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第四話 帰還
しおりを挟む「まずは自己紹介をしよう。私はノレン・ヤグース。ヤグース伯爵家の次男だ」
それを聞いた少女は驚きと怯えが混ざった表情を浮かべていたのだ。
「ああ、安心してくれ。一応、血が繋がっているが、あれのことは心の底から嫌悪しているからな」
「そ、そうなんですね。あ、まだ名乗っていませんでした。私はシーシア・ベリジェトです。ベリジェト公爵家の長女でもあります」
驚いたな。
ベリジェト公爵家とは。
この国の筆頭公爵家。
自己紹介を終えた私達は安全な場所に向けて移動を始めた。
道すがら、私はベリジェト嬢から話を聞くことが出来たのだ。
まず、彼女はこの国の第一王子の婚約者。
まぁ、いるよな。
婚約者は。
私が珍しいだけだ。
その後は聞いていてあまりいい気分がするものでは無かった。
どうやら、ベリジェト嬢は疎まれているらしい。
貴族学院から婚約者から家族からも。
意味が分からない。
何故、こんな素晴らしいベリジェト嬢を疎むのだ?
そうそう、婚約者の歳はあのクソ野郎と同じみたいだ。
それに側近。
あれを側近にするとか、この国は大丈夫なのか?
ああ、そうか。
能力じゃないのか。
家か。
ヤグース伯爵家は交流関係が広い。
利用するために側近に入れたのだろう。
粗方話し終え、ベリジェト嬢は呟く。
「昔はみんな優しかった。やっぱり、私が悪い子に」
私はベリジェト嬢の言葉を遮った。
「ベリジェト嬢。それは違います」
そう言い、私はベリジェト嬢の方を向いたのだ。
「これは明らかに異常だ。何が原因かは分かりませんが、これだけは言えます。ベリジェト嬢が原因では無いと」
私の言葉を聞いたベリジェト嬢は驚きの後に微笑んだのだ。
「ヤグースさんは優しいですね」
「私が?」
「はい」
「私は優しくはありません。ただ、人として最低限のことをしているまでです」
「最低限のこと?」
「そうです。人、いや、男として」
そう言い、私は前を向き直した。
「それでは行きましょう。ここにいては危ないですから」
「はい」
それから私達は休憩を挟みながら、歩き続けると森を抜けることが出来た。
ああ、ここに出たか。
なら、そこまで遠い道程ではないな。
ここは王都の近くにある森。
だから、B級程度の魔物しか居なかったのか。
それから、私は王都に向かって歩き始めた。
王都を囲う外壁に到着したのだ。
その外壁を守る衛兵達に事情を話すと直ぐに貴族学院まで馬車を出してくれた。
どうやら、知っているようだな。
今回のことを。
まぁ、有り難く使わせて貰う。
その後、無事に貴族学院に到着し、ベリジェト嬢と別れたのだ。
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