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父と僕
205.蘇芳_SUOU
しおりを挟む出動令がまた届いた。
今回は10人の不透明人間か1人の透明人間かだった。
この頃には10代の父も候補に上がっていた。
不透明人間なら20代の若者もいたが、半透明人間は歩けないおじいちゃんか父のような10代の子供や若者しか残っていなかった。
あれほどの人数を出したのにも関わらず、1人もまだ帰ってくる気配はなかったし、
この戦争がいつ終わるかもう見えなかった。
でも着実に命に重さがついてきた。
半透明人間は恐怖と差別の対象になりつつあった。
今回の出動は2人の半透明人間の兄弟と父が候補に上がった。
村長は3人を呼び出し、立候補するなら優先的にその志を尊重するといっていた。
父はいく覚悟が決まらなかったという。
母を残して戦場に行ってしまってはもう2度と会えなくなるかもしれないから。
「君はこの村でもう少し勉強をして父のような立派な医者になりなさい。
退出して構わない。」
「はい。わかりました。」
父は今回の選考から逃された。
しかしこの兄弟の次は自分しかいなくなる。
父は退出したふりをして、残った2人の行方に耳を立てた。
「どちらが出動するか、2人で話し合ってくれ」
「僕が行きます。」
そう答えたのは兄の方だった。
「そうか。」
驚いたような一瞬間が開いてから、
村長は淡々と答えた。
部屋には弟の静かな鳴き声が聞こえた。
きっと兄は弟を守りたかったのだろう。
家を継ぐ長兄だとしても、
それ以上に弟を戦争に行かせてはならないという強い決意を感じた。
守れる限り、家族を守りたいと。
父は決して成績優秀とか秀才でもない。
あんな言われ方をされたけれど、今回見逃されたのはきっとじいちゃんが不透明人間だったからだろう。
あの兄弟の家族は全員半透明人間だったのだから。
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