俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

聞いてもらうにふさわしい者もいるだろうに、なんで俺に聞かせるのだ

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 握り飯を作っている間、泣き声はだんだんと静かになっていった。
 冷たい言い方かもしれんが、子供の泣き声ってのはどうしても気になるもんでな。
 研ぎ汁を捨てたりするときに、米粒も何粒か一緒に捨てちまうミスをした。

 何の話だったか。
 子供の泣き声とお上の言うことには逆らえないとか何とか。

 こっちのミスは俺が集中しないからで、子供らの責任じゃない。
 むしろ、なんでそこまで泣いてるのか気になる所ではある。
 が、その事情を聴いたところで何の解決にもならないし、こいつらがここに来た事情を今まで根掘り葉掘り質問したこともない。
 相手が子供だからそれを許される、なんてのは、間違いなくひいきだよな。

「ん? 何か必要な物でもあるのか?」

 コルトが台所にいる俺の所に近づいてきた。
 子供らの看病はまだ必要だろうに。
 泣き声が収まったからと言って、油断してたらどうなるか。

「うん、問題ないよ。あの魔導師さんが引き続いてみてくれるから」

 コルトよりも治癒能力は高いらしい。
 加えて、俺の手伝いができるのはコルトだけ。
 自分にしかできない仕事をしてらっしゃい、と言われたのだそうだ。

「容態は落ち着いたみたいだから。あとは気持ちも落ち着いたら、ね」
「……そう言えばしばらく混ぜご飯の握り飯作ってなかったなー」
「言われてみればそうですね。普通のおにぎりよりも人気ありましたよね。次元が違いすぎますもん」

 意識不明の子は何カ所か骨折していたんだそうだ。
 大人の冒険者達でそんな怪我は何度も見たが、子供の骨折は滅多に見ない。
 というよりも、子供の冒険者自体まず来ない。
 それが今回は、四人もまとまっている。

 こっちの世界の常識で考えれば、一刻も早く親元に還してやりたいという私情は生まれる。
 が、コルトみたいな例もある。
 虐待を受けていた可能性もあるから一概に親元に帰すのが良策とは言えないが。

 だが今の俺には、もっと重要な問題がある。
 一番人気のある混ぜご飯の種類なんだが、チャーハンおにぎりが一番ウケがいいんだよな……。
 手間がかかりすぎるが、時間的には何とか間に合いそうか?
 全部それにするわけじゃないしな。

 ※※※※※ ※※※※※

 そのまま夜の八時、握り飯タイムに入る。
 考えてみれば、コルトが手伝いを始めてから、初めてチャーハンの握り飯を作ったことになる。
 行列は整然としているが、何となく殺気立ったものを感じているのは間違いなくチャーハンの握り飯狙いだろう。
 だが最初の四個は予約済み。
 怪我人がいるからな。
 断じて子供だからという、情に左右された理由ではない!

 チャーハンの握り飯は真っ先に消えていった。
 と同時に、行列も今までのような穏やかな雰囲気に変わっていく。
 全く現金な奴らだ。

 そして気になる四人の小さい冒険者達。
 いつの間にか起きてて、四人並んで着ぐるみの上に腰掛けている。

 もう着ぐるみでいいや。

 けど、まだ泣いているようで、四人とも不規則に肩を上下させている。
 まぁ握り飯を食べきれそうだからよしとするか。

 それにしてもここで魔法を使える者がいれば、使えない者もいる。
 その差はどこにあるんだろう?
 コルトの道具作りで、金属の溶接は彼女がいたダンジョンで魔法をかけるとか言っていた。
 ここで怪我の治療をするときの魔法は、この場でかけるみたいだ。

 まぁ俺が気にすることでもないんだが。

 が、また子供の泣き声が聞こえてきた。
 後片付けの洗い物は時間を気にしなくていい。
 だからその仕事をしながらその子らの方に視線をやる。
 
 コルトのほかに何人かの冒険者達が子供らの周りにいた。
 慰められたり宥められたりしてるようだが……結局あいつら、そいつらの保護者じゃないからな。
 けど誰もいないよりは心強かろう?
 こっちはこっちの仕事をするだけだ。

「コウジさん、ちょっといい?」
「うぉう! びっくりした。いつの間に来たんだよ」
「仕事に集中してたんだね。いいことだ」

 いきなりどこから目線だよお前は。

「実はちょっと聞いてほしいんだけど」
「俺に? 俺よりお前らを治してくれた魔法使いのお姉ちゃんとかに聞いてもらう方がいいと思うぞ?」
「うん、私達も話を聞いたんだけど……」
「何かあったのか?」
「……あの子たち、見た目通り冒険者なんだけど……。ちょっと来てくれる?」

 こっちは洗い物の途中なんだが?
 あ、おい、引っ張んなっ。

 ったく……しょうがねぇな。とっとと聞いて、さっさと洗い物の仕事に戻るか。
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