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第六話 自衛隊

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 あれから1ヶ月が経った。

 あと少しすれば、夏休みに入っていただろう。

 そんな日に私達はダンジョンの中にいる。

 私は避難者達と会話を交わし、色々な要望に答えている。

 ポイントと有咲と相談しながら、それに応じた。

 避難者達と話していると音が聞こえたのだ。

 それはここにいては聞くことが出来ない音。

 プロペラの音。
 
 しかも、上から。

 私、いや、この場にいる者達の視線が上に集まる。

 視線が集まった先には青空では金属が覆い被さっていた。

 おいおい、嘘だろ。

 驚いていると縄が降りてきた。

 ヘリからのエアボーン。

 日本の中には空挺部隊があるのは1つだけだ。

 そんなことを思っていると、縄から迷彩服に身を包んだ者達が降下してきた。

 1番最初に降下した者が小銃で周りを警戒している間に他の隊員が降下してきたのだ。

 全員が降下すると小銃を下げ、私達に近付いてきたのだ。

 「私達は自衛隊です。貴方方を助けにきました」

 その言葉に周りを沸き立つ。

 喜び合っている。

 後輩のことを呼ばないとな。

 そう思い、私は古民家の方に向かったのだ。

 「待って下さい。何処に?」

 「もう1人いるので、呼んできます」

 「そうですか。なら、隊員をつけます」

 「感謝します」

 その後、私は1人の自衛隊隊員と共に古民家に向かったのだ。

 有咲が出てきたが、自衛隊隊員の姿を見て、驚きの表情を浮かべていた。

 そんな有咲に私は助けが来たと説明したのだが、少し残念そうな表情を浮かべていたのだ。

 何故、そんな表情を浮かべたのか分からなかった。

 説明している間についてきてくれた自衛隊隊員は無線でやり取りをしていたのだが、突然驚きの表情を浮かべていたのだ。

 「何かありましたか?」

 「少し問題が発生しました。詳しく合流してから」

 「分かりました」

 そう答え、私は有咲の方を向いた。

 「合流しよう」

 そう言ったのだが、有咲はそっぽを向いてしまった。

 そして、私の方に右手を伸ばしてきたのだ。

 「先輩。これからあの人達と会うから手を繋いで欲しいっす。可愛い後輩のお願いっすよ」

 た、確かに可愛いが。

 不安なのは理解出来る。

 し、仕方ない。

 手を繋ぐか。

 私は恐る恐る有咲の手を繋いだのだ。

 有咲の手は華奢で少し力を入れれば折れてしまいそうだ。

 そんなことを思っていると有咲は嬉しそうな表情を浮かべていた。

 自衛隊隊員からは生暖かい視線を向けられている。

 や、やめてくれ。

 私は有咲とそういう関係ではないからな。

 「それではこちらに」

 そう言われたので、私は有咲と手を繋ぎながら、避難者達のところに向かった。

 門を通ってから分かったが、様子がおかしい。

 先程まで安堵していたのに今は互いに慰めている。

 様々な可能性を考えていると私達は合流したのだ。

 合流した私達に伝えられたのはある情報だった。

 どうやら、上の穴から脱出させていたのだが、穴を通ることが出来なかったみたいだ。

 元々ダンジョンにいた私達は。

 ちなみに自衛隊隊員は出ることは出来た。

 その話を聞いた私は思わず上を向いてしまった。

 どうやら、脱出はまだ無理のようだ。

 
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