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第六章 ガーベラ
究極美
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ジェルベーラは鼻歌を口ずさみながら散らかった店内を掃除した。
小さなアルテマを使って店内を散らかしてしまったことを反省しての行動だったのは確かだが、それよりもなによりもただ嬉しかった。
人の姿になり、自由に動けること。
そして鏡に映る自分の容姿に歓喜していた。
艶々で輝く黄金の髪。
目鼻立ちはくっきりとしているが、幼さを残し頬は少し赤らんでいる。
肌は健康的に白く、頭身も申し分ない。
なによりも気に入っているのが瞳の色だった。
キラキラと密になって赤く輝いている目の虹彩は、まるでガーベラの花芯。
自分に見惚れてしまうことに抵抗がないわけではないが、少なくともガーベラの花だった際に見てきたどの生き物よりも美しい。
自信をもって、そう言えた。
「楽しそうだねジェルベーラちゃん」
店の片付けを手伝いながら、楽し気なジェルベーラを眺めるハナも同じ気持ちになった。
間違えて呼んでしまったけど、後悔はしていない。
「私は早く花に戻した方がいいと思います」
エミリーは、箒を持つ手に力が入る。
「ありがとうね皆。魔法を使っちまえば良いんだけどさ、魔力にも限界があるからね。旦那が帰るまで1人で店の切り盛りするのは骨が折れるんだよ」
子宝に恵まれなかったマーノリアは、不意に出てきた小さな友人達をみて笑みをこぼし、そしてある提案をした。
「どうだいみんな、わたしの旦那が帰るまで一緒に店を手伝ってくれないかい?」
「やりますっ」
ハナは鼻息を荒くして手を挙げた。
「旦那さまは、どれくらいで戻られるのですか?」
夕刻までには戻ることを知ったエミリーは、街の騒ぎが落ち着くまでの時間稼ぎには丁度良いと思い了承した。
「当然ですわ、おばさ……マーノリアさんにはいつもお世話になってばかりですから、こんな恩返しのチャンス、逃す訳にはいきません」
ジェルベーラは拳を強く握った。
「良かった。ほんじゃあ皆が片付けている間に、おやつでもこしらえようかね」
マーノリアは袖をまくってキッチンへ移動したが
「ちょっと待って下さい」
エミリーが眉を顰め、唇の前で人差し指を立てた。
「魔物が逃げ込んでったのを見たって奴が言ってたのは、この花屋じゃねぇか?」
静まり返った店内に、その声が響き、複数の足音が集まってくる。
「まずいね、とりあえず裏口へ、急いで」
マーノリアは、険しい顔で手招きをした。
「お手伝いは?」
「わたしも片付けの途中です」
ハナとジェルベーラは状況が理解できず不思議がった。
「ストレリチアを摘んできてくれないかい?」
まごまごしている2人に、マーノリアは仕事を依頼した。
「ストレリチア?」
「お花の名前だよ」
首を傾げるエミリーにハナは言った。
「なるほど、お花を集めてくればいいのですね」
エミリーはマーノリアの機転に目配せした。
「近くの飲食店の開店祝いでね、後で行くつもりだったんだけど丁度いいからあんたたちに頼むよ」
「分かったよ、僕に任せて」
ハナは自信満々に裏口へ急ぐ。
「ジェルベーラ。あんたもだよ、なんかあったらあんたの魔法が頼りだ」
「私が? 頼り……」
初めて人に頼られたジェルベーラは目を輝かせてハナを追った。
「お姉さま、行ってきます」
「頼んだよ。ストレリチアは、街の外だ。近くにダンジョンがあるけど絶対に近寄っちゃいけないよ」
「わかりました」
エミリーは軽く頭を下げ、ハナ達と一緒に店を出た。
小さなアルテマを使って店内を散らかしてしまったことを反省しての行動だったのは確かだが、それよりもなによりもただ嬉しかった。
人の姿になり、自由に動けること。
そして鏡に映る自分の容姿に歓喜していた。
艶々で輝く黄金の髪。
目鼻立ちはくっきりとしているが、幼さを残し頬は少し赤らんでいる。
肌は健康的に白く、頭身も申し分ない。
なによりも気に入っているのが瞳の色だった。
キラキラと密になって赤く輝いている目の虹彩は、まるでガーベラの花芯。
自分に見惚れてしまうことに抵抗がないわけではないが、少なくともガーベラの花だった際に見てきたどの生き物よりも美しい。
自信をもって、そう言えた。
「楽しそうだねジェルベーラちゃん」
店の片付けを手伝いながら、楽し気なジェルベーラを眺めるハナも同じ気持ちになった。
間違えて呼んでしまったけど、後悔はしていない。
「私は早く花に戻した方がいいと思います」
エミリーは、箒を持つ手に力が入る。
「ありがとうね皆。魔法を使っちまえば良いんだけどさ、魔力にも限界があるからね。旦那が帰るまで1人で店の切り盛りするのは骨が折れるんだよ」
子宝に恵まれなかったマーノリアは、不意に出てきた小さな友人達をみて笑みをこぼし、そしてある提案をした。
「どうだいみんな、わたしの旦那が帰るまで一緒に店を手伝ってくれないかい?」
「やりますっ」
ハナは鼻息を荒くして手を挙げた。
「旦那さまは、どれくらいで戻られるのですか?」
夕刻までには戻ることを知ったエミリーは、街の騒ぎが落ち着くまでの時間稼ぎには丁度良いと思い了承した。
「当然ですわ、おばさ……マーノリアさんにはいつもお世話になってばかりですから、こんな恩返しのチャンス、逃す訳にはいきません」
ジェルベーラは拳を強く握った。
「良かった。ほんじゃあ皆が片付けている間に、おやつでもこしらえようかね」
マーノリアは袖をまくってキッチンへ移動したが
「ちょっと待って下さい」
エミリーが眉を顰め、唇の前で人差し指を立てた。
「魔物が逃げ込んでったのを見たって奴が言ってたのは、この花屋じゃねぇか?」
静まり返った店内に、その声が響き、複数の足音が集まってくる。
「まずいね、とりあえず裏口へ、急いで」
マーノリアは、険しい顔で手招きをした。
「お手伝いは?」
「わたしも片付けの途中です」
ハナとジェルベーラは状況が理解できず不思議がった。
「ストレリチアを摘んできてくれないかい?」
まごまごしている2人に、マーノリアは仕事を依頼した。
「ストレリチア?」
「お花の名前だよ」
首を傾げるエミリーにハナは言った。
「なるほど、お花を集めてくればいいのですね」
エミリーはマーノリアの機転に目配せした。
「近くの飲食店の開店祝いでね、後で行くつもりだったんだけど丁度いいからあんたたちに頼むよ」
「分かったよ、僕に任せて」
ハナは自信満々に裏口へ急ぐ。
「ジェルベーラ。あんたもだよ、なんかあったらあんたの魔法が頼りだ」
「私が? 頼り……」
初めて人に頼られたジェルベーラは目を輝かせてハナを追った。
「お姉さま、行ってきます」
「頼んだよ。ストレリチアは、街の外だ。近くにダンジョンがあるけど絶対に近寄っちゃいけないよ」
「わかりました」
エミリーは軽く頭を下げ、ハナ達と一緒に店を出た。
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