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第八章
8-4 石壁の町
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「アリアちゃん、寒いだろう? ほら」
向かいに座るアリアちゃんにファーの付いたマントを手渡す。
「ラウル、ありがとう」
「クゥ!」
にっこり笑って応えるアリアちゃんの隣で、自分に任せろと言わんばかりにクーが鳴いた。
確かに、クーが寄り添っていれば少しは温かいだろう。
でもここは空の上だ。地上よりもさらに寒い。僕もかたわらに置いてあったフード付きのマントを羽織った。
アリアちゃんが目覚め、僕らはまた『黒い魔獣』を探す旅に出ることとなった。だけど、以前のように歩いてのんびりと旅をしている余裕はない。
またヴィーさんに大鳥になってもらい、僕らの乗った荷馬車を目的地の近くまで運んでもらう事になった。
空の上は地上よりも太陽に近いはずなのに、地を歩いているよりもずっと寒い。城に来た時もそうだったけれど、それよりもさらに寒い。寒すぎる。気になって、荷馬車の窓から下を見ると、地面がやけに白けて見えた。
「そろそろ下に降りるぞ」
荷馬車の屋根のさらに上の方から、ヴィーさんの声がした。
下ろされたのは荒野のど真ん中だった。地が荒れているだけじゃない。地面や草木には薄っすらと白い霜が降りている。地面が白っぽくみえたのはこの霜の所為らしい。荒野を渡る風はさらに冷たく、僕の身を震わせた。
厚手のマントを羽織っているはずのに、冷気がマントを抜けて入ってくる。
「これは、もっと本格的な冬支度を揃えないといけないな」
アリアちゃんの方を見ながら、セリオンさんが言った。
前にも寒い地を訪れていたし、3人と僕の冬支度は万全だ。でも成長したアリアちゃんには、その時の服は着られない。
今、アリアちゃんの着ている服は、僕とはぐれたあの日に、王都でヴィーさんが買ってきたものだそうだ。ヴィーさんが町で僕らと別れて女性に会いにいったのは、アリアちゃんの服を買う為だったらしい。
「男一人じゃあ、さすがに下着までは買えねえからな。買い物に付き合ってもらったんだよ」
そんなヴィーさんの言葉に、セリオンさんは、「アリアの服を言い訳にして女性に会いに行ったんだろう」と言い、ジャウマさんは「まあ、両方だろうな」と言った。
僕は何も言わなかったけれど、ジャウマさんの意見に賛成したい。
「上から見た感じでは、目的の町まではあと1時間ほどのはずだ。まだ時間も早いし、そこでアリアの服も見ようぜ」
マジックバッグから出した自分のコートをアリアちゃんに着せながら、ヴィーさんが言った。
* * *
「なんだか物々しいな」
北の寒い地域にあるこの町に入ってまず、ジャウマさんがそう呟いたのもわかる。
この町の規模にしては、石造りの塀がやたらと高くて厚かったし、門番はやけに頑丈そうな金属製の鎧を着ていた。まるで何かから町を丸ごと守ろうとしているようだった。
町に入ってまず訪れた冒険者ギルドの建物は、やたらと大きく感じた。中に入ってみてすぐに、その理由がわかった。
入ってすぐのフロアの右側は酒場になっている。夜にはまだ早いのに、もう飲んでいる客もいるようだ。
フロアの左側には他の町にもある冒険者ギルドと同じような光景が広がっている。依頼掲示板と冒険者用のテーブルが3卓ほど。それと依頼の受付カウンター。
「寒い地方では、酒精で暖を取ることも多いからな。それで酒場も併設しているんだろう」
セリオンさんが言った。
いつも他の町でもするように、真っすぐに依頼掲示板へ向かう。アリアちゃんはセリオンさん、クーと一緒にテーブルの方へ行った。
ジャウマさん、ヴィーさんと一緒に掲示板を覗き込んだけれど、なんだか二人の見ている依頼票に違和感を覚えた。
……やっぱり。二人が見ている依頼票は、いつものよりランクの低い物ばかりだ。
「ジャウマさん、いつもみたいにAランクの依頼は受けないんですか?」
冒険者は、自分のランクより一つ上のランクまでの依頼を受注することができる。だから、彼らは本当ならSランクの依頼も受けることができるはずだ。
でもここで二人が見ているのは、Aランクどころか、Bランクの依頼票ばかりだ。
「ああ。ここではこっちのギルドカードを使う」
ジャウマさんがこっそりと言ってみせてくれた冒険者カードには『B』と書かれていた。
「あれ? なんで?」
「実はギルドカードは何枚か持っているんだ。そうしておかないと経験値が上がりすぎて、普通の冒険者のふりができないからな」
ジャウマさんたちは、人間に比べて寿命が長い。
今の彼らは、見た目感じでは20歳を過ぎたくらいだけれど、実際にはもっともっと長い時を生きている。一番若いセリオンさんでさえもう70歳近いそうだ。
当然、4人で旅をしていた期間も長い。その間はずっと冒険者のふりをしていたそうだ。
この強さで何度も依頼を受けていると、経験値が計上できないほどになってしまい、不自然さが生じる。さらに活動期間が長すぎても、長命なことがばれてしまう。
その為、こうして複数の登録をして、不自然でない程度に経験値を振り分け、ある程度たった冒険者登録は抹消し、できるだけ自然に見えるようにしているそうだ。
「ついでに言うと、Aランクの冒険者にはギルドから余計な依頼がくることもあるからな。今はアリアの力を集めることを優先させたいから、無駄に頼られるのは避けたい」
確かに、今までの町でもそういったことがあったし、それはそうだなと納得した。
