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第四話 毒杯
しおりを挟む私は馬車に揺られ、王都に到着した。
王都に到着するとそのまま王城に向かった。
王城に到着した私は拘束も無しに貴族牢に通されたのだ。
本当に高待遇だな。
さて、暇だな。
そんなことを思っていると机の上にペンと紙を見つけた。
そう言えば、後少しだったな。
なら、完成させよう。
私は後少しの時間を使い、続きを書き始めたのだ。
少しでも何かを残そうと。
私はしたことがない集中で書き始めたのだ。
何とか完成出来たな。
右手で前髪をかき上げながら、背中を椅子の背もたれに寄りかかると同時に扉がノックされたのだ。
「失礼致します。国王陛下がお呼びで御座います」
「分かった。直ぐに行く」
そう言い、私は椅子から立ち上がり、扉の前に立ったのだ。
すると、扉が開いた。
開いた扉には王立騎士団の騎士団長がいたのだ。
「それでは、ご案内します」
私は黙って頷き、案内に従った。
案内された先は謁見の間だった。
到着した謁見の間には既に国王陛下が待っていたのだ。
「お久しぶりです、国王陛下」
「久しぶりだな、愛鷹殿」
「まずは謝罪をさせて欲しい。この国を救ってくれたというのに。こんなことになってしまい」
「お気になさないで下さい。同郷の罪は私の罪でもありますから。私に止める力があれば、こんなことにならなかった筈です」
「それなら儂の方に罪がある」
そう言い、国王陛下は上を向いた後、私の方をまた向いてきたのだ。
「まずは今の状況を伝えよう。残りの異世界人達は保護すると言い、王城に集めた後、宝珠を没収した。そして、国を荒らした罪で絞首刑に処された。そして、それは市民達にその死体を公開されている」
「そうですか」
それを聞いても私は特に何も思わなかった。
もう元の世界の時の彼らが遠い昔の過去になってしまったからだろう。
「それで、愛鷹殿は毒杯を飲んでもらいたい」
「絞首刑ではなく、毒杯ですか?」
「ああ、愛鷹殿にそのようなことは出来ない。だが、同郷という理由で死んでもらわなければいけない。どんな功績があろうと」
「気に悩まないで下さい。その考えは正しいことですから。あ、1つだけ聞いてもいいですか?」
「構わないぞ」
「それでは、お聞きさせて頂きます。毒杯なんですけど、それはお酒ですか?」
「い、いや、違うぞ」
「それなら良かったです。私はまだ未成年なので、犯罪になってしまいますから」
私の発言に謁見の間にいる者達は唖然とした表情を浮かべていた。
「愛鷹殿。貴方というお方は。本当に儂は罪深いな」
そう言い、国王陛下は両手で顔を覆ったのだ。
その姿から感じたのは後悔だった。
「国王陛下。最後にお願いが御座います」
「好きに言ってくれ」
「私が過ごした貴族牢に農業の知識が書いている紙があります。それをクラーラさんの屋敷にある本と合わせてください。それで完成となるので、それをこの世界にいかして下さい」
私の言葉に謁見の間にいる者達は無言の敬意で答えたのだ。
その後、私は国王陛下に敬意を受けながら、処刑場に向かうのだった。
処刑場に到着すると私の前に黄金の杯に入った毒杯が置かれたのだ。
私はそれを迷わず、両手に取った。
そして、そのままそれを飲み干した。
すると、直ぐに私の意識は途切れ始めた。
私は最後まで迷惑を掛けないために何とか黄金の杯を元に戻した。
だが、動けたのはそれまでだった。
それからの私は正座のまま、動くことが出来なかった。
頭だけは動いた。
ああ、クラーラさん。
私は貴方のことが好きだった。
そのことを貴方に伝えたかった。
だが、もう無理だ。
だから、私は願う。
貴方の幸せを。
どうか、幸せになってくれ。
この世界の異物であった私の願いをどうか叶えてくれ。
神様。
そこで、私の意識は完全に途切れた。
それから私の意識が戻ることは一生無かったのだ。
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