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ルナティール王国
#16
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~エリーゼの自室~
「なんで!なんで!なんでなのよ!!
あの女はいなくなったのにどうして私のことを見てくださらないのよ!!」
ここはエリーゼの自室。
執務室を追い出されたエリーゼはさんざん喚きながら自身の部屋へと戻って来た。
まぁ、部屋に戻ってもやっていることは同じだが。
ちなみに城で働く者たちの大多数はエリーゼのことを好ましく思っていないため基本的には無視を決め込み、関わりも最低限にとどめている。
「姫様、落ち着いてください………」
「うるさいわね!
私は姫ではなくもうこの国の王妃なのよ!!
姫様なんて二度と呼ばないでちょうだい!!」
「もっ、申し訳ありません……、王妃殿下。」
エリーゼは『姫』と呼ばれるのが嫌だった。
自分は誰よりも美しく、優れている。
そんな自分が祖国であるジャキールという小国でおさまる器ではないと思っていた。
そんな時、城でのパーティーで大国 ルナティールの王子であったアルトリアを一目で欲しくなったのだ。
欲しい、欲しい、欲しいという想いほ貪欲なまでに募っていった。
しかし、アルトリアの隣にはすでにココがいた。
強く、美しく、そして大国の王子
どれをとってもアルトリアは魅力的でエリーゼはその隣がどうしても欲しかった。
自分のいるべき場所だと思った。
「どうしてよ!お父様にお願いして、邪魔だったココも居なくなったのに………
どうして、私を見てくださらないのよ!!」
エリーゼが八つ当たり的にその場にあった物を次々に投げ、壊していく。
「おっ、落ち着いてくださいませ、エリーゼ妃殿下……」
「何? 私に意見するつもりなの?」
「いいえ……、そんなつもりは………」
そう言うとエリーゼ付きの侍女は黙り込んでしまう。
「あー、もう、イライラする!
どいつもこいつもどうして私を『王妃』として見ないのよ!!」
あたりまえのことだった。
アルトリアとココの仲は城で働く者たちだけでなくこの国では広く知られていた。
エリーゼはそんな2人を引き裂いた邪魔者以外の何者でもないのだ。
第一、婚姻自体、前国王である現大公が嵌められたせいであることは城の者たちには周知の事実であり、快く思われていないのも当然のことだった。
「アルトリア様も、どうして未だにココなんか気にするのよ!
気にするべきはこの私でしょ!!」
ココを気にするのは当たり前。
だって、アルトリアの想いは今も昔も変わらずココ
にあるのだから。
「どうして!どうして!どうしてよ!
私は王子を2人も産んだのよ!!
私は王妃としてあの方の、アルト様の隣にもっともふさわしいはずよ!!」
どうしても何も、アルトリアはエリーゼの産んだ子を自分の子だと思っていないからだ。
単純な理由だがアルトリアはエリーゼと閨を共にしたのはエリーゼを娶った初夜のみだ。
もしも、その一回で子ができたとしてもその後は何もしていない。
よって、2人目が産まれることは絶対にありえない。
それ以前にどちらの子もまったくアルトリアと似ていない。
自分の子でもない者をどうして愛せようか?
「誰も私を認めないっていうことなの!!」
はっきりいうとその通りである。
城に仕える騎士、侍従、侍女一同、ほぼ全員がエリーゼを王妃と認めていない。
ココの一件もあるがなにぶん態度がよくなかった。
小国から半ば押しかけてきたようなものなのに高圧的で傲慢で強欲。
まるで『自分は望まれてきたのだから感謝して仕えなさいよ!』という態度だったのだ。
常識的に考えてこのような態度の者に仕えたいと思う者はいないだろう。
なので、エリーゼの身の回りの世話をしている者たちは輿入れの際に自国から連れてきた者がしていたりする。
ちやほやされたいのかもしれないが総じてこの国の者はエリーゼと関わろうとしないのだ。
まぁ、自国から連れてきた者達や一部の阿呆貴族たちからはかまってもらえているのだからそれで満足して欲しいところではあるのだが………
「私はこの国の王妃よ!アルト様の隣がふさわしいのはこの私なのよ!!」
エリーゼは興奮し、肩で息をしながら騒ぎに騒ぎまくった。
手当たり次第に物にもあたっていたので部屋は惨状はすごいものだった。
それをエリーゼ付きの侍女たちがいそいそとエリーゼを刺激しないように静か片付けている。
そこへ………
「おや? どうしたんだい、エリーゼ?
