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第七話 逃がさない罪
しおりを挟むあれから、十年が経った。
私は、海を渡り、隣に大陸に渡った。
エレーの命日と誕生日には、墓参りをしている。
最初は、旅のことばかりだったが、最近は、違う。
最近は、あることばかり話している。
扉が開く音が聞こえた。
「お父様。今日のお祈り終わりました」
家に入ってきたのは、金色の髪を腰まで伸ばし、紫色の瞳をしている美少女だ。
そして、首には、この大陸で信仰されている女神のロザオリをつけていた。
「お帰り、エスリ」
彼女は、私の養女だ。
本当は、1人で生きていくつもりだったが、親に捨てられたエスリを見捨てることは出来なかった。
だから、育てた。
最初は、戸惑ったが、今では、娘同然に育てている。
偶に思ってしまうんだ。
こんな幸せな日々が続いていいのか?
私は、全てを奪った者達に復讐をして、愛してくれたエレーを殺したんだ。
エスリが、成人して、結婚したら、旅に出よう。
エスリに、見送られて死ぬのは、駄目だ。
復讐者だった私は、1人で死ぬのがお似合いだ。
「うん?お父様、何かありましたか?」
エスリは、不思議そうに首を傾げた。
「何でもないよ」
その後は、当たり前になった日常を過ごした。
ある日、エスリと一緒に教会に行くと、たくさんの人が集まっていた。
何故だと思っていると、位が高い神官が出てきた。
その神官が、神に祈ると、光が降り注いだ。
そして、その光は、もう1箇所にも降り注いだ。
私の隣に。
そう、エスリに光が降り注いでいた。
私は、エスリと一緒に別室に案内された。
そこで話されたのは、驚きのことだった。
エスリが、聖女に選ばれたと言われたのだ。
聖女。
神が、信仰心を高い女性をこの大陸の住民から選ぶ者のこと。
エスリは、突然のことに驚きを露わにしていた。
エスリが、聖女か。
私が居なくなっても大丈夫になるだろう。
聖女なら、国をあげて守ってくれるだろう。
今すぐ、旅に出てもいいが、エスリを拾ったのだ。
幸せになるまでは、エスリの成長を見なければいけない。
その後、エスリは、聖女として王都に向かった。
「お父様。どうか、体調に気おつけて下さい」
「エスリも体を大事にな」
私は、エスリにハグをしてから、送り出した。
あれから、半年が経った。
1ヶ月に1度手紙のやり取りをしていたが、何の連絡も無くエスリが帰ってきたことに、結構驚いた。
エスリの性格上、事前に連絡してくると思っていたからだ。
だが、久し振りに帰ってきたエスリは、何故か元気が無かったのだ。
疲れているのかと思い、心が休まるハーブティーを淹れた。
淹れたハーブティーをエスリと私の前に置いて、エスリの前に座った。
エスリは、その間、ずっと下を向いていた。
私が、椅子に座ってから少し経つと、顔を上げた。
エスリの顔には、困惑の表情を浮かべていた。
「お、お父様は、隣の大陸で、復讐したんですか?それは、本当のことですか?」
私は、思わず固まってしまった。
どうやら、私が犯した罪は、逃がさないようだ。
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