武装学園―乱舞―

グリプス

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第六章

ジュリエット役は………に決まり!

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 なんで役者一人決めんのに俺まで付き合わされなきゃいけないんだよ。
 そういえばルール説明の時に幻術使ったらいけないなんて事言ってなかったな、それなら!
「冬霧流幻術〝陽炎〟」
 これで何分かは保つだろう………いや瞬殺されるんじゃないか?さっきも使って一分足らずで俺の方に来たし、一分以上保つ事を祈ろう。
「冬霧先輩見っけ!」
「やばっ!逃げよう」
「冬霧先輩、大人しく捕まってください!」
「誰が捕まってたまるか!」
 ちょっと待てよ、俺は〝陽炎〟を一度しか使ってないよな、だったらこの学園内に張り巡らせればいいんだ!
 とにかく今は、振り切る事を先決にしよう。
「じゃあな!一年生」
 よし、俺は仕事にかかるとするか。
「冬霧流幻術〝陽炎〟ー多重継承ー」
 これで色んな俺が出来たぞ、後はこいつらを学園内に散りばめれば第一段階クリアだ。
「お前ら、この学園内に散りばめろ!」
『分かったよ!』
 一度に多くの自分の声を聞くと、なんか怖いもんだな。
 これで何分保ってくれるか………。
「何してるの、シュン君」 
「なんだ麻理か……」
 あの時、外にいる女子には話をしたって言ってたよな。一度にそんな事が出来るのは校内放送だけだ、もし麻理も聞いてたとしたら………。
 冬霧は瞬時に立ち上がり、バックステップで一度距離をとった。
「相変わらず、こういう時だけは頭の回転が早いんだから」 
「ってことは、やっぱり」
「ご明察、私も彼女としてジュリエット役はやらないとね」
 このまま突っ切る事は出来なくはないが、リスクが大きすぎる。
 ここは屋上だ、一番手っ取り早く逃げられるとしたら。
「ちょっとシュン君!」
 冬霧は後ろに大きく跳び回転をかけながら屋上から飛び降りた。
 無論四條は心配して、下を覗きこんだが冬霧は教室に入り込む所が見えたので四條は安心したかのように地面に座り込んでしまった。
「いやー、危なかった。あとちょっとで捕まるところだったぞ」
「その心配には及ばないわよ、瞬輔」
「由佳、お前いつの間に」
 冬霧は逃げようとしたが、もう遅かった。
「このゲームは、私の勝ちよ」
『只今、篠文由佳さんが冬霧瞬輔の肩を触れたのでジュリエット役は篠文由佳さんに決定です』
 校内放送で流れた報告は、自分の耳をも疑う程だったが、諦めて認めることにした。
「よろしくね、瞬輔」
「ああ、よろしく頼む」
 はぁ、正直演劇って苦手なんだよなぁ。人前に出る事自体無理がある、俺は光に浴びながら仕事するより影に埋もれながら仕事するほうが性にあってるのに………。
 まあ主役に選ばれた以上、演劇は成功させるしかないな。
「教室に戻るか………」
「そうだね、明日からは練習だよ!」
「練習って…お前仕事はどうするんだよ」
「移動中にセリフを覚えるから大丈夫だよ!」
 そういえば由佳はアイドルだったな、演技なんてお手の物ってわけだ。
 問題は俺が足を引っ張らないかどうかと学園祭当日のイベントだな。
 毎年この学園祭はわけのわからないイベントばっかやってるから、今年はマシなものになって欲しいもんだ。
「明日から頑張りますか!」
 冬霧は気合いを入れ直すかのように手でパンッと頬を叩いた。
 そして翌日………。
「なぁ一つ聞いていいか?」
「なんだよ、いきなり」
「これ本当にロミジュリか?なんだよこの小っ恥ずかしいセリフは!」
「オリジナルにしたのよ、ただのロミジュリじゃ面白くないでしょ?」
 確かに普通のロミジュリじゃ面白くないが、これはちょっとないだろう。
 なんかところどころ、普通のロミジュリじゃなくなってる部分もあるし。
「なぁ男子、誰か俺と役変わらないか?」
「変わるわけないだろ!」
 ですよねー、こうなる事は分かってたけど少しだけでも希望を持った自分が馬鹿だった。
 仕方ないよな、ここは腹をくくって本気で練習するとしよう。
「おーい、ロミオ!早くこっちに来て!」
「分かった、ちょっと待ってくれ」
 あれ?今臀蝦蟇の気配がしたように思えたんだが俺の気のせいか?
「何してるの、早く来てよ!」
「悪い、今行く!」
 こうして、何日もかけてのロミジュリの練習が行われた。
 そして学園祭の前夜祭の時、四條から妙な話を聞いた。
「何、薬を盗まれた?どんな薬だよ」
「そ、それが………」
「なんだと!精神を操る薬だと!」
 冬霧がいきなり大声を出したので、前夜祭の学園美女コンテストに夢中になっていた生徒達がこちらを不思議そうに振り向いた。
「すいません、なんでもないです」
「声が大きすぎるのよ」
「わ、悪い。それで精神を操る薬の効果はどんなものなんだ?」
「薬は液体状のもので、色んな物に仕込む事が出来る。効果は飲んだ人の精神を他人に操られる」
 盗んだとしたら、この前に臀蝦蟇の気配を感じたからおそらく臀蝦蟇の連中だろう。
 その前に、
「なんでそんな薬作ったんだよ!」
「前に依頼で作って、それで余ったからそのまま放置してて………」
「まあいい、それで解毒剤は作ってるのか?」
「今作ってるけど、明日までに出来るかどうかは微妙なところね」
 今解毒剤が無い以上、明日の学園祭が無事に終わるなんて思えないな。
 だが一つ疑問な事がある。
 もし臀蝦蟇の連中が薬を盗んだとしたらどうやって忍びこんだんだ?ここの警備システムはそんな簡単に破れるようなものじゃない。
 あるとしたら、この学園の生徒が臀蝦蟇の仲間って事になる。
 そうだとしたら、一体誰なんだ?
「とりあえず私は解毒剤を作るから、研究室に戻るわ」
「ああ、頼んだぞ麻理」
 四條は小さく頷き、研究室に向かった。
 それにしても、臀蝦蟇が関係しているのは全て俺に関係している人間ばかりだ。
 もしかして臀蝦蟇の狙いは、俺なのか?
 冬霧が考え事をしている内に前夜祭は終わっていた。
 冬霧は明日の学園祭に何事もなければいいと思いながら家に帰っていった。


                                                                              続く
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