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故郷へ向かう旅
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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。
・デビット…ワーレンの町冒険者ギルドマスター
・ジェス…冒険者。ミノタウロスに襲われたCランクパーティーの生き残り
・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー
・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士
・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い
・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟
==============================
ワーレンは比較的歴史の浅い町で、まだ町としては10年程度しか経っていないらしい。確かに前世にこの辺りを通った時に、町があった記憶はなかった。だから昨日は「近くの町」と聞いてちょっと驚いたのだけど、自然に話を合わせる事ができたと思う。
なんでも近くに新しいダンジョンが見つかり、そこに潜る冒険者たちの拠点が建てられたのが始まりだそうだ。
しかし、そのダンジョンは期待したほどの規模ではなく、これ以上に町が大きくなる程の人は集まらなかった。それでもそのダンジョンに潜る為や、街道を行く旅の冒険者の立ち寄る場として、小さいながらも今でも町として機能しているらしい。
小さい町らしく宿は2軒しかない。下級の冒険者御用達の所謂安宿か、風呂付のお値段もしっかりした宿か。
私たちが居たのは後者の宿だ。ザックさんたちがこちらに宿を取っていたので、必然的に私もそこで休ませてもらっていたそうだ。
どちらの宿も、冒険者ギルドからはそう遠くない場所にあり、食事の前にとギルドに立ち寄ったところ、ギルドマスターのデビットさんから皆でと昼食に招かれた。
昨日の話もしたいので普通の店では不都合があるそうだ。冒険者ギルドの一室で昼食を頂く流れになった。
近所の人気店から届けさせたというランチプレートは、メインがオークのローストだった。しっかりとハーブを効かせた豚肉はとても美味しく、お腹が空いていたのでぺろりと食べてしまった。
ドワーフの国を出てからずっと走っていて、食べるのも適当に干し肉を齧っていた程度で済ませていた。だからこういうちゃんとしたご飯が、余計に嬉しい。
「昨日のミノタウロスの一件だが、いくつか不自然に思える点があってな」
食後の茶を飲みながら、ギルドマスターのデビッドさんがそう切り出した。
「あのジェスと名乗った冒険者。まずは彼について不透明な点が多すぎるのだよ」
そういえば、昨日の一行から一人足りない事は気付いていた。あの時は彼は冒険者仲間の一人だろうと思っていたのだけど、そうではなかったみたいだ。
ここでようやく、昨日皆があの場に駆け付けた経緯を聞く事が出来た。
「彼はミノタウロスが戦斧を振るっていたと言ったのだが、あの場にはそんなものはなかった。あと彼本人についても疑問がある。彼のパーティーが受けていたと言うクエストについて、どうもはっきりしないのだ。少なくともこの町でクエストを受けた記録はない。なら他の町なのだろうが、それもはぐらかそうとしている様に思える。少なくとも彼らは昨日からこの町に滞在していた。これだけは事実なのだがな」
財布の負担が少ない方の宿屋に宿泊した記録はあった。しかし冒険者ギルドに立ち寄った記録はなく、またギルド員たちも見かけた記憶がないのだと。
さらに王都出身の冒険者だという事で、王都にも照会をしたけれど、何か怪しいらしい。現在、彼はこの建物内の一室で、怪我の治療と称した軟禁状態になっているそうだ。
ついでに私の照会も昨日のうちに済ませてあると伝えられた。だからこの話に同席させてもらえているのだろう。
「これがダンジョンに潜る為にこの町に訪れたと言うのなら、クエストを受けていなくても不思議はないのだが、やはりダンジョンの受付にも彼らの記録がない」
だとすると、何の為にこの町を訪れたのか、どうしてあの場所に居たのか。
「さらに言えば、この辺りでミノタウロスが目撃されたという情報が今まで当たらない。居てもおかしくはない魔獣ではあるのだがな。それにしても色々と」
気になる点が多すぎるのだよ、と言って、デビットさんはザックさんの方を見据えた。
「少し辺りを見回って確認してみますか?」
「お願いしたい。勿論依頼料は出す」
まだ昼なので時間は十分にある。この食事の後にすぐに出掛けるそうだ。
「そうだ。あのミノタウロスだが、私の方で預からせていただいている。止めを刺しただけと言ったが、それでも倒したのは君という事になる。なので、あのミノタウロスは君のものだ」
今度は私の方に向き直したデビットさんは、そこまで言って少し顔を曇らせた。
「しかし先に話したように、どうもこの件についてはもう少し調査をした方が良いと思われる。申し訳ないが、あのミノタウロスを少し預からせてもらいたい」
了承の旨を伝えると、デビットさんはさらに頭を下げた。
「あと、重ね重ねの要望になるが、もしあのミノタウロスの肉や素材など、買い取り先に中てが無いようであればここのギルドで買い取らせていただけないだろうか」
上級モンスターの肉や素材は、冒険者ギルドの重要な収入源になる。ミノタウロスは肉も皮も、特に貴族向けに人気の高い素材だ。
自分でもいくらか肉は欲しいが、肉の半分を残して他は買い取ってもらって構わない。先の調査が終わってからの解体になるそうなので、帰郷の帰りにまたこの町に立ち寄る事を約束した。
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。
・デビット…ワーレンの町冒険者ギルドマスター
・ジェス…冒険者。ミノタウロスに襲われたCランクパーティーの生き残り
・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー
・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士
・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い
・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟
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ワーレンは比較的歴史の浅い町で、まだ町としては10年程度しか経っていないらしい。確かに前世にこの辺りを通った時に、町があった記憶はなかった。だから昨日は「近くの町」と聞いてちょっと驚いたのだけど、自然に話を合わせる事ができたと思う。
なんでも近くに新しいダンジョンが見つかり、そこに潜る冒険者たちの拠点が建てられたのが始まりだそうだ。
しかし、そのダンジョンは期待したほどの規模ではなく、これ以上に町が大きくなる程の人は集まらなかった。それでもそのダンジョンに潜る為や、街道を行く旅の冒険者の立ち寄る場として、小さいながらも今でも町として機能しているらしい。
小さい町らしく宿は2軒しかない。下級の冒険者御用達の所謂安宿か、風呂付のお値段もしっかりした宿か。
私たちが居たのは後者の宿だ。ザックさんたちがこちらに宿を取っていたので、必然的に私もそこで休ませてもらっていたそうだ。
どちらの宿も、冒険者ギルドからはそう遠くない場所にあり、食事の前にとギルドに立ち寄ったところ、ギルドマスターのデビットさんから皆でと昼食に招かれた。
昨日の話もしたいので普通の店では不都合があるそうだ。冒険者ギルドの一室で昼食を頂く流れになった。
近所の人気店から届けさせたというランチプレートは、メインがオークのローストだった。しっかりとハーブを効かせた豚肉はとても美味しく、お腹が空いていたのでぺろりと食べてしまった。
ドワーフの国を出てからずっと走っていて、食べるのも適当に干し肉を齧っていた程度で済ませていた。だからこういうちゃんとしたご飯が、余計に嬉しい。
「昨日のミノタウロスの一件だが、いくつか不自然に思える点があってな」
食後の茶を飲みながら、ギルドマスターのデビッドさんがそう切り出した。
「あのジェスと名乗った冒険者。まずは彼について不透明な点が多すぎるのだよ」
そういえば、昨日の一行から一人足りない事は気付いていた。あの時は彼は冒険者仲間の一人だろうと思っていたのだけど、そうではなかったみたいだ。
ここでようやく、昨日皆があの場に駆け付けた経緯を聞く事が出来た。
「彼はミノタウロスが戦斧を振るっていたと言ったのだが、あの場にはそんなものはなかった。あと彼本人についても疑問がある。彼のパーティーが受けていたと言うクエストについて、どうもはっきりしないのだ。少なくともこの町でクエストを受けた記録はない。なら他の町なのだろうが、それもはぐらかそうとしている様に思える。少なくとも彼らは昨日からこの町に滞在していた。これだけは事実なのだがな」
財布の負担が少ない方の宿屋に宿泊した記録はあった。しかし冒険者ギルドに立ち寄った記録はなく、またギルド員たちも見かけた記憶がないのだと。
さらに王都出身の冒険者だという事で、王都にも照会をしたけれど、何か怪しいらしい。現在、彼はこの建物内の一室で、怪我の治療と称した軟禁状態になっているそうだ。
ついでに私の照会も昨日のうちに済ませてあると伝えられた。だからこの話に同席させてもらえているのだろう。
「これがダンジョンに潜る為にこの町に訪れたと言うのなら、クエストを受けていなくても不思議はないのだが、やはりダンジョンの受付にも彼らの記録がない」
だとすると、何の為にこの町を訪れたのか、どうしてあの場所に居たのか。
「さらに言えば、この辺りでミノタウロスが目撃されたという情報が今まで当たらない。居てもおかしくはない魔獣ではあるのだがな。それにしても色々と」
気になる点が多すぎるのだよ、と言って、デビットさんはザックさんの方を見据えた。
「少し辺りを見回って確認してみますか?」
「お願いしたい。勿論依頼料は出す」
まだ昼なので時間は十分にある。この食事の後にすぐに出掛けるそうだ。
「そうだ。あのミノタウロスだが、私の方で預からせていただいている。止めを刺しただけと言ったが、それでも倒したのは君という事になる。なので、あのミノタウロスは君のものだ」
今度は私の方に向き直したデビットさんは、そこまで言って少し顔を曇らせた。
「しかし先に話したように、どうもこの件についてはもう少し調査をした方が良いと思われる。申し訳ないが、あのミノタウロスを少し預からせてもらいたい」
了承の旨を伝えると、デビットさんはさらに頭を下げた。
「あと、重ね重ねの要望になるが、もしあのミノタウロスの肉や素材など、買い取り先に中てが無いようであればここのギルドで買い取らせていただけないだろうか」
上級モンスターの肉や素材は、冒険者ギルドの重要な収入源になる。ミノタウロスは肉も皮も、特に貴族向けに人気の高い素材だ。
自分でもいくらか肉は欲しいが、肉の半分を残して他は買い取ってもらって構わない。先の調査が終わってからの解体になるそうなので、帰郷の帰りにまたこの町に立ち寄る事を約束した。
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