18 / 333
故郷へ向かう旅
14 疑惑(2)
しおりを挟む
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。
・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー
・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士
・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い
・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟
==============================
冒険者ギルドを出ると一度宿に向かった。皆さんは準備したらすぐに出掛けるそうだ。
「私も同行させていただけませんか?」
駆け寄って、見上げながらザックさんに声を掛けた。
「狼族ですから鼻も利きます。少しはお役に立てるかと思うのですが」
ザックさんは私の様子を見回すと、振り返ってアンナさんに目配せをした。
「さっき診た感じだと体に異常はなさそうよ。スタミナさえ回復してれば大丈夫じゃないかしら?」
大丈夫!とアピールするように、ぴょんぴょんと跳ねて見せると、皆から小さな笑みがこぼれた。
「でもリリアンちゃん、まだDランクよね」
今回はクエストという形式ではないから、冒険者ランクの制限もないはずだ。だからリタさんは純粋に私の安全面を心配してくれているのだろう。
勿論、迷惑をかける可能性はあるので無理は言えない。でも前世の時には無かったこの町、そして周りの環境など、色々と確認をしておきたい。
昨日の事もあるし、一人で見て回ると言ったらきっと止められるだろう。それならば彼らについて行く方がいい。
「まあいいだろう。今日はあくまでも調査だし、情報は多く得られる方が有り難い。もとより危険には立ち入らないつもりだ。俺たちもまだBランクのパーティーだからな、無理はできない。もし危険があると判断すれば、すぐに退くし、逃げる選択肢も大いにありうる」
それを聞いて、何故かビリーさんが嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振った。ザックさんの言葉を聞いて安心したのかな。
確かに、昨日のミノタウロスのような高ランクの魔獣に出くわす可能性もあるから、無理はしない方がいいよね。と私が思ったところで、昨日無謀にもミノタウロスに立ち向かって行ったという体の小娘の口からは何も言えない。
「よろしくお願いします!」
そう言ってザックさんに頭を下げた。
* * *
出立の前にパーティーメンバーの登録を行う。登録といっても、冒険者カードをパーティーリーダーに確認してもらうくらいだ。
本当はカードを出さなくても、双方の意思の確認だけでも完了するのだが、やはり形式的なものがあった方がやりやすいという事で、この方法が通例になっている。
カードに主要なスキルを表示させてザックさんに渡した。こっそり『偽装』の魔法石を発動させているので、一応Dランクらしく見えるはずだ。
パーティー加入が完了した途端、私とザックさんの全身に光が薄く纏わりついて、すぐに消えた。周りに居た皆が目を見張って見ている。僅かにスキルが上がったようだ。この感覚は覚えがある。
「ザックさん、『獣使い』持ってるんですね」
そう確認すると、ザックさんはちょっと気まずそうに視線を逸らせた。
「あー…… 昔付き合ってた女がな、獣人だったんだよ」
済んだ過去の事、さらにザックさんの雰囲気からすると、余計な話を聞くのは良い事ではないだろう。
「そうだったんですね」とだけ言い、そしらぬ顔で荷物を背負い出立の雰囲気を作った。
さっきリタさんがザックさんの言葉にちらりと反応したのが見えたし、ここはさらりと流した方がいい。
まずは昨日のミノタウロス戦の現場まで、歩いて向かう。パーティーの荷物持ちを申し出たが、各々が荷物を持つ事になっているらしく、一応下っ端なのに雑用仕事は全くなかった。
それどころか何故かビリーさんはひどく驚いて、不思議そうな顔をした。もしかしてまだ体調が戻ってなくて無理をしてるとか思われたのかな? もう大丈夫なのに。
ビリーさんとアンナさんの姉弟は、かなり私の事を気遣ってくれているようだった。道中も色々と話しかけてくれたり、そんなビリーさんの言動にアンナさんがツッコミを入れてたり。
そんな様子がとても楽しくて嬉しい気持ちになったし、明るい雰囲気にザックさんとリタさんもさっきの変な緊張がなくなったようで、内心ほっとした。
昨日の場所に着くまでには1時間もかからなかった。こんなに町の近くだったのか……
あの時「町が危険にさらされる」と言ったのは、咄嗟についた嘘だったけど、あながち間違いではなかったらしい。
昨日のうちに辺りを浄化してくれたのだろう。血の跡などは一切見あたらない。でも路上に残る踏みしめた足跡と、踏み荒らされた道端の草たちが、ここで何かがあった事を訴えかけていた。
そのまま町とは反対の方向に歩を進める。そちらの方向からこちらに向かうように続く足跡を見ると、ミノタウロスの蹄の跡だけではない。明らかに複数の人間の靴跡も入り混じっている。
「追われたんだな」
ザックさんが低く呟くのを聞いて、ビリーさんの顔色が少し曇った。大方その様子を想像してしまったのだろう。
四半時間ほど道を進むと、足跡が道沿いから森の方へ逸れた。
森に入ってからは下草が多く、足跡を辿る事は出来なくなってしまった。
先を警戒しながらさらに奥へと進む。所々に手折られた木の枝の跡を確認できる。おそらくあのミノタウロスが通ったのだろう。
しばらく進み、森がさらに鬱蒼とした様相を見せ始めた頃、やや湿り気を帯びた風が僅かに不快な臭いを運んできた。
おそらくまだ私にしか嗅ぎ取れていない。この臭いは……
「ザックさん、多分こっちです」
指を差した先は森のさらに奥。いつの間にか辺りに漂い始めた霧が、さらに行く先を覆い隠そうとしていた。
==============================
(メモ)
『獣使い』スキル(#7)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。
・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー
・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士
・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い
・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟
==============================
冒険者ギルドを出ると一度宿に向かった。皆さんは準備したらすぐに出掛けるそうだ。
「私も同行させていただけませんか?」
駆け寄って、見上げながらザックさんに声を掛けた。
「狼族ですから鼻も利きます。少しはお役に立てるかと思うのですが」
ザックさんは私の様子を見回すと、振り返ってアンナさんに目配せをした。
「さっき診た感じだと体に異常はなさそうよ。スタミナさえ回復してれば大丈夫じゃないかしら?」
大丈夫!とアピールするように、ぴょんぴょんと跳ねて見せると、皆から小さな笑みがこぼれた。
「でもリリアンちゃん、まだDランクよね」
今回はクエストという形式ではないから、冒険者ランクの制限もないはずだ。だからリタさんは純粋に私の安全面を心配してくれているのだろう。
勿論、迷惑をかける可能性はあるので無理は言えない。でも前世の時には無かったこの町、そして周りの環境など、色々と確認をしておきたい。
昨日の事もあるし、一人で見て回ると言ったらきっと止められるだろう。それならば彼らについて行く方がいい。
「まあいいだろう。今日はあくまでも調査だし、情報は多く得られる方が有り難い。もとより危険には立ち入らないつもりだ。俺たちもまだBランクのパーティーだからな、無理はできない。もし危険があると判断すれば、すぐに退くし、逃げる選択肢も大いにありうる」
それを聞いて、何故かビリーさんが嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振った。ザックさんの言葉を聞いて安心したのかな。
確かに、昨日のミノタウロスのような高ランクの魔獣に出くわす可能性もあるから、無理はしない方がいいよね。と私が思ったところで、昨日無謀にもミノタウロスに立ち向かって行ったという体の小娘の口からは何も言えない。
「よろしくお願いします!」
そう言ってザックさんに頭を下げた。
* * *
出立の前にパーティーメンバーの登録を行う。登録といっても、冒険者カードをパーティーリーダーに確認してもらうくらいだ。
本当はカードを出さなくても、双方の意思の確認だけでも完了するのだが、やはり形式的なものがあった方がやりやすいという事で、この方法が通例になっている。
カードに主要なスキルを表示させてザックさんに渡した。こっそり『偽装』の魔法石を発動させているので、一応Dランクらしく見えるはずだ。
パーティー加入が完了した途端、私とザックさんの全身に光が薄く纏わりついて、すぐに消えた。周りに居た皆が目を見張って見ている。僅かにスキルが上がったようだ。この感覚は覚えがある。
「ザックさん、『獣使い』持ってるんですね」
そう確認すると、ザックさんはちょっと気まずそうに視線を逸らせた。
「あー…… 昔付き合ってた女がな、獣人だったんだよ」
済んだ過去の事、さらにザックさんの雰囲気からすると、余計な話を聞くのは良い事ではないだろう。
「そうだったんですね」とだけ言い、そしらぬ顔で荷物を背負い出立の雰囲気を作った。
さっきリタさんがザックさんの言葉にちらりと反応したのが見えたし、ここはさらりと流した方がいい。
まずは昨日のミノタウロス戦の現場まで、歩いて向かう。パーティーの荷物持ちを申し出たが、各々が荷物を持つ事になっているらしく、一応下っ端なのに雑用仕事は全くなかった。
それどころか何故かビリーさんはひどく驚いて、不思議そうな顔をした。もしかしてまだ体調が戻ってなくて無理をしてるとか思われたのかな? もう大丈夫なのに。
ビリーさんとアンナさんの姉弟は、かなり私の事を気遣ってくれているようだった。道中も色々と話しかけてくれたり、そんなビリーさんの言動にアンナさんがツッコミを入れてたり。
そんな様子がとても楽しくて嬉しい気持ちになったし、明るい雰囲気にザックさんとリタさんもさっきの変な緊張がなくなったようで、内心ほっとした。
昨日の場所に着くまでには1時間もかからなかった。こんなに町の近くだったのか……
あの時「町が危険にさらされる」と言ったのは、咄嗟についた嘘だったけど、あながち間違いではなかったらしい。
昨日のうちに辺りを浄化してくれたのだろう。血の跡などは一切見あたらない。でも路上に残る踏みしめた足跡と、踏み荒らされた道端の草たちが、ここで何かがあった事を訴えかけていた。
そのまま町とは反対の方向に歩を進める。そちらの方向からこちらに向かうように続く足跡を見ると、ミノタウロスの蹄の跡だけではない。明らかに複数の人間の靴跡も入り混じっている。
「追われたんだな」
ザックさんが低く呟くのを聞いて、ビリーさんの顔色が少し曇った。大方その様子を想像してしまったのだろう。
四半時間ほど道を進むと、足跡が道沿いから森の方へ逸れた。
森に入ってからは下草が多く、足跡を辿る事は出来なくなってしまった。
先を警戒しながらさらに奥へと進む。所々に手折られた木の枝の跡を確認できる。おそらくあのミノタウロスが通ったのだろう。
しばらく進み、森がさらに鬱蒼とした様相を見せ始めた頃、やや湿り気を帯びた風が僅かに不快な臭いを運んできた。
おそらくまだ私にしか嗅ぎ取れていない。この臭いは……
「ザックさん、多分こっちです」
指を差した先は森のさらに奥。いつの間にか辺りに漂い始めた霧が、さらに行く先を覆い隠そうとしていた。
==============================
(メモ)
『獣使い』スキル(#7)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる