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エルドとステラが叫ぶと同時に、俺はフェリシアが落ちそうになった木の反対側へまわり、落ちてくる彼女を受け止めようとするも、
(い、いない!?)
上を見るとぼんやりとした魔法陣がフェリシアが体勢を崩したあたりに今にも消えそうな光を放っている。
あの魔法陣は、…確か似たようなものを前世で見た気がする。未来では魔道具、というものがあり、簡易的な転送魔法陣として近距離の移動に使っていた魔法陣に似ていた。
なぜ知ってるのかと言えば、魔法具屋でバイトした時にセールで激売れして、魔法陣の模様を暗記するほど見ていたからだ。この時代ではまだ魔道具なんてないし、転移魔法なんて魔導士じゃないと使えないはずじゃないのか?
とにかく、フェリシアが落ちてこないし、木の上にもいない。さっきの魔法陣を見る限り、誰かが仕掛けていたトラップにフェリシアが引っかかってしまってここからそう遠くない場所へ転移させられた。という事なのだろう。
問題は…。
「お、お姉ちゃん!…お姉ちゃん?どこ行っちゃったの!?えっ、えっ……!」
「フェリシア! 聞こえるであるかー!えっと……き、騎士は女子どもを泣かせてはならんのだー!だから、はやく出てくるのであるー!」
木の周りを半泣きで彷徨うステラと、草むらをかき分けるエルドの2人だ。こいつらがいると足手まといになる。ステラはまだしも、エルドはただの7歳のガキ大将。7歳の中では強いだけで大人からしたらなんてことない。この2人をどうにかして、一人でフェリシアを探しに行った方が効率がいいだろう。それに早くメラニー先生にも伝えて助けを呼んだ方がいい。なんせ俺も子供だ。出来ることはほとんどない。
「2人とも、聞いてくれ」
エルドと半泣きのステラが探す手を止めて近くに来てくれた。ステラは見る限りもう限界が近そうだ。
「メラニー先生に、早めに知らせたほうがいいと思うんだ。ステラ、エルド……先生を呼んできてくれないか?僕はこのあたりをもう少し探してみるよ。それに、ほかのグループの子が来たら、状況を説明して、一緒に探してもらえるように頼んでみる。ふたりとも、お願いできる?」
「わ、私もここに残るよ!お姉ちゃんが心配だよ……!アレン君ひとりに任せるなんて、できないよ……!」
「それなら俺も残るぞ!騎士たるもの、弱者のためにすべてを賭けて守るべし!ステラを残らせるなんてできないからな!」
「エルド、ステラ。……二人とも、気持ちはわかるよ。でも、今は感情で動いちゃダメだ。エルド、お前は“騎士になりたい”って、いつも言ってるよな?だったら、いま何をすべきかわかるはずだ。ステラを守って、先生のところまで無事に連れていく──それが今のお前にできる、いちばん大事な“勇気”だよ。ここは僕に任せて。二人は先生を呼んできてくれ。お願いだ。」
「お、……おぉ!!!そ、その通りだ!アレンの言う通りだよな!お、俺……ステラを絶対守って、先生のところに戻る!ま、任せろ!“未来の騎士”の名にかけて!!」
俺はエルドの肩…に手が届かなかったから手を握って、まっすぐにエルドの目を見て説得した。
彼はその説得を思った以上にあっさりと受け取ると、ステラの手をとり、来た道をゆっくりと引き返し始めた。ここまで来るのに大きな分かれ道はなかったし、森に入ってそこまで時間は経過していない。まっすぐ行けば迷うことなく先生のいたところまで帰れるだろう。
「ア、アレン君……。お姉ちゃん、本当に大丈夫……?ちゃんと……また会えるよね……?」
涙をいっぱいに浮かべて心配そうに振り向くステラの顔を見た瞬間、頭の中に記憶が洪水のように流れ込んできた。
エルドとステラ、俺の3人がこの場所で泣いている場面だ。
メラニー先生が来てフェリシアがいないことに気が付いて捜索が始まる。
俺たち3人はすぐに保護され、事情を聞かれたが、フェリシアが木の上から戻ってこない。それ以外に何も言う事ができなく、大人たちは夜通し捜索していた。
次の日、学校にステラとフェリシアはいなかった。
数日後、フェリシアは見つかったが病気で学校には来れないと言われた。
さらに数日後、ステラは学校に来る用になったが、フェリシアはいない。
フェリシアは家庭の都合で1人引越して別の街に行くことになった。という事でその後会えなかった。
ーそうだ。フェリシアは未来にいなかった。前世では引っ越してしまった後、一度も会ったことがないんだ。
子供の時は気に留めなかったが、あの後本当にフェリシアは見つかったのか?小さな子供が、数日もこんな森で生きていけるのか?
