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妄想かもしれない
しおりを挟む僕が、一年半前に救急車で運ばれた時の話。
僕は、帰宅途中にコンビニに寄った。
ど田舎だから、コンビニのだだっ広い駐車場はすっからかん。
運転していた車を、出入り口の前に頭から突っ込んで停めた。
適当に弁当を買って出てから、喫煙所でタバコを吸っていた。
まだ、18時だが、冬なのであたりは暗い。
紙たばこに火をつけて、スマホを見ながら吸っていた。
ふと、ズボンの裾を引っ張られて僕はスマホから目を離した。
右下を見ると、男の子がいた。
突然、男の子がやってきて僕のズボンの裾を引っ張っていたのだ。
「おじちゃん、こっちきて」
頭の中はハテナでいっぱいだった。
小学1年生くらいの男の子は、まん丸のお目目が可愛らしい男の子だった。まだ新しいランドセルを背中に背負っている。
「おじちゃん、こっち。」
そう言いながら、ズボンを引っ張るので僕はついて行くことにした。
「ねぇ、君、迷子なの?お母さんは?お父さんは?」
尋ねてみるが、男の子はズボンを引っ張って道路に出てしまった。
仕方なくついて行く。
見慣れた風景がしばらく記憶の中で続く。
そのまま1キロくらい道なりに歩いた。
地元の小学校の前までたどり着いた僕は、「君ここの学校の子?」と男の子に尋ねた。男の子は、上目遣いで僕を見上げて首を横に振った。そして、男の子はこんな事を言った。「おじちゃん、このまま生きて行くのはかわいそう。僕と一緒にいようよー。」意味はわからなかったが、僕は頷いた。
僕が覚えている記憶はここまで。
僕は、この出来事をきっかけに病院に入院した。正直、いつどうやって入院したか覚えていない。家族も教えてくれない。
統合失調症って病名だけは教えてもらった。
僕がおかしくなったのは、男の子のせいだって。そんな気だけはしてる。
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