ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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故郷へ向かう旅

14 疑惑(2)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。
・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー
・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士
・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い
・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟

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 冒険者ギルドを出ると一度宿に向かった。皆さんは準備したらすぐに出掛けるそうだ。
「私も同行させていただけませんか?」
 駆け寄って、見上げながらザックさんに声を掛けた。
「狼族ですから鼻も利きます。少しはお役に立てるかと思うのですが」

 ザックさんは私の様子を見回すと、振り返ってアンナさんに目配せをした。
「さっき診た感じだと体に異常はなさそうよ。スタミナさえ回復してれば大丈夫じゃないかしら?」
 大丈夫!とアピールするように、ぴょんぴょんと跳ねて見せると、皆から小さな笑みがこぼれた。

「でもリリアンちゃん、まだDランクよね」
 今回はクエストという形式ではないから、冒険者ランクの制限もないはずだ。だからリタさんは純粋に私の安全面を心配してくれているのだろう。
 勿論、迷惑をかける可能性はあるので無理は言えない。でも前世の時には無かったこの町、そして周りの環境など、色々と確認をしておきたい。
 昨日の事もあるし、一人で見て回ると言ったらきっと止められるだろう。それならば彼らについて行く方がいい。

「まあいいだろう。今日はあくまでも調査だし、情報は多く得られる方が有り難い。もとより危険には立ち入らないつもりだ。俺たちもまだBランクのパーティーだからな、無理はできない。もし危険があると判断すれば、すぐに退くし、逃げる選択肢も大いにありうる」
 それを聞いて、何故かビリーさんが嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振った。ザックさんの言葉を聞いて安心したのかな。

 確かに、昨日のミノタウロスのような高ランクの魔獣に出くわす可能性もあるから、無理はしない方がいいよね。と私が思ったところで、昨日無謀にもミノタウロスに立ち向かって行ったというていの小娘の口からは何も言えない。
「よろしくお願いします!」
 そう言ってザックさんに頭を下げた。

 * * *

 出立の前にパーティーメンバーの登録を行う。登録といっても、冒険者カードをパーティーリーダーに確認してもらうくらいだ。
 本当はカードを出さなくても、双方の意思の確認だけでも完了するのだが、やはり形式的なものがあった方がやりやすいという事で、この方法が通例になっている。
 カードに主要なスキルを表示させてザックさんに渡した。こっそり『偽装』の魔法石を発動させているので、一応Dランク見えるはずだ。

 パーティー加入が完了した途端、私とザックさんの全身に光が薄くまとわりついて、すぐに消えた。周りに居た皆が目を見張って見ている。わずかにスキルが上がったようだ。この感覚は覚えがある。
「ザックさん、『獣使い』持ってるんですね」
 そう確認すると、ザックさんはちょっと気まずそうに視線をらせた。
「あー…… 昔付き合ってた女がな、獣人だったんだよ」

 済んだ過去の事、さらにザックさんの雰囲気からすると、余計な話を聞くのは良い事ではないだろう。
「そうだったんですね」とだけ言い、そしらぬ顔で荷物を背負い出立の雰囲気を作った。
 さっきリタさんがザックさんの言葉にちらりと反応したのが見えたし、ここはさらりと流した方がいい。


 まずは昨日のミノタウロス戦の現場まで、歩いて向かう。パーティーの荷物持ちを申し出たが、各々おのおのが荷物を持つ事になっているらしく、一応下っ端なのに雑用仕事は全くなかった。
 それどころか何故かビリーさんはひどく驚いて、不思議そうな顔をした。もしかしてまだ体調が戻ってなくて無理をしてるとか思われたのかな? もう大丈夫なのに。

 ビリーさんとアンナさんの姉弟は、かなり私の事を気遣ってくれているようだった。道中も色々と話しかけてくれたり、そんなビリーさんの言動にアンナさんがツッコミを入れてたり。
 そんな様子がとても楽しくて嬉しい気持ちになったし、明るい雰囲気にザックさんとリタさんもさっきの変な緊張がなくなったようで、内心ほっとした。

 昨日の場所に着くまでには1時間もかからなかった。こんなに町の近くだったのか……
 あの時「町が危険にさらされる」と言ったのは、咄嗟とっさについた嘘だったけど、あながち間違いではなかったらしい。
 昨日のうちに辺りを浄化してくれたのだろう。血の跡などは一切見あたらない。でも路上に残る踏みしめた足跡と、踏み荒らされた道端の草たちが、ここで何かがあった事を訴えかけていた。

 そのまま町とは反対の方向に歩を進める。そちらの方向からこちらに向かうように続く足跡を見ると、ミノタウロスの蹄の跡だけではない。明らかに複数の人間の靴跡も入り混じっている。
「追われたんだな」
 ザックさんが低く呟くのを聞いて、ビリーさんの顔色が少し曇った。大方おおかたその様子を想像してしまったのだろう。
 四半しはん時間ほど道を進むと、足跡が道沿いから森の方へれた。

 森に入ってからは下草が多く、足跡を辿たどる事は出来なくなってしまった。
 先を警戒しながらさらに奥へと進む。所々に手折たおられた木の枝の跡を確認できる。おそらくあのミノタウロスが通ったのだろう。

 しばらく進み、森がさらに鬱蒼うっそうとした様相ようそうを見せ始めた頃、やや湿り気を帯びた風が僅かに不快な臭いを運んできた。
 おそらくまだ私にしか嗅ぎ取れていない。この臭いは……
「ザックさん、多分こっちです」
 指を差した先は森のさらに奥。いつの間にか辺りに漂い始めた霧が、さらに行く先を覆い隠そうとしていた。


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(メモ)
 『獣使い』スキル(#7)
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