武装学園―乱舞―

グリプス

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第六章

学園祭本番!

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 とうとう学園祭が始まってしまったか、今のところ何事も無いからいいのだが、いつ臀蝦蟇の連中に何かを仕掛けられてもおかしくは無い。
 確かにその事も集中しなければいけないが、それより今は演技に集中しないといけない。
「ロミオ、準備して!」
 今更なんだが、なんで俺がロミオなんだ?別に圭人でも良かっただろうに。
「ロミオ、私はあなたと一緒にいたい。たとえこの身が滅びようとも」
「ジュリエット僕は、君を死なせたりはしない。大切なジュリエットの為に僕はこの身を捧げる」
 観客席からは興奮している声をずっと発しているんだが、このセリフのどこに興奮するのか俺には分からないな。
「お疲れ、ロミオ」
「この台本を書いたの誰だ?よくもまあ、こんなセリフが思いついたな」
「台本を書いたの大谷君だよ」
 またあいつか、あいつは俺を玩具か何かと思っているのか?
「瞬輔、大丈夫?」
「大丈夫だ、心配ない」
 もし臀蝦蟇の連中が手を出すなら、この演劇中にしてくるはずだ。
 その前になんとしてでも食い止めないといけない。
「そろそろ出番だな、行こう」
 でも薬を仕込むとしてもどうやって仕込むつもりなんだ?ここに来れるとしたら信頼のある人間しか無理だ。
 だとしたら、生徒会の人間もしくは風紀委員に限られてくる。
 いや、今は演技に集中しよう。
「ロミオ様、本当に行ってしまうのですか?」
「すまないな、お前の気持ちは分かっていたが行くしかないんだ。愛しき者の元へ」
「そこまで言うのなら止めはしません。どうかご武運を」
 相変わらず妙なセリフばかり考えつくもんだ、圭人の奴絶対に観客席で笑ってるだろ!
 ……ん?あれは生徒会の副会長じゃねぇか、なんでこんな所に………。
 いや、副会長じゃなく臀蝦蟇の手先としたらまずい!でも持っているのは花束だけだし、心配する必要ないか。
 いよいよラストだ、これで決めるとしよう。
「ああ、ロミオどうして貴方はロミオなの?貴方さえ良ければ私は家名など捨てるつもりです」
「その言葉、しかと受け取りました」 
 ロミオはジュリエットの目の前に現れ、ジュリエットの手を取り膝を地面につけ頭を下げていた。
「今参りました、愛しきジュリエット。私と共に来てはくれませんか?家名を捨てた僕と共に」
「ええ、喜んでついていきます。貴方と共になら地の果てでも地獄でもついてゆきます。愛しのロミオ」
 とりあえず、こんなものか。
 お客さんも喜んでるみたいだし、成功ってところかな?
 今の状態だと、なんとも起こってないからいいのだが油断は禁物だ。
「瞬輔、お疲れ!」
「おお由佳、名演技だったぞ」
 さすがはアイドルと言ったところだ、演技力はうまいなんてものじゃない天才と言うべきの上手さだった。
「ありがと、でも瞬輔も中々上手かったよ?」
「俺はそんなに上手かったとは思っていないが、由佳に言われたならお褒めに預かるとしようかね」
 冬霧が照れながらも答えた次の瞬間、篠文の様子がおかしく見えた。
「由佳、その水誰に貰ったんだ?」
「劇が始まる前に差し入れって言われて貰ったんだけど?」
 ………しまった!劇の最中ではなく、始まる前に手を打ってやがったのか! 
「もう一回聞く、誰に貰ったんだ?」
「多分生徒会の誰かだと思う。顔はフード被ってて見えなかったけど腕章だけ見えたから」
 生徒会の奴らか、それだけ分かれば上々だが犯人を捕まえる前に由佳の処置が大切だ。
「麻理、解毒剤は出来たのか?」
『まだかかりそうだけど、もしかして………』
「ああ、そのもしかしてだ!」
 俺がもっとしっかりしておけば、こんな事にならなかったはずなのに!
「瞬輔、どうかしたの?」
 由佳には、話しておかないといけないな。
 冬霧は篠文を連れて、人気のない場所に移動し、訳を話した。
「由佳落ち着いて聞いて欲しい。さっき飲んだ水の中に精神を操る薬が仕込まれてたんだ。だから由佳の精神は後何分後かに何者かに操られる事になる」
 こんな事を聞いたら、知っていた俺に恨みを持つだろうが恨まれても仕方ない。
 この様な事を聞いて、篠文は動揺する素振りを見せず笑顔で冬霧の目を真っ直ぐ見た。
「でも、きっと瞬輔が助けてくれるって信じてるから。でしょ?」
「ああ、必ず助けてみせる、必ずだ!」
 まだ薬の効果は出ていないらしいが、行動は共にした方がいいな。
「由佳、クラスの演劇は後何時間で始まる?」
「………えっと、後三十分しかないね」
 ………三十分か、あまりにも時間が足りなさすぎるな。解毒剤はまだ時間がかかるかもしれない。
「とりあえず、教室に戻って演劇に出よう」
「………そうだね」
 できれば演劇中に、薬の効果がでなければいいのだが……。
 そして、演劇の第二部、三部では薬の効果は出ずに幕を閉じた。
「由佳、悪かったな。妙な事に巻き込ませて」
「本当に悪いと思ってるなら、今から学園祭のイベントに一緒に出て!」
「今回のイベントの内容はなんだ?」
「確か、男女での二人三脚だったかな?」
 なんだ、今回はまだマシなイベントらしい。
「一緒に参加してくれるよね?」
「分かった、出てやるよ。ただしこの事は他言無用で頼むぞ」
「どうして?」
「また、クラスの奴らに追いかけられるからな」
 まぁ、日常的になってるから別にいいんだが、次の日絢香がいつも不機嫌そうな顔をしてるからなだめるのが大変なんだよ………。
「出てくれるなら、別にいいけど」
「助かるよ」
 そして冬霧と篠文は、イベントが始まる会場に向かった。
「今年の学園祭もいよいよ終わりです!ですがこのまま終るなんて面白くない、そう思ってる方達は多いはずです!」
「そんな方達の為に、今年はこんなイベントを用意しました!『トラップ付きの二人三脚!優勝者には願いが一つ叶えられる!』つまり優勝者には好きな願いを一つお願いできます!」
 おい、聞いてないぞ。
 由佳の奴、この事を聞いたら絶対に断ると踏んであえて言わなかったんだな。
「出るからには、優勝するぞ由佳!」
「もちろん、優勝以外に興味はないもの」
 冬霧は自分の右足と篠文の左足に、渡されたリボンを括りつけた。
「それでは、位置についてよーいどん!」
「由佳、ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?早く行かないと優勝出来ないよ」
 さっき、このイベントの名前を紹介した時、『トラップ付きの』って言っていた。
 俺の直感が正しければ………
「おーっと、大量の選手が落とし穴に落ちていく!それもそのはず、最初のトラップは『落とし穴』です!」
 落とし穴を作ったなら、間隔を空けて作ったはずだ。
 それなら、簡単だ。
「由佳、行くぞ!」
「うん!」
 冬霧と篠文は落とし穴に落ちる事なく、難なく第一関門をクリアした。
「なんと、冬霧ペアは落とし穴に落ちる事なく二つ目のトラップの元へ向かった!」
「君もやるね」
 この声は、
「会長ですか、その言葉そのままそっくりお返ししますよ」
「シュンちゃん、何してるの?」
「絢香!いや、これは、何でもない!」
 冬霧と篠文は一気にトップまで上り詰めた。
 トップと言っても、一度だけダッシュしただけなのでまたすぐに追いつかれた。
「さて、次のトラップは『岩石落とし』です!」
 岩石落としだと?それってどういう事だ?
「うわっ!危なかった、岩石は水風船の事だったのか」
「その通り、この水風船に当たったペアはそこで脱落とさせて頂きます!」
 水風船を避けながら、このトラップを抜けろってことね。
「由佳、しゃがんで!」
「ど、どうしたの?急に」
 篠文は冬霧に言われた通り、しゃがむと頭上を水風船が通り過ぎた。
「なんで水風船が来るって分かったの?」
「気配だよ、おそらく水風船は手動で投げてくるなら、人の気配を読み取ればどこに飛んでくるかが分かる」
