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第二十四話 呪いの実体化
しおりを挟む「ミツケタ。ツギノヤドヌシ」
宿主?
つまり、リーヴの呪いか。
リーヴの方を一瞬だけ見てみると体に刻まれていた黒い何かは消えている。
間違いない。
私の目の前にいる黒い何かがリーヴの体を呪っていた呪いだ。
何が原因かわからないが、呪いが実体化したのか。
「聞くが、貴方はリーヴの体を呪っていた呪いか?」
「アア、ソウダ。コノオンナノノロイダ」
「そうか。それでなんで実体化したんだ?」
「サッキモイッタガ、オマエヲヤドヌシニスルタメニデテキタ」
「そうか。でもな、ただで宿主になるわけ無いだろ」
そう言い、私は正拳突きの構えを取る。
正拳突きの構えを取った私を見た黒い何かは見下すような視線を向け、鼻で笑ってくる。
「ムダナアガキヲ。ニンゲンハイツモソウダナ。マァ、イイカ。スグニワレノヤドヌシニナル」
黒い何かは形を変える。
大きなタコの姿に変わったのだ。
大きさはこの倉庫の殆どを埋め尽くす程だったのだ。
埋め尽くされていなかったのは私の周りとプレハブ小屋だけだったな。
まるで、クラーケンだ。
近世に伝わっているノルウェーの海の化け物。
まぁ、正体とかはどうでもいいか。
私のやるべきことは変わらないからな。
軽く正拳突きを放ってみる。
すると、クラーケンらしき存在の真ん中が掻き消えたが、直ぐに再生してしまう。
廃工場が壊れないように手加減したが、効かない。
それでも効果は絶大だ。
クラーケンらしき存在は驚きを露わにしている。
「オカシイ、コンナコト。ワレハウミヲシハイシタソンザイダ。コンナニンゲンニキズヲオワサレルナンテ」
海を支配か。
やっぱり、クラーケンで正解か。
「クラーケン。あまり人間を舐めるなよ」
「ニンゲンヲナメルナダト?フザケルナ。カツテウミヲシハイシタワレニタイシテフケイダ」
「不敬とは面白いな。海の支配していたクラーケンが今では成人してない1人の少女に呪いとして存在しているのにか?」
私の発言を聞いたクラーケンは怒りを露わにしている。
言葉すらも忘れ、自身の8本の足が私に迫ってくる。
うねりながら。
そんな状況なのに私は目を閉じる。
微調整しろ。
威力だけを鍛え続けた正拳突きを。
怒り狂うクラーケンだけに。
深呼吸し、極限の集中を。
私は無意識のうちに正拳突きを放ったのだ。
それは音すらも影響を与えず、ただ怒り狂うクラーケンだけに影響を与える。
極限の集中で放った正拳突きは怒り狂うクラーケンの体の大部分を消し飛ばす。
そして、消し飛ばされた体が戻ることは無い。
クラーケンは信じられないような表情を浮かべている。
掴んだ。
これが調整か。
この現代日本に帰還してから修行し続けていた結果が出たな。
ずっと私は修行していたな。
積み上げた技量は倍の速度で錆びていく。
だから、修行は続けている。
私は正拳突きの構えを取る。
その構えを見たクラーケンは慌てて様子で口を開き始める。
「ワレハフメツダ。コノオンナガシナナイカギリソンザイシツヅケル。ソ、ソレニワレヲコロセバコノオンナモシヌゾ」
リーヴが死ぬだと?
「コノオンナノオクニハマダワレガイルカラダ」
奥にいるか。
なら、問題無い。
「それなら心配するな、クラーケン。私の正拳突きは進化した。対象を選べるようになった。だから、リーヴの奥から完全にクラーケンを殺してやる」
私は殺気を向ける。
クラーケンは完全に怯えている。
クラーケンは何か、いや、命乞いをする前に私は極限に集中した正拳突きを放つ。
クラーケンは何も残さずに消える。
黒い何かで構成された体も命乞いさえも。
廃工場の中には静寂が訪れ、立っているのは私だけだ。
私は正拳突きの構えをとき、地面に倒れているリーヴの方を向く。
地面に倒れているリーヴの体からは黒い呪いが消えている。
良かった、無事にクラーケンを倒したか。
これでリーヴの体からは呪いが消え去っただろう。
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