灯影、そして君の面影

本野汐梨 Honno Siori

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協力について

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 蒼は、山神貿易の主人であり、父である京介きょうすけの意見に反対していた。

 なんでも、京介が山神貿易の第一倉庫警備を警察官である片山圭に任せようと言うのだ。

 確かにここ数ヶ月の治安は最悪で、山神貿易の複数ある倉庫の内2つが被害に遭っていた。蒼自身も盗賊に襲われたこともある。
 港にある山神家の第一倉庫には、かなり高価な品々が並んでいる。盗賊に狙いがバレるのも時間の問題だろう。山神家の権力を持ってすれば、警察官達に始終警護に当たらせることも可能だ。

「しかし、父上!」

「何を反対するんだ?佐世保の警察官達は、戊辰と西南の戦禍を生き抜いたつわものばかりだ。不足はない。」

 蒼は、数日前の火事の後に道端で寝ていた警察官を思い出した。あの人は確かに屈強で強いが、道端で寝てる上に酷くうなされていた。きっと訳アリに決まっている。そんな奴が居る組織に、大事な倉庫を守らせる訳にはいかない。その事を父上に伝えたいが、実はあの日、夜間の外出を禁止されているのにも関わらず、父に無断で外出していたものだから、道端で寝ていた警察官の話ができないのだ。

「まぁ、良い。反対するならば不足をお前がなんとかしろ。お前が警察と協力して倉庫の警備をしなさい。お前は、剣も強いし図体も大きいから適任だろう。」

「あ、、えっ?そ、そんな!無茶です!父上!!」

 叫ぶが遅かった。父は、決めたことは曲げない性格なのだ。

 そんな訳で、第一倉庫に英国から大量の品々が輸入される2日後から、品を売り先に送り出すまでの1週間を蒼は警察と協力してそうこの警備をする事になった。

 警察に協力を要請する時、あの警察官だけは呼ばないでほしいと頼みたかったが、生憎名前を知らない。薩摩訛りの図体の大きい奴、は現場に寄越すな、と警察に言ってはみたものの。「警察組織というのは、殆ど薩摩人です。むしろ薩摩人以外は居ない程なのであります。」と、これまた薩摩人の警察署長に断られてしまった。

 嫌な気持ちのままあっという間に2日過ぎた。

 腕に覚えのある警察官達が日暮と共に第一倉庫に集結した。

 中には、あの警察官がいた。

「またお会いしましたね、マッポさん。」

「はい。また、お会いしましたね。山神のおぼっちゃま。」

 心なしか警察官の声が冷たい。
 うなされている姿を見られた事がよほどショックだったのか。なんとも情けない男だと思った。

「私、山神蒼と申しますけど。」

 こちらも負けずに、強めに言い放ってやった。

「片山圭と申します。」

 やっと名前を聞いた。
 明日から寄越さない様に、警察署長に告げ口しておこう。


 蒼が事前に決めておいた配置に警察署長が人員を割り振る。

 屋根の上に、指令係として蒼が登る事になっている。そして、蒼の助手に就いたのが、あの片山圭だった。

「片山は腕も強く頭も良く働きます。何より忠義に厚く絶対に裏切りません。それに先ほど、山神殿ともお話しされていた様ですし。」

 嫌だとは思ったものの、蒼は1番信用していない男を目の届く所に置いておけるのは悪くないと考えた。既に日は暮れ始めている。
 すぐに、蒼は圭を連れて倉庫の屋根に登った。

「私は南方を守ります。山神のお坊ちゃんは北方をお守りください。」

 圭が偉そうに指図してくる。

(賊が攻めてくるなら北だろうに。こいつ、日和ったな。)

「あぁ、そうしましょうか。片山さん。」

「名前も覚えていただけました様で。」

 でかい図体の癖にニッコリ微笑むと愛嬌がある男だ。だが、すぐに精悍な横顔に戻った。


「ちなみに、盗賊が攻めてくるならば今夜です。ご注意くださいませ。」

 意味深な言葉を発した後に、圭は南方へ向かった。

 蒼の胸はざわついていた。

 片山圭という男。
 嫌いじゃないかもしれない、なぜか本能的にそう思った。


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