今日はギルトでは依頼の確認をしただけで。その後は町でアリアちゃんの冬用の服を何着か求め、宿で休むことになった。
向かいに座るアリアちゃんにファーの付いたマントを手渡す。
「ラウル、ありがとう」
「クゥ!」
にっこり笑って応えるアリアちゃんの隣で、自分に任せろと言わんばかりにクーが鳴いた。
確かに、クーが寄り添っていれば少しは温かいだろう。
でもここは空の上だ。地上よりもさらに寒い。僕もかたわらに置いてあったフード付きのマントを羽織った。
アリアちゃんが目覚め、僕らはまた『黒い魔獣』を探す旅に出ることとなった。だけど、以前のように歩いてのんびりと旅をしている余裕はない。
またヴィーさんに大鳥になってもらい、僕らの乗った荷馬車を目的地の近くまで運んでもらう事になった。
空の上は地上よりも太陽に近いはずなのに、地を歩いているよりもずっと寒い。城に来た時もそうだったけれど、それよりもさらに寒い。寒すぎる。気になって、荷馬車の窓から下を見ると、地面がやけに白けて見えた。
「そろそろ下に降りるぞ」
荷馬車の屋根のさらに上の方から、ヴィーさんの声がした。
下ろされたのは荒野のど真ん中だった。地が荒れているだけじゃない。地面や草木には薄っすらと白い霜が降りている。地面が白っぽくみえたのはこの霜の所為らしい。荒野を渡る風はさらに冷たく、僕の身を震わせた。
厚手のマントを羽織っているはずのに、冷気がマントを抜けて入ってくる。
「これは、もっと本格的な冬支度を揃えないといけないな」
アリアちゃんの方を見ながら、セリオンさんが言った。
前にも寒い地を訪れていたし、3人と僕の冬支度は万全だ。でも成長したアリアちゃんには、その時の服は着られない。
今、アリアちゃんの着ている服は、僕とはぐれたあの日に、王都でヴィーさんが買ってきたものだそうだ。ヴィーさんが町で僕らと別れて女性に会いにいったのは、アリアちゃんの服を買う為だったらしい。
「男一人じゃあ、さすがに下着までは買えねえからな。買い物に付き合ってもらったんだよ」
そんなヴィーさんの言葉に、セリオンさんは、「アリアの服を言い訳にして女性に会いに行ったんだろう」と言い、ジャウマさんは「まあ、両方だろうな」と言った。
僕は何も言わなかったけれど、ジャウマさんの意見に賛成したい。
「上から見た感じでは、目的の町まではあと1時間ほどのはずだ。まだ時間も早いし、そこでアリアの服も見ようぜ」
マジックバッグから出した自分のコートをアリアちゃんに着せながら、ヴィーさんが言った。
* * *
「なんだか物々しいな」
北の寒い地域にあるこの町に入ってまず、ジャウマさんがそう呟いたのもわかる。
この町の規模にしては、石造りの塀がやたらと高くて厚かったし、門番はやけに頑丈そうな金属製の鎧を着ていた。まるで何かから町を丸ごと守ろうとしているようだった。
町に入ってまず訪れた冒険者ギルドの建物は、やたらと大きく感じた。中に入ってみてすぐに、その理由がわかった。
入ってすぐのフロアの右側は酒場になっている。夜にはまだ早いのに、もう飲んでいる客もいるようだ。
フロアの左側には他の町にもある冒険者ギルドと同じような光景が広がっている。依頼掲示板と冒険者用のテーブルが3卓ほど。それと依頼の受付カウンター。
「寒い地方では、酒精で暖を取ることも多いからな。それで酒場も併設しているんだろう」
セリオンさんが言った。
いつも他の町でもするように、真っすぐに依頼掲示板へ向かう。アリアちゃんはセリオンさん、クーと一緒にテーブルの方へ行った。
ジャウマさん、ヴィーさんと一緒に掲示板を覗き込んだけれど、なんだか二人の見ている依頼票に違和感を覚えた。
……やっぱり。二人が見ている依頼票は、いつものよりランクの低い物ばかりだ。
「ジャウマさん、いつもみたいにAランクの依頼は受けないんですか?」
冒険者は、自分のランクより一つ上のランクまでの依頼を受注することができる。だから、彼らは本当ならSランクの依頼も受けることができるはずだ。
でもここで二人が見ているのは、Aランクどころか、Bランクの依頼票ばかりだ。
「ああ。ここではこっちのギルドカードを使う」
ジャウマさんがこっそりと言ってみせてくれた冒険者カードには『B』と書かれていた。
「あれ? なんで?」
「実はギルドカードは何枚か持っているんだ。そうしておかないと経験値が上がりすぎて、普通の冒険者のふりができないからな」
ジャウマさんたちは、人間に比べて寿命が長い。
今の彼らは、見た目感じでは20歳を過ぎたくらいだけれど、実際にはもっともっと長い時を生きている。一番若いセリオンさんでさえもう70歳近いそうだ。
当然、4人で旅をしていた期間も長い。その間はずっと冒険者のふりをしていたそうだ。
この強さで何度も依頼を受けていると、経験値が計上できないほどになってしまい、不自然さが生じる。さらに活動期間が長すぎても、長命なことがばれてしまう。
その為、こうして複数の登録をして、不自然でない程度に経験値を振り分け、ある程度たった冒険者登録は抹消し、できるだけ自然に見えるようにしているそうだ。
「ついでに言うと、Aランクの冒険者にはギルドから余計な依頼がくることもあるからな。今はアリアの力を集めることを優先させたいから、無駄に頼られるのは避けたい」
確かに、今までの町でもそういったことがあったし、それはそうだなと納得した。
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