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第九話 暗殺者

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 様々な者達の協力によって、疫病に効果的な魔法具の生産に成功した。

 完成した魔法具を転移門という魔法具で大都市まで送り、そこからは様々な魔法具で送り届けたのだ。

 その結果、今回の疫病は1人の死者を出すこと無く、終わりをむかえたのだ。

 これは意図してなかったのだが、私の商会の評価が上がった。

 なんで、多くの取引先を獲得することが出来たのだ。

 今回の支援に費やした費用を補えるぐらいに。

 だから、いつもの日常に戻るには2ヶ月が経ってしまった。

 いつもの日常に戻った私は今回の件に関わった者達に報奨を渡すことにしたのだ。

 従業員と魔法具工房の者達には臨時ボーナスと高級食材を。

 高級食材にしたのは絶対に外れないからだ。

 副会長には臨時ボーナスと酒を。

 実は副会長は酒が好きなので、高級食材ではなく酒にした。

 そして、カナリエとリサーナの報奨は2人に決めてもらった。

 2人の報奨はとても可愛いもので、私とのデートだったのだ。

 私は1人ずつのデートを楽しんだ。

 ちなみに、カナリエとのデートは魔法具博物館でリサーナとのデートは買い物だった。

 リサーナとのデートを楽しんだ日、私は珍しく夜遅くまで起きていたのだ。

 様々な取引先が出来たので、縁を繋ごうとして、釣書を送って来るのだ。

 私には既に2人の婚約者がいるので、断る手紙を書いていたら、遅くなってしまった。

 さて、終わったから寝ようか。

 そんなことを思いながら、背伸びしていると懐に入れていた魔法具が震えたのだ。

 嘘だろ。

 この魔法具は使う機会が無いと思っていたのに。

 まずは行動して、安全を確保しよう。

 今は2人が寝ているからな。

 そう考えた私は本館の地下室に向かったのだ。

 地下室、いや、地下牢には黒い布で身を包んでいる者が気絶していた。

 これは暗殺者か。

 まずは調べてみるか。

 私は暗殺者の身包みを剥ぎ、手足を拘束してから調べ始めた。

 調べた結果、様々な武器と金が入った布袋を持っていたのだが、ある物を見つけてしまったのだ。

 それは私の本家の紋章が刻まれたバッチだった。

 これは本家のお抱えの暗殺者ということか。

 やったな。

 あの人は。

 もう無理だな。

 そう思い、私がある魔法具を取り出すと一緒にある言葉が頭に浮かんだのだ。

 「確かに愛してるよ。でもね、約束を破る人が嫌いなの。だから、もしあの人が約束を破ったら、迷わずそれを起動して。それで少しは後悔すると思うから」

 私の母上は知らない。

 あの人がどれだけ貴方を愛していたのかを。

 今でも母上との記念日には墓参りを欠かせないのだから。

 母上との記憶が頭に浮かんだ後、私はある魔法具を起動した。

 起動した魔法具は役目を終え、私の手から消え去ったのだ。

 私はもうあの家の者では無くなった。

 家族は母上だけだ。

 だから、一生後悔するといい。

 私の父上だった者よ。
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