 でも会長も同じ事をしているんだろう、あの人は誰かの気配を読み取る事は容易いだろうし。
「さ、そろそろ行こうか!」
 こうして冬霧と篠文のペアは第二関門もクリアし、次がラストなった。
「さて、最後のトラップは『タッグ戦』です!」
 もうトラップでもなんでもないじゃねぇか!
 つまり、呼吸を合わせなければ勝てないという事になるな。
「最後のトラップでは、足首に括りつけてあるリボンを斬られたり取れたりしたらそこで失格となりますので」
 冬霧は突然に篠文を片手で自分の体にくっつけ、篠文の耳元に囁いた。
「俺が、攻撃を避ける。由佳は攻撃を仕掛けてくれ」 
「了解、ヘマしないでよね」
「誰に言ってんだ、落ち着いていけば今回は勝てない相手じゃない」
「それでは、スタート!」
 会長のペアの女子は、会長のファンの人だろう。それなら今、緊張で体が思うように動かないはず、そこを狙ってリボンを由佳の撃つ銃弾で断ち切ればいい。
「由佳、リボンを狙ってけ!」
「そうはさせないよ!」
 相変わらず会長は冷静だな。
 でも今回は、ハンデがある、勝てない相手じゃない!
「今回も勝たせてもらいますよ」
「勝てるのかい?」
 会長め、いきなり〝乱れ桜〟を使ってきやがった。只でさえ刀二本で防御するのも大変だってのに、今回に限っては一本だ。
 どれだけ保つか……。
 正直〝陽炎〟を使えば早く片付くかもしれないが、冬にも体育祭がある。
 その時の為にもまだ取っておきたい。
「瞬輔、一度距離をとって」
「分かった、ちょっと待ってろ」
 冬霧は後ろに大きく跳んで、銘堂会長との距離をとった。
「それで、いけるか?」
「もう決着は着いたわ」
「会長のリボンが切れている?という事は、優勝は冬霧、篠文ペア!」
 よくもまあ、あんな至近距離で正確に当てられたもんだ。
 あの状態だと、標準がズレて狙いにくいはずなのに、どんだけ成長していくんだ?こいつは。
「それでは、二人共ステージの上に来てください!」
 なんだ、今の悪寒は?もしかして、薬の効果が効いているのか?
「麻理、解毒剤は完成したか?」
「ええ、今運んでるところよ。シュン君どこにいるの?」
「グラウンドにある、ステージの上だ」
「分かった、すぐに行く!」
 解毒剤が着くまで、何も起こるなよ。
 冬霧の願いは無駄に終わってしまった。
 篠文は、銃口を観客席に向けて乱射し始めた。
「観客の皆さんは早く避難してください!」
「シュンちゃん!一体何があったの?」
「ここにいる全員に告ぐ、今から数秒目を瞑っていろ!」
 冬霧はスピーカーを使って、生徒達や外からの客の目を瞑らせた。
「由佳、今すぐ元に戻してやる」
「ごめん瞬輔!」
「謝るな、元々俺が撒いた種だ。悪く思わないでくれ」
 冬霧は篠文の顎を人差し指で、ぐいっと上げて唇を篠文の唇に合わせた。
 冬霧は数秒、篠文の唇を奪っていた。
 そして、篠文の精神は無事に取り戻す事が出来た。
「由佳、大丈夫か?」
「い、今はこっち見ないで!」
 篠文は真っ赤な顔になり、耳まで真っ赤に染まっていた。
 もちろん、二人がキスをしていた光景を見ていた者達も真っ赤になっていた。
 この時の皆は、固まって何も聞こえないだろうと冬霧は考え、この騒動を起こした犯人の名前を叫んだ。
「そろそろ出てきたらどうだ?臀蝦蟇の手先となった副会長さんよ!」
「なぜ私だと?」
「麻理の研究室に忍び込んで薬を盗み、盗んだ薬を水に仕込んで、由佳に差し入れと装い渡した。そうだろ?」
「お見事、では私はこの辺で失礼します。いずれまたお会いしましょう」
 二度とごめんだ、今の話は誰にも聞かれてないみたいだな。
 まだ固まってるとこを見ると、このまま逃げてもバレないだろうし、逃げよう。
 今日はもう疲れたし、帰るとするか。明日学校に来たら尋問からの追跡が待ってるだろうし。

 
                                                               第七章に続く
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