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第三十六話 守るための婚約

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 「お話は分かりました。ですが、シアナを帰すことは出来ません」

 「ほぉ、それは、どうしてですか?」

 「シアナは私の3番目の婚約者ですから」と、答えた。

 その言葉に直ぐに反応したのは国王陛下だった。

 「3番目だと?1番目の婚約者が隣国のベンネット伯爵家の長女だということは知っているが一体いつだ?」

 「国王陛下が王命を出された後ですよ。ですが私には発表する場が無いものですから」

 「待て。シアナは私の腹違いの妹だ。そんなふざけた婚約は無しだ」

 「そうですか。なら、残念です。商人バルハナに頼んので、あちらの大陸との貿易は辞めてもらいましょう」

 その言葉に国王陛下も新国王も驚きの表情を浮かべていた。

 「な、何故、そこでバルハナ殿が出て来る?」

 「簡単のことですよ。商人バルハナは私が居なかったら、存在していることもありませんでしたから」

 その言葉に国王陛下と新国王は驚きを隠せなかった。

 嘘は言ってない。

 商人バルハナは俺自身だ。

 俺が居なければ商人バルハナは存在していないからな。

 「そ、それはどういうことだ?」

 「どういうことも何も。商人バルハナは私が居なかったら商人になっていませんから」

 「良いのですか?新しい国はいつも不安定です。そんな中、全ての国を敵に回す覚悟はありますか?」

 商人バルハナは難民にとっては救世主だ。

 そんな者から縁を切る原因を作ったとなると大陸中の国が敵に回る。

 それを聞いた新国王は顔を歪ませたのだ。

 「わ、分かった。あんな役立たず1人で充分ならくれてやる。だから、商人バルハナとの縁を切らないでくれ」

 「ええ、分かりました。あちらの大陸との縁を切らないことを約束をしますよ」

 俺は忙しいを理由に応接室を出て、王城を出た。

 魔法袋から転移石に似た魔法具を出した。

 それを使うのと同時に転移魔法を使用し、ベンネット伯爵家の屋敷に帰った。

 リリアとエレネとシアナはお茶をしていた。

 俺はその間にベンネット伯爵を応接室に呼び、通信魔法具でナサヤ子爵にも聞いてもらった。

 まずは親からの許可を取らないと。

 俺はシアナの事情とシアナのことを守るために婚約したことを伝えた。

 ベンネット伯爵とナサヤ子爵は顔を歪めたがシアナの事情とシアナを守るためと聞いたため、2人とも考え始めた。

 ベンネット伯爵は画面越しにナサヤ子爵と目を合わせ、頷きあった。

 リリアとエレネが良いと言うなら、シアナとの婚約を許すと。

 2人の親から許可が取れた。

 許可を取り終えたので応接室を出た。

 廊下を歩いているとリリアとエレネに出会った。

 どうやら、お茶会が終わったらしい。

 2人にシアナの行方を聞くとシアナは読みかけの本があるので書斎に行ったらしい。

 俺は2人を応接室に連れて行き、シアナの事情とシアナを守るため婚約したことを伝えた。

 2人は驚いていたけど、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべていた。

 シアナなら良いと2人とも答えてくれた。

 2人に礼を言い、俺は書斎に向かった。

 書斎に着くとシアナが本を読んでいた。

 「シアナ、少し良いか?」

 シアナは本から目を離し、俺の方を向いくれた。

 「うん、大丈夫」

 「すまない、シアナ」

 そう言いながら、俺は頭を下げた。

 いきなり俺から頭を下げられたシアナは少し驚いた表情を浮かべていた。

 「い、いきなりどうしたの?ビリー」

 俺はシアナの事情を聞いてしまったこととシアナを守るためとはいえ、シアナの許可を取らずに勝手に婚約したことを伝えた。

 シアナは私の言葉を否定するように首を横に振ったのだ。

 「ううん、ビリーは何も、悪くない。ビリーは、私を守るために、してくれた。それが、とても嬉しい」

 「シアナ、怒っていないのか?」

 「うん?なんで?ビリーは私のこと、守って、くれただけ、でしょ?それに私、ビリーのこと、好きだから」

 シアナは無表情でそう答えてくれた。

 「ありがとう、シアナ」

 「ビリー、こんな私を、受け入れて、くれて、ありがとう」

 そう言いながら、シアナは初めて微笑んでくれた。

 その微笑みに俺は惚れてしまった。

 この日、俺は3人目の婚約者が出来た。

 新国王、俺は大陸との縁を切らないことは約束したが、お前の国とは縁を切らないとは一言も言っていない。

 俺の婚約者を役立たずと言った国王が治める国なんかに貿易をしてたまるか。

 さて、部下達に指示を出しておくか。

 反対することは無いだろう。

 別に収益も大したことが無いだろうし。
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