだろう?」
「おい、まずは魔力についての説明だ」
ジルの顔色がようやく元に戻ったようだ。
「あ、そうだったね。ごめんね、つい。この世界にはね、空気中に魔素というものが漂っているんだ。生物はこの魔素を体内に取り込んで魔力に変換し、魔法やスキルを使用する際に消費するんだ。ウィル君が元いた世界に魔力や魔法が無いってことは、魔素が無かった、もしくはあったとしても使えるほどの濃度ではなかったと考えられる」
ふむふむ。
「体内に貯蓄できる魔力の量や、魔素から魔力へ変換する速度には個人差があるんだ。ちなみに、ウィル君の体内魔力はかなり多いよ」
なんと!
「量が多いのはいいことなんだけどね。ただ、それだけ微細なコントロールが難しいんだ。量が多い分、制御を誤れば取り返しのつかないことにもなりかねない」
なんですと!
「一般的には、君みたいに魔力の多い子が生まれたら、吸魔石という石を使うんだ。吸魔石は触れると魔力を吸収する性質を持っていてね、自力で魔力を制御したり放出したりできない人がこれを使って自分の体内魔力を抜くんだよ」
へえ、魔力を吸収する石?何かに使えそうだな。
「ただ、魔力を吸収する性質が強くて、ほとんど放出しないんだ。だから限界まで吸収したら、壊れてしまう。これまで何人もの研究者が吸魔石の利用法について研究してきたけど、使い捨ての道具としてくらいしか利用法は見つかっていないんだ」
そんなうまい話ではないのか。
「だから決して安い物ではないけど、使い捨てだと割り切って購入するしかないんだ。貧しい家庭だとお金の工面が出来ず、体内魔力を制御できずに体調を崩し、最悪の場合、亡くなってしまうこともあるんだよ」
何とも世知辛い話だ。
「幸い、ウィル君には理解力がある。これから私達が魔力の制御方法を教えるから、練習していこう。そうすれば、魔力が増えても吸魔石を使わずに済むよ。今の体内魔力量が増加する前から始めれば、大事には至らないはず。もちろん何か起こっても、というか、起こる前に私達がフォローするから安心してね」
パチンと飛んでるくウインクを心の中で避ける。
そういえば昨日一人で体内の魔力を動かしてたけど、危なかったのかな。ジルの表情が硬かった気がするし。
知らないものは動かさない。これ大事。
「それじゃあ、これからウィル君の手に少し魔力を流すよ。何かが入って来る感覚があるはずだから、それに集中してみてくれるかい?」
そう言ってライが僕の右手を握る。
目を閉じて右手に集中してみる。そうすると、右手からじんわり、暖かいような柔らかいような不思議な感覚が広がる。
これがライの魔力なのか?
右肘のあたりまで広がったあと、右手の先へ戻って無くなった。
「どう?分かったかい?」
「あうあう~」
左手で右手から右肘にかけてぽんぽんとたたく。
「おお!どうやら分かったようだね。すごいじゃないか。ちなみに、人に魔力を流すのは魔力制御がかなり上手くないと危ないから、真似しないでね」
今度は体ごとウインクを避ける。
急に体を傾けた僕にジルは驚いたようだが、しっかり支えてくれた。
頼もしい父親だ。
「それじゃあ、次の段階に進んでみようか。また先程と同じように魔力を流すから、今度は私の魔力によって動く、君の魔力を感知してみよう。私の魔力が広がる先に意識を集中してみるといいよ」
再び魔力が流される。今度はライの魔力の先?
んー、ライの魔力が広がると、押されるように動いてるコレかな?ライの魔力が引いていき、そこを埋めるように流れるものがある気がする。
「どうかな?」
んー、もう一度やって欲しい。
「あうあう」
ライの手をぎゅっとしてみる。
「うっかわいい···あ、もう一度かな?ふふふ」
そういえば、僕は赤ん坊だった。ぎゅってされたらかわいいのか。自分の顔がどんなかは知らんけど。
まあ、次のウインクは受け止めてやろう。
もう一度魔力が流される。
うんうん、集中するとさっきよりもはっきり分かる。
僕の魔力だ。
「あう!」
分かった!
「もう分かったのかな?ウィル君、すごいねえ」
ライの手がワキワキしてる。
撫でたいのか? 頭を撫でたいのか?
残念だが、すでに先客がいるんだ。諦めたまえ。
そういえば、テムとファムは何を教えてくれるんだろう。
「お、オレに何か聞きたいのか?」
テムが僕の視線に気づく。
「えーっと、魔力だろ?うーむ、そうだな。魔力をな、グルグル、ギューン、バーンってしたら魔法が出るぞ!」
「えー、そうかなー?ぼくは、ふわふわ、きゅー、ぽわーだよー」
あ、さいですか。
ジルは?
