44 / 196
未熟な冒険者のコルト
俺が異世界人にできないこと、そしてできること
しおりを挟む
俺はコルトに無理やり子供達の前に連れてこられた。
「で? 何をどうすりゃいいんだ?」
四人ともしゃくりあげながら泣いている。
それだけ心にショックを受けてるんだな。
それでも握り飯を食いきったのは褒めてやってもいいか。
食わなきゃ体力を維持できないからな。
だが、子供にそんなショックを受けたことを喋らせるのも酷だ。
って、見た目、十五か十六か。
子供というには微妙だが、この部屋に来る冒険者達と比べれば、まだ子供か。
「で、泣いている子供ら相手に、俺はどうすればいいんだ?」
「え、えーと……」
連れてきた本人が困惑するなよ。
そもそもお前は子供らから話聞いたのか?
「私が話そう。この子達は冒険者の養成所に通ってたらしい」
女魔導師が説明を始めた。
落ち着いた口調は、実に頼りになるって感じがする。
それに比べてコルトは……落ち着きがねぇな。
「卒業の試練の一つとして、指導員一人と共にダンジョンに入ったんだそうだ」
まぁ子供四人なら目が行き届くか。
「話を聞けば、その指導員は相当腕が立つ冒険者だったらしい」
「だった?」
過去形ってのが嫌な予感をさせるんだよな、大概。
「あぁ、亡くなったらしい。そこら辺の状況は詳しくは聞いてないが、おそらく不意打ちか予想外の事故が起きたんだろう」
「それで心細くなって?」
「いや、違う。その指導員に襲われたんだそうだ」
熟練の冒険者が幻術でも食らったとでもいうのかね。
ま、そっち方面の経験が全然ないから偉そうなことは言えんけど。
「おそらく瘴気でも漂ってたんじゃないか? 屍鬼に変わり果てたんだそうだ」
そりゃあ……。
さっきまで丁寧に指導をしてくれた相手が動かなくなって、また動いたら安心しただろ。
そしたら今度は打って変わって襲い掛かるってんだから。
悪夢、だよな……。
泣きじゃくるのも仕方ないか。
「指導員だった屍鬼の一撃で四人が吹っ飛ばされた。その先にここへの扉があって、何とか難を逃れた、ということらしい」
絶望じゃん。
でもこいつらにとって絶望ってことで、脱出しようと思えば出来るんじゃねぇのか?
とは言っても、冒険者の実態も知らないし、連中の活動中の苦労も知らない。
俺に説得力あるわけないっての。
コルトは四人の頭を撫でながら慰めてるばかり。
けど俺の頭で考える範囲だが、こいつらにとっての救いはいくつかあるんじゃないか?
「指導員ってことは、こいつらは生徒とか、そんな感じだよな?」
「えぇ、そうね」
「となりゃ、そんな非常事態だから救助活動も行われてるはずだ」
「私もそう思う」
「しかも未熟な冒険者を連れて行く現場って、熟練者が用心している限りは、難易度は低い方だと思うんだが」
「そうね。でも……」
言葉を濁すな。
それも嫌な予感しかしないから。
「親しい者が目の前で亡くなったのを見たら流石にすぐには立ち直れないんじゃないかしら? 大人ならともかく……」
「親しい人を亡くしたって言うなら、コウジさんだってそうでしょ? しかもこの子達とそんなに年が離れてない頃に」
急に何を言い出してんだ? コルトは。
「俺は冒険者になったことはないし、そもそも冒険者って職業は俺の世界にないんだってば」
探検家はいるだろうけどな。
だから俺がこいつらにしてやれることは握り飯食わせることくらいだし、それはみんなにも同じ
「そうじゃなくて。コウジさん、この子達と同じ頃にお父さんとお母さん死んじゃったんでしょ?」
「「「「え?」」」」
「え?」
あ、そっちの話?
って言うか、大事な人を亡くしたのは今から十年以上前の話だぞ?
こいつらはついさっきの話だろ?
比べようがないっつーの。
「……おじさん、お父さんもお母さんもいないの?」
「……お兄さん、だ」
二十七歳男性は、見知らぬ子どもからおじさんと呼ばれる年齢じゃないはずだ。
「……さみしくないの? おじさん」
「お兄さん、だ」
「コウジさん……。そこ、拘らなくていいんじゃ」
間違いを正すのが大人の役目。
お兄さんに向かっておじさんと呼ぶ間違いを直すのは間違いじゃないはずだ、うん。
「で? 何をどうすりゃいいんだ?」
四人ともしゃくりあげながら泣いている。
それだけ心にショックを受けてるんだな。
それでも握り飯を食いきったのは褒めてやってもいいか。
食わなきゃ体力を維持できないからな。
だが、子供にそんなショックを受けたことを喋らせるのも酷だ。
って、見た目、十五か十六か。
子供というには微妙だが、この部屋に来る冒険者達と比べれば、まだ子供か。
「で、泣いている子供ら相手に、俺はどうすればいいんだ?」
「え、えーと……」
連れてきた本人が困惑するなよ。
そもそもお前は子供らから話聞いたのか?
「私が話そう。この子達は冒険者の養成所に通ってたらしい」
女魔導師が説明を始めた。
落ち着いた口調は、実に頼りになるって感じがする。
それに比べてコルトは……落ち着きがねぇな。
「卒業の試練の一つとして、指導員一人と共にダンジョンに入ったんだそうだ」
まぁ子供四人なら目が行き届くか。
「話を聞けば、その指導員は相当腕が立つ冒険者だったらしい」
「だった?」
過去形ってのが嫌な予感をさせるんだよな、大概。
「あぁ、亡くなったらしい。そこら辺の状況は詳しくは聞いてないが、おそらく不意打ちか予想外の事故が起きたんだろう」
「それで心細くなって?」
「いや、違う。その指導員に襲われたんだそうだ」
熟練の冒険者が幻術でも食らったとでもいうのかね。
ま、そっち方面の経験が全然ないから偉そうなことは言えんけど。
「おそらく瘴気でも漂ってたんじゃないか? 屍鬼に変わり果てたんだそうだ」
そりゃあ……。
さっきまで丁寧に指導をしてくれた相手が動かなくなって、また動いたら安心しただろ。
そしたら今度は打って変わって襲い掛かるってんだから。
悪夢、だよな……。
泣きじゃくるのも仕方ないか。
「指導員だった屍鬼の一撃で四人が吹っ飛ばされた。その先にここへの扉があって、何とか難を逃れた、ということらしい」
絶望じゃん。
でもこいつらにとって絶望ってことで、脱出しようと思えば出来るんじゃねぇのか?
とは言っても、冒険者の実態も知らないし、連中の活動中の苦労も知らない。
俺に説得力あるわけないっての。
コルトは四人の頭を撫でながら慰めてるばかり。
けど俺の頭で考える範囲だが、こいつらにとっての救いはいくつかあるんじゃないか?
「指導員ってことは、こいつらは生徒とか、そんな感じだよな?」
「えぇ、そうね」
「となりゃ、そんな非常事態だから救助活動も行われてるはずだ」
「私もそう思う」
「しかも未熟な冒険者を連れて行く現場って、熟練者が用心している限りは、難易度は低い方だと思うんだが」
「そうね。でも……」
言葉を濁すな。
それも嫌な予感しかしないから。
「親しい者が目の前で亡くなったのを見たら流石にすぐには立ち直れないんじゃないかしら? 大人ならともかく……」
「親しい人を亡くしたって言うなら、コウジさんだってそうでしょ? しかもこの子達とそんなに年が離れてない頃に」
急に何を言い出してんだ? コルトは。
「俺は冒険者になったことはないし、そもそも冒険者って職業は俺の世界にないんだってば」
探検家はいるだろうけどな。
だから俺がこいつらにしてやれることは握り飯食わせることくらいだし、それはみんなにも同じ
「そうじゃなくて。コウジさん、この子達と同じ頃にお父さんとお母さん死んじゃったんでしょ?」
「「「「え?」」」」
「え?」
あ、そっちの話?
って言うか、大事な人を亡くしたのは今から十年以上前の話だぞ?
こいつらはついさっきの話だろ?
比べようがないっつーの。
「……おじさん、お父さんもお母さんもいないの?」
「……お兄さん、だ」
二十七歳男性は、見知らぬ子どもからおじさんと呼ばれる年齢じゃないはずだ。
「……さみしくないの? おじさん」
「お兄さん、だ」
「コウジさん……。そこ、拘らなくていいんじゃ」
間違いを正すのが大人の役目。
お兄さんに向かっておじさんと呼ぶ間違いを直すのは間違いじゃないはずだ、うん。
1
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる