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第十九話 魔王復活

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 俺が調べていた訳ではない。

 それは、突然、俺の頭の中に響いてきた。

 魔王が復活すると。

 俺は、あり得ないと思いながらも、気になって仕方なかった。

 この世界には、既に魔族なんて滅んでいるからだ。

 魔族は、千年前の大戦で、滅んだはずだ。

 だが、あり得ないと言い切れない俺がいた。

 俺は、念の為、影で、調べることにした。

 調べた結果、魔王は、復活していた。

 まだ力は、全て戻っていなかったが、既に、俺よりも格上になっていた。

 それだけなら、良かったが。

 最悪の情報も手に入れてしまった。

 魔王が、完全に力を取り戻したら、聖女を生け贄として貰うと。

 クソ。

 考えるのは、後だ。

 まずは、このことを全て、大司教様に伝えなければ。

 俺は、その日の夜に、全てを報告した。

 もちろん、俺が叶わないことも。

 大司教様は、「そうか」

 その後、部屋の中には、静寂が訪れた。

 静寂を破ったのは、覚悟を決めた表情を浮かべた大司教様だった。

 大司教様は、「ラルク、お前に、命令を下す。影殺しを使い、魔王を殺せ」

 俺は、「り、了解しました」

 大司教様は、後ろを向いた。

 大司教様は、「この任務が終わったら、レミアとの結婚を許そう。例え、それが、何を失おうともだ」

 俺は、そのことに驚いていると、大司教様は、「早く、行け」

 俺は、頭を下げ、影移動を使い、レミアの元に行った。

 普段、レミアの前に現れることは無いが、今回は、レミアの隣に座った。

 俺は、いつも座っている椅子をベッドの近くまで持っていき、近くで、レミアのことを見た。

 レミアは、可愛い寝息を立てて、寝ていた。

 影殺しか。

 俺は、何かを失うのか。

 だが、レミアを守るために失うなら、何も悔いなど無い。

 もし、臓器が取られても、片腕が取られても、片足が取られても、心臓が取られても、命を取られようが、俺は、何も悔いが無い。

 影殺しは、直接相手を殺すのでは無く、影の相手を殺すのだ。

 影の相手を殺すと、現実に反映され、相手は、死ぬ。

 影殺しは、どんな屈強な男だろうが、不死身だろうが、殺すことが出来る。

 それは、直接では無く、間接的に殺すからだ。

 だが、影殺しには、代償がある。

 代償は、ランダムだ。

 何を失うのか分からない。

 俺には、何かを失う恐ろしは無い。

 だって、この任務が、終われば、レミアと結婚出来るんだ。

 俺が大好きなレミアと結婚が出来る。

 なら、何も迷うことは無い。

 レミア、約束するよ。

 何かを失っても必ず帰ってくることを。

 そして、レミアのことをお嫁さんにすることを。

 あの約束を守るために。

 決意を胸に秘めた俺は、レミアの頭を撫でた。

 レミアは、頭を撫でられて、嬉しそうな表情を浮かべた。

 俺は、そんなレミアを見て、少し笑った。

 椅子を片付け、影移動を使った。
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