部屋がすごいことになっているじゃないか。」
「伯父様!!」
エリーゼに伯父様と呼ばれた男性は人の良さそうな笑みを浮かべながら部屋へと入り、話を続ける。
「エリーゼ、おまえは王妃となったんだからその様に喚いたりしてはいけないよ。
選ばれた者は堂々としていなさい。アルトリア陛下もすぐに気づかれるはずだ。
誰が自身の隣にふさわしいか。だから、エリーゼその辺の侍女や城の者たちが言うことを間に受けてはいけないよ。」
「伯父様………、でも………。」
「こちらが感情的になれば侮られるだけだよ。
だから、堂々としていなさい。王妃はおまえだよ、エリーゼ。」
「そうですわよね!私は王子を2人も産んでますし、私の子がこの国の次期国王ですもの。
私こそがこの国の王妃でアルト様の隣に立つの最もふさわしい人間ですわ!!」
エリーゼはとても単純な女性だった。
物事を深く考えない。物事を自身の都合の良い解釈で捉える。
傲慢で強欲な人間だった。
伯父様と呼んでいる男の言葉にさっきまでの苛立ちが消え、自身は特別なのだという気持ちが再び湧き上がる。
「そうですわ!そうですわ!私こそが特別なのよ!!」
そんなエリーゼの姿に男は笑みを浮かべ………
「どうやら、機嫌は直ったようだね。
それでは、私は用事があるので失礼するね。」
「はい!伯父様、ありがとうございました!!」
上機嫌で男を送りだし、エリーゼは興奮し、これからどうすか、アルトリアとどうやって仲を進展させるかを考えるのだった。
エリーゼに送りだされた男は部屋の外へ。
「愚かな女だ」
男が呟くように言った言葉は扉の閉まる音にかき消されるように誰にも届くことはなかった。
パタパタッ
そんな男の肩に1匹黒いコウモリがとまる。
男はチラッとコウモリを確認するとそのままエリーゼの部屋を後にするのだった。
「なんで!なんで!なんでなのよ!!
あの女はいなくなったのにどうして私のことを見てくださらないのよ!!」
ここはエリーゼの自室。
執務室を追い出されたエリーゼはさんざん喚きながら自身の部屋へと戻って来た。
まぁ、部屋に戻ってもやっていることは同じだが。
ちなみに城で働く者たちの大多数はエリーゼのことを好ましく思っていないため基本的には無視を決め込み、関わりも最低限にとどめている。
「姫様、落ち着いてください………」
「うるさいわね!
私は姫ではなくもうこの国の王妃なのよ!!
姫様なんて二度と呼ばないでちょうだい!!」
「もっ、申し訳ありません……、王妃殿下。」
エリーゼは『姫』と呼ばれるのが嫌だった。
自分は誰よりも美しく、優れている。
そんな自分が祖国であるジャキールという小国でおさまる器ではないと思っていた。
そんな時、城でのパーティーで大国 ルナティールの王子であったアルトリアを一目で欲しくなったのだ。
欲しい、欲しい、欲しいという想いほ貪欲なまでに募っていった。
しかし、アルトリアの隣にはすでにココがいた。
強く、美しく、そして大国の王子
どれをとってもアルトリアは魅力的でエリーゼはその隣がどうしても欲しかった。
自分のいるべき場所だと思った。
「どうしてよ!お父様にお願いして、邪魔だったココも居なくなったのに………
どうして、私を見てくださらないのよ!!」
エリーゼが八つ当たり的にその場にあった物を次々に投げ、壊していく。
「おっ、落ち着いてくださいませ、エリーゼ妃殿下……」
「何? 私に意見するつもりなの?」
「いいえ……、そんなつもりは………」
そう言うとエリーゼ付きの侍女は黙り込んでしまう。
「あー、もう、イライラする!
どいつもこいつもどうして私を『王妃』として見ないのよ!!」
あたりまえのことだった。
アルトリアとココの仲は城で働く者たちだけでなくこの国では広く知られていた。
エリーゼはそんな2人を引き裂いた邪魔者以外の何者でもないのだ。
第一、婚姻自体、前国王である現大公が嵌められたせいであることは城の者たちには周知の事実であり、快く思われていないのも当然のことだった。
「アルトリア様も、どうして未だにココなんか気にするのよ!