心の中に、黒いモヤが渦巻く感覚があった。このまま、フェリシアは見つからないのではないか?
「あ、アレン君?」
「……大丈夫。心配しなくていいよ、ステラ。絶対に大丈夫だ。フェリシアは、俺が必ず見つける。だから今は――エルドと一緒に、メラニー先生を呼んできてほしい。ステラがいてくれたら、先生もすぐ状況を理解して動いてくれるはずだ。フェリシアのために……少しだけ、力を貸してくれるかい?」
大きな丸い目が、さらに大きく見えた。俺の言葉に、声に反応するように大きくなった彼女の瞳からは涙は消え、小さな手でスカートを抑えて森の出口の方へちょこちょこと小走りで走っていった。少し離れたところからこちらに振り返り、ステラは今まで聞いたことのないような大きな声で、大きく手を振りながら叫ぶ。
「わ、……私も……お姉ちゃんのために頑張る!や、約束だよ……! アレン君!」
俺は無言で手を振ると、それを見たステラはエルドと一緒に森の出口へと再び走り出していった。
その姿を見送りながら、当時のことを思い出そうとしていた。
フェリシアの失踪前は思い出せなかったことが、少しずつでも思い出せるようになっていた。
未来ではステラの結婚は知っていたがフェリシアの事は一切聞かなかった。
フェリシアが引っ越した後、一度もステラに会いに来ているという話は聞いていない。こんなに仲が良くて、フェリシア自身、ここまでステラを溺愛しているのに離れ離れになってそのままさよなら。というのはあまりにも不自然だ。
いつの間にか領内でフェリシアの事を覚えている人、口にする人はいなくなった。
こんな不自然なことがあったのに、なぜ今の今まで思い出せなかったのだろう?
とにかく、このままフェリシアがいない未来。というのは避けないといけない気がする。まだ出会って半日だが、俺は2人に幸せになってもらいたい。俺は自分の運命を捻じ曲げたんだ。ついでに大切な者の運命も捻じ曲げてしまおうじゃないか。
(あの魔法陣は、魔道具で販売している時と同じものだったら、ここから半径数百メートル以内にしか転移できないはず。そう遠くに転移しているわけはないだろうから、この辺りを探していれば必ずフェリシアを見つけられるはず)
俺は草が生い茂るわき道に入り、どこかにフェリシアが倒れていないかを探すことにした。
(い、いない!?)
上を見るとぼんやりとした魔法陣がフェリシアが体勢を崩したあたりに今にも消えそうな光を放っている。
あの魔法陣は、…確か似たようなものを前世で見た気がする。未来では魔道具、というものがあり、簡易的な転送魔法陣として近距離の移動に使っていた魔法陣に似ていた。
なぜ知ってるのかと言えば、魔法具屋でバイトした時にセールで激売れして、魔法陣の模様を暗記するほど見ていたからだ。この時代ではまだ魔道具なんてないし、転移魔法なんて魔導士じゃないと使えないはずじゃないのか?
とにかく、フェリシアが落ちてこないし、木の上にもいない。さっきの魔法陣を見る限り、誰かが仕掛けていたトラップにフェリシアが引っかかってしまってここからそう遠くない場所へ転移させられた。という事なのだろう。
問題は…。
「お、お姉ちゃん!…お姉ちゃん?どこ行っちゃったの!?えっ、えっ……!」
「フェリシア! 聞こえるであるかー!えっと……き、騎士は女子どもを泣かせてはならんのだー!だから、はやく出てくるのであるー!」
木の周りを半泣きで彷徨うステラと、草むらをかき分けるエルドの2人だ。こいつらがいると足手まといになる。ステラはまだしも、エルドはただの7歳のガキ大将。7歳の中では強いだけで大人からしたらなんてことない。この2人をどうにかして、一人でフェリシアを探しに行った方が効率がいいだろう。それに早くメラニー先生にも伝えて助けを呼んだ方がいい。なんせ俺も子供だ。出来ることはほとんどない。
「2人とも、聞いてくれ」
エルドと半泣きのステラが探す手を止めて近くに来てくれた。ステラは見る限りもう限界が近そうだ。
「メラニー先生に、早めに知らせたほうがいいと思うんだ。ステラ、エルド……先生を呼んできてくれないか?僕はこのあたりをもう少し探してみるよ。それに、ほかのグループの子が来たら、状況を説明して、一緒に探してもらえるように頼んでみる。ふたりとも、お願いできる?」
「わ、私もここに残るよ!お姉ちゃんが心配だよ……!アレン君ひとりに任せるなんて、できないよ……!」
「それなら俺も残るぞ!騎士たるもの、弱者のためにすべてを賭けて守るべし!ステラを残らせるなんてできないからな!」
「エルド、ステラ。……二人とも、気持ちはわかるよ。でも、今は感情で動いちゃダメだ。エルド、お前は“騎士になりたい”って、いつも言ってるよな?だったら、いま何をすべきかわかるはずだ。ステラを守って、先生のところまで無事に連れていく──それが今のお前にできる、いちばん大事な“勇気”だよ。ここは僕に任せて。二人は先生を呼んできてくれ。お願いだ。」
「お、……おぉ!!!そ、その通りだ!アレンの言う通りだよな!お、俺……ステラを絶対守って、先生のところに戻る!ま、任せろ!“未来の騎士”の名にかけて!!」
俺はエルドの肩…に手が届かなかったから手を握って、まっすぐにエルドの目を見て説得した。
彼はその説得を思った以上にあっさりと受け取ると、ステラの手をとり、来た道をゆっくりと引き返し始めた。ここまで来るのに大きな分かれ道はなかったし、森に入ってそこまで時間は経過していない。まっすぐ行けば迷うことなく先生のいたところまで帰れるだろう。
「ア、アレン君……。お姉ちゃん、本当に大丈夫……?ちゃんと……また会えるよね……?」
涙をいっぱいに浮かべて心配そうに振り向くステラの顔を見た瞬間、頭の中に記憶が洪水のように流れ込んできた。
エルドとステラ、俺の3人がこの場所で泣いている場面だ。
メラニー先生が来てフェリシアがいないことに気が付いて捜索が始まる。
俺たち3人はすぐに保護され、事情を聞かれたが、フェリシアが木の上から戻ってこない。それ以外に何も言う事ができなく、大人たちは夜通し捜索していた。
次の日、学校にステラとフェリシアはいなかった。
数日後、フェリシアは見つかったが病気で学校には来れないと言われた。
さらに数日後、ステラは学校に来る用になったが、フェリシアはいない。
フェリシアは家庭の都合で1人引越して別の街に行くことになった。という事でその後会えなかった。
ーそうだ。フェリシアは未来にいなかった。前世では引っ越してしまった後、一度も会ったことがないんだ。
子供の時は気に留めなかったが、あの後本当にフェリシアは見つかったのか?小さな子供が、数日もこんな森で生きていけるのか?
心の中に、黒いモヤが渦巻く感覚があった。このまま、フェリシアは見つからないのではないか?
「あ、アレン君?」
「……大丈夫。心配しなくていいよ、ステラ。絶対に大丈夫だ。フェリシアは、俺が必ず見つける。だから今は――エルドと一緒に、メラニー先生を呼んできてほしい。ステラがいてくれたら、先生もすぐ状況を理解して動いてくれるはずだ。フェリシアのために……少しだけ、力を貸してくれるかい?」
大きな丸い目が、さらに大きく見えた。俺の言葉に、声に反応するように大きくなった彼女の瞳からは涙は消え、小さな手でスカートを抑えて森の出口の方へちょこちょこと小走りで走っていった。少し離れたところからこちらに振り返り、ステラは今まで聞いたことのないような大きな声で、大きく手を振りながら叫ぶ。
「わ、……私も……お姉ちゃんのために頑張る!や、約束だよ……! アレン君!」
俺は無言で手を振ると、それを見たステラはエルドと一緒に森の出口へと再び走り出していった。
その姿を見送りながら、当時のことを思い出そうとしていた。
フェリシアの失踪前は思い出せなかったことが、少しずつでも思い出せるようになっていた。
未来ではステラの結婚は知っていたがフェリシアの事は一切聞かなかった。
フェリシアが引っ越した後、一度もステラに会いに来ているという話は聞いていない。こんなに仲が良くて、フェリシア自身、ここまでステラを溺愛しているのに離れ離れになってそのままさよなら。というのはあまりにも不自然だ。
いつの間にか領内でフェリシアの事を覚えている人、口にする人はいなくなった。
こんな不自然なことがあったのに、なぜ今の今まで思い出せなかったのだろう?
とにかく、このままフェリシアがいない未来。というのは避けないといけない気がする。まだ出会って半日だが、俺は2人に幸せになってもらいたい。俺は自分の運命を捻じ曲げたんだ。ついでに大切な者の運命も捻じ曲げてしまおうじゃないか。
(あの魔法陣は、魔道具で販売している時と同じものだったら、ここから半径数百メートル以内にしか転移できないはず。そう遠くに転移しているわけはないだろうから、この辺りを探していれば必ずフェリシアを見つけられるはず)
俺は草が生い茂るわき道に入り、どこかにフェリシアが倒れていないかを探すことにした。
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