隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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花火大会【蓮也】

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 バイト終わり。
 俺は、花火大会に向かった。

 有希くんがいなくなって、もう2年近く経ってしまった。

 有希くんは、自ら出て行ったのだと思う。
 だから探さないと決めていた。
 けれど、花火大会みたいに人がたくさん集まるイベントに、もしかしたら有希くんが紛れているのではないかと思って、積極的に参加している。
(有希くんを探している訳じゃない。)
 自分に言い聞かせる。

 夜18時。
 まだ花火は始まっていない。

 1人、雑踏の中に紛れる。

 かなり人が多い。
 田舎なのに、こんなに人が集まるなんて。

 ただでさえ、真夏だから暑いのに、人が密集して熱気のすごい。


 少し先にかき氷の屋台が見えた。
 一旦、かき氷でも食べて涼もう。

 俺は、かき氷の屋台の列に並んだ。

「蓮也くん!」

「綾子ちゃん。」

 後ろから声をかけられた。
 同じ大学の学部の女の子。それと隣にもう1人。
 2人とも浴衣姿だ。

「蓮也くん、花火大会誘ったのに。誰ときてるの?」

「いや、実は高校の後輩と来てたんだけど。気づいたらはぐれちゃってて。」

 適当に嘘をついた。

「それって女の子?彼女?」


「違うよ。男。160センチくらいの細身の男の子見なかった?ちょっと髪が長めの。山田有希って名前なんだけども。」

「うーん。」

「見かけたら電話で教えてくれる?かき氷、奢るからさ。」

 有希くんの特徴を伝えた。

「いいよ。じゃあ、私、ハワイアンブルーで。」

「そちらは?」

 綾子ちゃんの連れの女の子に尋ねる。

「あ、私はいちごで…。」

 ここに有希くんがいるかどうかも分からないけど、少しでも可能性のあるならば。

「ハワイアンブルーといちごね。どうぞ。」

 綾子ちゃんと女の子にかき氷を渡す。
 俺もハワイアンブルーにした。

「ありがとう…。」

 いちごのかき氷を手渡すと女の子が照れくさそうに笑った。

「君も、もし160センチくらいの男の子見かけたら教えてね。」

「わかりました。探してみますね。」

 有希くんは、今頃高校三年生の歳だ。
 もしかしたら結構身長が伸びているかもしれない。


「さて、反対の端の十字路まで歩くか。」

 高校の頃から、数回この花火大会には来ているのでおおよそどこからどこまで、祭りの屋台が出ているのか把握している。

 今いる通りに500メートルくらい。それから、裏通りに500メートルくらい。

 何往復かすることにしよう。

 かき氷を食べながら1人、ぶらぶらしてみる。

 たまに、背の低くて髪が少し長い男の子がいてハッとする。
 でも、必ず有希くんではなかった。

 やがて、19時になり、花火が上がり始めた。


 屋台の通りを抜けて、河川敷に向かった。

 河川敷は花火がよく見えるのでたくさんの見物客が集まっている。

 誰もが花火に注目する中、周りの人の顔を覗いてみる。

 これだけ人がいるのに、有希くんはいない。

 ともかく歩いて回った。
 そして、さっき会った綾子ちゃんたちから連絡がないか、こまめに携帯電話もチェックした。

 ゆっくり歩きながら、周りを見渡す。

(どうか、どうか、ここにいて欲しい。)

「有希くん。」

 考えすぎて声に出してしまっていた。



 ドカーン。パラパラ。


 花火の音と人々の歓声が虚しく、遠くに響いた。

 やがて、いつの間にか花火は終わり、人々が家路につく。

 俺は、日付が変わるまではここで有希くんを探しながら過ごすことにした。


(今日こそまた、出会いたい。)


 有希くんの顔もだんだんと朧気になってきた気がする。あんなに大切な大切な思い出なのに。

 柄にもなく少し、涙が出そうだった。
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