気にするべきはこの私でしょ!!」
ココを気にするのは当たり前。
だって、アルトリアの想いは今も昔も変わらずココ
にあるのだから。
「どうして!どうして!どうしてよ!
私は王子を2人も産んだのよ!!
私は王妃としてあの方の、アルト様の隣にもっともふさわしいはずよ!!」
どうしても何も、アルトリアはエリーゼの産んだ子を自分の子だと思っていないからだ。
単純な理由だがアルトリアはエリーゼと閨を共にしたのはエリーゼを娶った初夜のみだ。
もしも、その一回で子ができたとしてもその後は何もしていない。
よって、2人目が産まれることは絶対にありえない。
それ以前にどちらの子もまったくアルトリアと似ていない。
自分の子でもない者をどうして愛せようか?
「誰も私を認めないっていうことなの!!」
はっきりいうとその通りである。
城に仕える騎士、侍従、侍女一同、ほぼ全員がエリーゼを王妃と認めていない。
ココの一件もあるがなにぶん態度がよくなかった。
小国から半ば押しかけてきたようなものなのに高圧的で傲慢で強欲。
まるで『自分は望まれてきたのだから感謝して仕えなさいよ!』という態度だったのだ。
常識的に考えてこのような態度の者に仕えたいと思う者はいないだろう。
なので、エリーゼの身の回りの世話をしている者たちは輿入れの際に自国から連れてきた者がしていたりする。
ちやほやされたいのかもしれないが総じてこの国の者はエリーゼと関わろうとしないのだ。
まぁ、自国から連れてきた者達や一部の阿呆貴族たちからはかまってもらえているのだからそれで満足して欲しいところではあるのだが………
「私はこの国の王妃よ!アルト様の隣がふさわしいのはこの私なのよ!!」
エリーゼは興奮し、肩で息をしながら騒ぎに騒ぎまくった。
手当たり次第に物にもあたっていたので部屋は惨状はすごいものだった。
それをエリーゼ付きの侍女たちがいそいそとエリーゼを刺激しないように静か片付けている。
そこへ………
「おや? どうしたんだい、エリーゼ?
部屋がすごいことになっているじゃないか。」
「伯父様!!」
エリーゼに伯父様と呼ばれた男性は人の良さそうな笑みを浮かべながら部屋へと入り、話を続ける。
「エリーゼ、おまえは王妃となったんだからその様に喚いたりしてはいけないよ。
選ばれた者は堂々としていなさい。アルトリア陛下もすぐに気づかれるはずだ。
誰が自身の隣にふさわしいか。だから、エリーゼその辺の侍女や城の者たちが言うことを間に受けてはいけないよ。」
「伯父様………、でも………。」
「こちらが感情的になれば侮られるだけだよ。
だから、堂々としていなさい。王妃はおまえだよ、エリーゼ。」
「そうですわよね!私は王子を2人も産んでますし、私の子がこの国の次期国王ですもの。
私こそがこの国の王妃でアルト様の隣に立つの最もふさわしい人間ですわ!!」
エリーゼはとても単純な女性だった。
物事を深く考えない。物事を自身の都合の良い解釈で捉える。
傲慢で強欲な人間だった。
伯父様と呼んでいる男の言葉にさっきまでの苛立ちが消え、自身は特別なのだという気持ちが再び湧き上がる。
「そうですわ!そうですわ!私こそが特別なのよ!!」
そんなエリーゼの姿に男は笑みを浮かべ………
「どうやら、機嫌は直ったようだね。
それでは、私は用事があるので失礼するね。」
「はい!伯父様、ありがとうございました!!」
上機嫌で男を送りだし、エリーゼは興奮し、これからどうすか、アルトリアとどうやって仲を進展させるかを考えるのだった。
エリーゼに送りだされた男は部屋の外へ。
「愚かな女だ」
男が呟くように言った言葉は扉の閉まる音にかき消されるように誰にも届くことはなかった。
パタパタッ
そんな男の肩に1匹黒いコウモリがとまる。
男はチラッとコウモリを確認するとそのままエリーゼの部屋を後にするのだった。
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