11 / 21
第四章
甘い罠ーハニートラップー
しおりを挟む
さて、依頼に行くとするか。にしても麻理の頼みを聞いて今日で四日目だが、向こうから何かを仕掛けてくる素振りは見えないし俺の思い過ごしなのか?
「シュンちゃん、最近依頼ばっかり行ってるけど何かあったの?」
依頼に向かおうとしていた冬霧の後ろから春宮が心配そうな声で聞いてきた。
「ちょっとな、色々あんだよ」
「ねぇ、その依頼私もついて行っていい?」
「別にいいが、どうなっても知らないぞ」
冬霧は春宮の目を見て言ったが、春宮は自身ありげに胸を張った。
「私だってSランクなんだから、大丈夫よ!」
この時の春宮はまだ知らなかった、冬霧が受けた依頼の内容を……。
「ちょっとシュンちゃん!なんでこんな依頼受けたのよ!」
「お前自分からSランクだから大丈夫って言ったよな?」
冬霧の受けた依頼の内容は、三日前から遊び半分で銃撃戦をやっている中坊どもを懲らしめて欲しいという依頼だった。
だがその中坊の人数が想像していたより多く、冬霧の使う〝乱れ桜〟を使ってしてもまた現れの繰り返しで依頼は難航していた。
「依頼書を見た時、依頼料が妙に多いと思ったらこういう事だったのか」
「そんな事より、どうするのこれ?」
「よし、絢香前に教えた戦法を使ってみてくれ」
「分かった。私の守の魔法〝六方壁〟霧の魔法〝幻影魔〟」
この戦法は以前昇格試験の際に使った戦法だ。
「これで、半分は終わったな。ありがとう絢香」
「いいよお礼なんて、それよりこれからどうするの?」
「能力《神速》を発動し行動に移り冬霧流双剣術三式〝乱れ桜〟を放つ」
たとえ中坊と言っても気配はまだ消せない。なら気配を辿っていけば必ず標的に辿り着く。
「これで全部か、やっと終わった」
「じゃあ依頼主のところに行って依頼料貰って帰ろうか」
「そうだな、今日は手伝ってくれて助かったよ絢香」
「さっきも言ったでしょ、お礼はいいよ。ほら早く行こっ!」
冬霧は春宮に押されて依頼主のところに向かい依頼料を貰った。
今回の依頼料は一万円か、まあぼちぼちだな。
今から学校に戻ってこの金の半分を渡しに行くのも面倒だから明日でいいか。
そして次の日、研究室にて。
「おーい麻理、研究費持ってきたぞ……って寝てるのかよ仕方ない、ここに置いとくとするか」
冬霧は研究室にあった机の上に依頼料の半分を置いて出ていった。
「なんで私を襲わないのよ!ちょっとだけ胸を見せてたんだから普通襲うでしょ!」
四條がいきなり起き上がり、怒り混じりに文句を言っていた。つまりさっき寝ていたように見えたのは狸寝入りだったという事になる。
「まだよ、まだ手はあるんだからね!」
この時の四條は冬霧を色仕掛けで落とす事に燃えていた。
あれからも様々な色仕掛けを試したが、一向に落ちる気配が見当たらなかった。
後ろから冬霧に飛びついたり、腕に絡みついたり押し倒したりしたが全て失敗に終わった。
「案外冬霧って鈍いのかしら……」
「おーい入るぞ麻理」
そういえば俺、こいつがなんの研究をしているのか聞いてなかったな。今聞いてみるか……。
「なぁ麻理、お前なんの研究してるんだ?」
「武器を作ってるのよ。何者にも負けない最強な武器を」
「なんでそんな物作ってるんだ?」
「父を助ける為よ……」
冬霧は四條に話を聞くことにした。
四條の話によると父親は有名な科学者で、色々な物を作り出していたという。
もちろん武器なんかじゃなく、生活に役立つような物だったり薬を作ってたらしい。
だが四條の父親はある犯罪組織に捕まり、無理矢理に武器を作らされているらしい。
その父親を助ける為、沢山の武器を作り出したが全て失敗。父親を助け出す事は無理だと確信した頃に冬霧が通りかかり、利用しようと考えたという。
「それで、その犯罪組織の名前は?」
「臀蝦蟇だけど……。もしかして!」
「そのもしかしてだけど、何か問題でもあるのか?」
「私はあなたを利用していたのよ?なのになんで私を助けようとするの?」
冬霧は少し考えて答えを出した。
「簡単だよ、あんたの父親を助けたいからだ」
確か臀蝦蟇は、一見普通の研究所に見えるが実は悪質な武器を作り出し密売しているとは聞いたことはあったが、本当だったんだな。
行くなら今日の夜にしよう、準備もいるから少し時間がかかるかもしれない。
「そんな顔すんな、お前の父親は助けてやっから安心しろ」
「で、でも………」
「お前、父親と会うときはそんな顔するなよ?」
冬霧はそう言い残し、手を振りながら研究室を出ていった。
「なんで私なんかの為に………」
四條は訳も分からず涙がこぼれ落ちていた。
「理由は簡単だ、あいつが自分と同じ思いをして欲しくないからだ」
「学園長、どういう事ですか?」
ドアの近くに学園長が立っていて、四條は学園長の発した言葉の意味を聞いた。
「あいつは昔、大切な妹を失ってな。あの時の思いは今でも残っている、だから他の奴に自分と同じ思いをして欲しくないのさ」
つまり、私の為に命を張るという事なの?