「···出ろ、と思ってぎゅっとしたら出る」
いい。いいんだ。
可愛いは正義なんだ。
「ふふふ、みんな感覚派だからね。私みたいな理論派には難しいよ」
ウインク、どんとこい。
「お、おう、そうだな。ブフッ。ウィルにはすげー魔力があるみたいだし、制御は早めに出来たほうがいいぜ。···ブハッ」
「もう、みんな笑いすぎだよー。ジルが真っ赤になっちゃってるよー。あはは、かわいいねー」
みんなひどい。僕は父さんの味方だよ、という思いで膝の上に座る僕を支えているジルの左腕をぽんぽんする。
右腕の頭を撫でるスピードが上がった。
うん、僕の父親が可愛い過ぎる。
「ふう、あー面白かった。じゃあ、説明するよ」
悪びれもなく散々面白がって、魔力の話になる。
「ウィル君は魔力について知らないようだけど、前世では魔法やスキルは無かったのかい?」
「あーう」
ありません。
「へえ、どんな世界なんだろうねえ。いつか色々教えてくれると嬉しいな」
「魔法が無い世界って不便そうだな!オレなんか魔法が無きゃ何にも出来ねーぜ!」
テムが胸を張る。
「怪我したら大変だねー。回復はどうやるんだろう?」
「おい、まずは魔力についての説明だ」
ジルの顔色がようやく元に戻ったようだ。
「あ、そうだったね。ごめんね、つい。この世界にはね、空気中に魔素というものが漂っているんだ。生物はこの魔素を体内に取り込んで魔力に変換し、魔法やスキルを使用する際に消費するんだ。ウィル君が元いた世界に魔力や魔法が無いってことは、魔素が無かった、もしくはあったとしても使えるほどの濃度ではなかったと考えられる」
ふむふむ。
「体内に貯蓄できる魔力の量や、魔素から魔力へ変換する速度には個人差があるんだ。ちなみに、ウィル君の体内魔力はかなり多いよ」
なんと!
「量が多いのはいいことなんだけどね。ただ、それだけ微細なコントロールが難しいんだ。量が多い分、制御を誤れば取り返しのつかないことにもなりかねない」
なんですと!
「一般的には、君みたいに魔力の多い子が生まれたら、吸魔石という石を使うんだ。吸魔石は触れると魔力を吸収する性質を持っていてね、自力で魔力を制御したり放出したりできない人がこれを使って自分の体内魔力を抜くんだよ」
へえ、魔力を吸収する石?何かに使えそうだな。
「ただ、魔力を吸収する性質が強くて、ほとんど放出しないんだ。だから限界まで吸収したら、壊れてしまう。これまで何人もの研究者が吸魔石の利用法について研究してきたけど、使い捨ての道具としてくらいしか利用法は見つかっていないんだ」
そんなうまい話ではないのか。
「だから決して安い物ではないけど、使い捨てだと割り切って購入するしかないんだ。貧しい家庭だとお金の工面が出来ず、体内魔力を制御できずに体調を崩し、最悪の場合、亡くなってしまうこともあるんだよ」
何とも世知辛い話だ。
「幸い、ウィル君には理解力がある。これから私達が魔力の制御方法を教えるから、練習していこう。そうすれば、魔力が増えても吸魔石を使わずに済むよ。今の体内魔力量が増加する前から始めれば、大事には至らないはず。もちろん何か起こっても、というか、起こる前に私達がフォローするから安心してね」
パチンと飛んでるくウインクを心の中で避ける。
そういえば昨日一人で体内の魔力を動かしてたけど、危なかったのかな。ジルの表情が硬かった気がするし。
知らないものは動かさない。これ大事。
「それじゃあ、これからウィル君の手に少し魔力を流すよ。何かが入って来る感覚があるはずだから、それに集中してみてくれるかい?」
そう言ってライが僕の右手を握る。
目を閉じて右手に集中してみる。そうすると、右手からじんわり、暖かいような柔らかいような不思議な感覚が広がる。
これがライの魔力なのか?
右肘のあたりまで広がったあと、右手の先へ戻って無くなった。
「どう?分かったかい?」
「あうあう~」
左手で右手から右肘にかけてぽんぽんとたたく。
「おお!どうやら分かったようだね。すごいじゃないか。ちなみに、人に魔力を流すのは魔力制御がかなり上手くないと危ないから、真似しないでね」
今度は体ごとウインクを避ける。
急に体を傾けた僕にジルは驚いたようだが、しっかり支えてくれた。
頼もしい父親だ。
「それじゃあ、次の段階に進んでみようか。また先程と同じように魔力を流すから、今度は私の魔力によって動く、君の魔力を感知してみよう。私の魔力が広がる先に意識を集中してみるといいよ」
再び魔力が流される。今度はライの魔力の先?
んー、ライの魔力が広がると、押されるように動いてるコレかな?ライの魔力が引いていき、そこを埋めるように流れるものがある気がする。
「どうかな?」
んー、もう一度やって欲しい。
「あうあう」
ライの手をぎゅっとしてみる。
「うっかわいい···あ、もう一度かな?ふふふ」
そういえば、僕は赤ん坊だった。ぎゅってされたらかわいいのか。自分の顔がどんなかは知らんけど。
まあ、次のウインクは受け止めてやろう。
もう一度魔力が流される。
うんうん、集中するとさっきよりもはっきり分かる。
僕の魔力だ。
「あう!」
分かった!
「もう分かったのかな?ウィル君、すごいねえ」
ライの手がワキワキしてる。
撫でたいのか? 頭を撫でたいのか?
残念だが、すでに先客がいるんだ。諦めたまえ。
そういえば、テムとファムは何を教えてくれるんだろう。
「お、オレに何か聞きたいのか?」
テムが僕の視線に気づく。
「えーっと、魔力だろ?うーむ、そうだな。魔力をな、グルグル、ギューン、バーンってしたら魔法が出るぞ!」
「えー、そうかなー?ぼくは、ふわふわ、きゅー、ぽわーだよー」
あ、さいですか。
ジルは?
「···出ろ、と思ってぎゅっとしたら出る」
いい。いいんだ。
可愛いは正義なんだ。
「ふふふ、みんな感覚派だからね。私みたいな理論派には難しいよ」
ウインク、どんとこい。
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