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第三話 元婚約者
しおりを挟む当主になってから3年が経ち、俺は13歳になった。
俺の領とランガン伯爵家の評価は前と同じくらいまで回復していた。
俺とクズ兄は違うと。
まぁ、社交会やパーティーに参加出来ないから、情報は集まり辛いが。
俺は趣味となった冒険者の依頼を終え、屋敷に向けて、馬を走らせていた。
向かっている途中で2つの音が聞こえてきた。
1つ目は何かから逃げる音、2つ目はそれを追いかける音だ。
俺は音が聞こえた方に馬を進めた。
その音は確実に近付いている。
俺は魔銃を直ぐに撃てるように構えた。
森の中から魔獣に追われたドレスに身を包んだ少女が出て来たのだ。
助けなければ。
そう考えた俺は魔銃を魔獣の頭に狙いをつけ、引き金を引いた。
魔力の塊は魔獣の頭を貫き、頭から血を流しながら、力無く地面に倒れた。
魔物を倒したことを確認した俺は馬から降り、追われていた少女に近付いた。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございます」
そう言いながら、ドレスに身を包んだ少女は頭を上げたのだ。
俺達は互いに驚きを隠せなかった。
「ま、まさかリリアか?」
「う、うん、私だよ。ビリー」
彼女は隣国の伯爵家の長女のリリア。
俺の元婚約者だ。
でも、なんでリリアがこんなところにいるんだ?
リリアはリリアの父親に溺愛されていたはずだ。
そんなことを考えているとリリアは涙を流しながら、俺に抱きついてきた。
俺は突然のことに驚いたが、直ぐに抱きしめ返した。
俺はリリアが安心できるまで抱きしめた。
10分ぐらい経つとリリアは可愛らしい寝息を立てて、寝てしまった。
安心したのだろう。
俺はリリアのことをお姫様抱っこをして、馬に乗せた。
リリアが落ちないように注意しながら馬を走らせた。
屋敷に俺が帰ると使用人達は驚いた表情を浮かべていた。
まぁ、使用人達はリリアのことを知っているからな。
取り敢えず、使用人達の反応を無視し、俺はリリアを客間のベッドに寝かせた。
リリアをベッドに寝かせた後は使用人達を一箇所に集めた。
「突然集まって貰って済まない。だが直ぐに伝えたいことがある。皆、リリアには好意的に接してくれ。事情ありだ」
その言葉に使用人達はザワザワし出した。
まぁ、そうだよな。
元婚約者とはいえな。
「皆の気持ちは分かる。婚約を白紙にしたのにと。だが、普通に考えれば10歳の者が伯爵家の当主になったなど、没落すると考えるだろう。そうなる前に関係をを断つのは当たり前のことだ」
そう言い、私は使用人達の方を向いたのだ。
「それに、リリアは何も悪くない。そして、ベンネット伯爵もだ。家を守るために当たり前のことをしたからだ。どうかリリアのことを頼む」
その後は使用人達を解散させた。
これでリリアを害そうとする者は居なくなっただろう。
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