四條はまた涙を流した。
続く
「シュンちゃん、最近依頼ばっかり行ってるけど何かあったの?」
依頼に向かおうとしていた冬霧の後ろから春宮が心配そうな声で聞いてきた。
「ちょっとな、色々あんだよ」
「ねぇ、その依頼私もついて行っていい?」
「別にいいが、どうなっても知らないぞ」
冬霧は春宮の目を見て言ったが、春宮は自身ありげに胸を張った。
「私だってSランクなんだから、大丈夫よ!」
この時の春宮はまだ知らなかった、冬霧が受けた依頼の内容を……。
「ちょっとシュンちゃん!なんでこんな依頼受けたのよ!」
「お前自分からSランクだから大丈夫って言ったよな?」
冬霧の受けた依頼の内容は、三日前から遊び半分で銃撃戦をやっている中坊どもを懲らしめて欲しいという依頼だった。
だがその中坊の人数が想像していたより多く、冬霧の使う〝乱れ桜〟を使ってしてもまた現れの繰り返しで依頼は難航していた。
「依頼書を見た時、依頼料が妙に多いと思ったらこういう事だったのか」
「そんな事より、どうするのこれ?」
「よし、絢香前に教えた戦法を使ってみてくれ」
「分かった。私の守の魔法〝六方壁〟霧の魔法〝幻影魔〟」
この戦法は以前昇格試験の際に使った戦法だ。
「これで、半分は終わったな。ありがとう絢香」
「いいよお礼なんて、それよりこれからどうするの?」
「能力《神速》を発動し行動に移り冬霧流双剣術三式〝乱れ桜〟を放つ」
たとえ中坊と言っても気配はまだ消せない。なら気配を辿っていけば必ず標的に辿り着く。
「これで全部か、やっと終わった」
「じゃあ依頼主のところに行って依頼料貰って帰ろうか」
「そうだな、今日は手伝ってくれて助かったよ絢香」
「さっきも言ったでしょ、お礼はいいよ。ほら早く行こっ!」
冬霧は春宮に押されて依頼主のところに向かい依頼料を貰った。
今回の依頼料は一万円か、まあぼちぼちだな。
今から学校に戻ってこの金の半分を渡しに行くのも面倒だから明日でいいか。
そして次の日、研究室にて。
「おーい麻理、研究費持ってきたぞ……って寝てるのかよ仕方ない、ここに置いとくとするか」
冬霧は研究室にあった机の上に依頼料の半分を置いて出ていった。
「なんで私を襲わないのよ!ちょっとだけ胸を見せてたんだから普通襲うでしょ!」
四條がいきなり起き上がり、怒り混じりに文句を言っていた。つまりさっき寝ていたように見えたのは狸寝入りだったという事になる。
「まだよ、まだ手はあるんだからね!」
この時の四條は冬霧を色仕掛けで落とす事に燃えていた。
あれからも様々な色仕掛けを試したが、一向に落ちる気配が見当たらなかった。
後ろから冬霧に飛びついたり、腕に絡みついたり押し倒したりしたが全て失敗に終わった。
「案外冬霧って鈍いのかしら……」
「おーい入るぞ麻理」
そういえば俺、こいつがなんの研究をしているのか聞いてなかったな。今聞いてみるか……。
「なぁ麻理、お前なんの研究してるんだ?」
「武器を作ってるのよ。何者にも負けない最強な武器を」
「なんでそんな物作ってるんだ?」
「父を助ける為よ……」
冬霧は四條に話を聞くことにした。
四條の話によると父親は有名な科学者で、色々な物を作り出していたという。
もちろん武器なんかじゃなく、生活に役立つような物だったり薬を作ってたらしい。
だが四條の父親はある犯罪組織に捕まり、無理矢理に武器を作らされているらしい。
その父親を助ける為、沢山の武器を作り出したが全て失敗。父親を助け出す事は無理だと確信した頃に冬霧が通りかかり、利用しようと考えたという。
「それで、その犯罪組織の名前は?」
「臀蝦蟇だけど……。もしかして!」
「そのもしかしてだけど、何か問題でもあるのか?」
「私はあなたを利用していたのよ?なのになんで私を助けようとするの?」
冬霧は少し考えて答えを出した。
「簡単だよ、あんたの父親を助けたいからだ」
確か臀蝦蟇は、一見普通の研究所に見えるが実は悪質な武器を作り出し密売しているとは聞いたことはあったが、本当だったんだな。
行くなら今日の夜にしよう、準備もいるから少し時間がかかるかもしれない。
「そんな顔すんな、お前の父親は助けてやっから安心しろ」
「で、でも………」
「お前、父親と会うときはそんな顔するなよ?」
冬霧はそう言い残し、手を振りながら研究室を出ていった。
「なんで私なんかの為に………」
四條は訳も分からず涙がこぼれ落ちていた。
「理由は簡単だ、あいつが自分と同じ思いをして欲しくないからだ」
「学園長、どういう事ですか?」
ドアの近くに学園長が立っていて、四條は学園長の発した言葉の意味を聞いた。
「あいつは昔、大切な妹を失ってな。あの時の思いは今でも残っている、だから他の奴に自分と同じ思いをして欲しくないのさ」
つまり、私の為に命を張るという事なの?
四條はまた涙を流した。
続く
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる