ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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獣人の国

22 魔獣の住処/カイル(2)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。
・カイル…リリアンの兄で、灰狼族の若き族長。銀の髪と尾を持つ。
・イリス…リリアンの姉で、三つ子の真ん中。銀の髪と尾を持つ。
・バスク…5色に光る羽根をもつ鳳凰。壮年の逞しい男性の姿になっている。圧がすごいらしい。
・シュティス…バスクの妻。細身の赤毛の女性の姿になっている。

====================

 娘さんの匂いは道をれて、森の奥の方へ続いている。リリアンはバスクさんと話をしているので、僕だけが獣化して匂いを辿る事にした。

「娘さん、誰かと一緒みたいですね。詳しい話は聞いていないのですが、何かあったんですか??」
「ああ。昨日あの子が動物の仔を連れて来てな。また飼いたいとか言うんだろうと思って、親に返して来いと言ったのだ。そのまま出ていったから返しに行ったのかと思ったのだが、それきり帰ってこない」
 え? 魔獣がペットを飼うって話なのか?
「それ、ちゃんと話を聞いてあげた方が良いんじゃないですか? 早く見つけてあげないとですね」
 リリアンがそう言うと、バスクさんはああと気まずそうに答えた。

 もうしばらく匂いを辿ると、周りはさらに大きな古い木々がそびえている光景に変わって来た。
 木々の間から差す日が広く当たる場所近くに立派な老樹があり、そのうろで翼を持つ赤毛の少女と金の耳を尾を持つ獣人の子供が眠っていた。あれは……
「金獅子族……」
 僕の後ろでそう呟くリリアンの声に振り向くと、彼女はなぜか寂しそうな顔をした。

 * * *

 鳳凰の娘さんのティルダちゃんと獅子人の子供を連れて家に戻ると、シュティスさんとイリスはお昼御飯を作って待っていてくれた。
 イリスはシュティスさんとかなり仲良くしてもらったそうで、今着けている可愛いエプロンもお借りしたらしい。

 目を覚ました二人は昨日から何も食べていなかったようだ。シチューとパンをガツガツと音のしそうな勢いで食べ始めた。
 ティルダちゃんは見た感じは僕らより五つ程年下くらいか。獅子人の子はまだ5歳にも満たないくらいに幼い。
 僕らも昼食を頂いた。柔らかく煮込まれたシチューも、木の実が練り込んであるまだ温かいパンもとても美味しかった。

 二人ともひとしきり腹が膨れると少しほっとした表情に変わっていた。
 シュティスさんが入れてくれたお茶を飲み、一息ついたところで話を聞く事にした。バスクさんは、またティルダちゃんに圧をかけてしまいそうなので、一歩後ろに下がって話を聞いてもらう。
 こういうのはイリスが得意だ。隣に座って優しく話しかけると、ティルダちゃんはぽつりぽつりと話し始めた。


 普段からティルダちゃんは小鳥の姿になって山の周りで遊んでいるそうだ。
 昨日もそんな感じでうろうろとしていると、偉そうな服を着た獣人たちが子供を抱えて山のふもとに入るのを見かけた。様子をうかがいながら後をついて行くと、その子供を放り出して剣で切りつけようとしていて、ティルダちゃんは咄嗟とっさに大きな鳥の姿になって子供をさらって逃げてきたんだそうだ。
 その子供が獅子人の仔、コニーくんだったという話だ。

「でも家に帰ったら、おとーさんは何も聞かないで親に返せって言うんだもん! でも返したらまたこの子どうなるかわからないじゃん!」
 それでコニー君を連れて家出した。
 うん、やっぱりそれは……バスクさんがいけないね……

 皆の視線がバスクさんに集中すると、バスクさんは腕を組んだまま気まずそうに目線を逸らせた。
「う、うむ…… すまん……」
 喧嘩けんか相手のお父さんが探し回ってても、そりゃあ出て来るわけないよね。


 次にコニー君の事情を聞く事になった。
 やっぱり彼はあの金獅子城の子らしい。そして……
「僕が……『獣使い』を持って産まれなかったから…… 長の子供にふさわしくないって……」
 コニー君がそう言うと、ティルダちゃんは彼の手をぎゅっと握った。
「……金獅子の長の一族は、特にプライドを重んじると聞いた事がある。それがこういう事か……」
 大きなため息が出た。他の種族の事情だと頭ではわかってはいる。でも気分の良い話と思えないのは、リリアンの影響があるのだろう……

「たかがそんな事で主に頂いた命を無駄にしようとするとは……」
 バスクさんはあきれ顔をしてそう吐き出すように言った。
 そして、コニー君に向けて手をかざすと、その手から放たれた光は一瞬コニー君を包み込み、砕け散るように消えていった。

「これで良いだろう。もう君は家に帰れるはずだ」
「いったい何をしたんですか?」
「『獣使い』を与えた。我は主に仕える身だからな。このくらいの事は出来る」

 ……内心、ひどく驚いた。
 『獣使い』の力は、神殿で『黒の森の王』から頂く事も出来るとは知っていたけど、まさか鳳凰の長にもそれを与える力があるとは……

 リリアンの方をみると、彼女は別段驚いた様子はない。むしろさっきの話にまだ怒っているようだった。
「でも、一度自分を殺そうとした家族の元に帰れるの?」
 そうリリアンにしては珍しく冷たい目をして、強く言い放った。


 話し合いはなかなかまとまらなかった。
 夫妻はそれでも一族の元に帰すべきだと言う。
 ティルダちゃんは一緒に居たいと主張した。
 そしてリリアンは、金獅子族の元に帰すのを強固に反対した。

 当のコニー君は、「お母さんの所に帰りたい……」と、力なく言ってうな垂れた。
 まだ独りで生きる道を決めるには幼すぎるのだろう。

 城に戻るのは茨の道だと、リリアンは言う。確かに『獣使い』を得た事で、またすぐに殺される事はないだろう。
 でも、長の一族としての居場所もないかもしれない。

 でも本人が望むのなら、そうしてあげるのが一番だろうと思う。その結果が喜ばしい物ではなかったとしても。

「リリアン…… 僕に提案があるんだけど……」
 そう話しかけると、リリアンの耳がぴくりと動いた。
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