85 / 92
花火大会【蓮也】
しおりを挟むバイト終わり。
俺は、花火大会に向かった。
有希くんがいなくなって、もう2年近く経ってしまった。
有希くんは、自ら出て行ったのだと思う。
だから探さないと決めていた。
けれど、花火大会みたいに人がたくさん集まるイベントに、もしかしたら有希くんが紛れているのではないかと思って、積極的に参加している。
(有希くんを探している訳じゃない。)
自分に言い聞かせる。
夜18時。
まだ花火は始まっていない。
1人、雑踏の中に紛れる。
かなり人が多い。
田舎なのに、こんなに人が集まるなんて。
ただでさえ、真夏だから暑いのに、人が密集して熱気のすごい。
少し先にかき氷の屋台が見えた。
一旦、かき氷でも食べて涼もう。
俺は、かき氷の屋台の列に並んだ。
「蓮也くん!」
「綾子ちゃん。」
後ろから声をかけられた。
同じ大学の学部の女の子。それと隣にもう1人。
2人とも浴衣姿だ。
「蓮也くん、花火大会誘ったのに。誰ときてるの?」
「いや、実は高校の後輩と来てたんだけど。気づいたらはぐれちゃってて。」
適当に嘘をついた。
「それって女の子?彼女?」
「違うよ。男。160センチくらいの細身の男の子見なかった?ちょっと髪が長めの。山田有希って名前なんだけども。」
「うーん。」
「見かけたら電話で教えてくれる?かき氷、奢るからさ。」
有希くんの特徴を伝えた。
「いいよ。じゃあ、私、ハワイアンブルーで。」
「そちらは?」
綾子ちゃんの連れの女の子に尋ねる。
「あ、私はいちごで…。」
ここに有希くんがいるかどうかも分からないけど、少しでも可能性のあるならば。
「ハワイアンブルーといちごね。どうぞ。」
綾子ちゃんと女の子にかき氷を渡す。
俺もハワイアンブルーにした。
「ありがとう…。」
いちごのかき氷を手渡すと女の子が照れくさそうに笑った。
「君も、もし160センチくらいの男の子見かけたら教えてね。」
「わかりました。探してみますね。」
有希くんは、今頃高校三年生の歳だ。
もしかしたら結構身長が伸びているかもしれない。
「さて、反対の端の十字路まで歩くか。」
高校の頃から、数回この花火大会には来ているのでおおよそどこからどこまで、祭りの屋台が出ているのか把握している。
今いる通りに500メートルくらい。それから、裏通りに500メートルくらい。
何往復かすることにしよう。
かき氷を食べながら1人、ぶらぶらしてみる。
たまに、背の低くて髪が少し長い男の子がいてハッとする。
でも、必ず有希くんではなかった。
やがて、19時になり、花火が上がり始めた。
屋台の通りを抜けて、河川敷に向かった。
河川敷は花火がよく見えるのでたくさんの見物客が集まっている。
誰もが花火に注目する中、周りの人の顔を覗いてみる。
これだけ人がいるのに、有希くんはいない。
ともかく歩いて回った。
そして、さっき会った綾子ちゃんたちから連絡がないか、こまめに携帯電話もチェックした。
ゆっくり歩きながら、周りを見渡す。
(どうか、どうか、ここにいて欲しい。)
「有希くん。」
考えすぎて声に出してしまっていた。
ドカーン。パラパラ。
花火の音と人々の歓声が虚しく、遠くに響いた。
やがて、いつの間にか花火は終わり、人々が家路につく。
俺は、日付が変わるまではここで有希くんを探しながら過ごすことにした。
(今日こそまた、出会いたい。)
有希くんの顔もだんだんと朧気になってきた気がする。あんなに大切な大切な思い出なのに。
柄にもなく少し、涙が出そうだった。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる