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未熟な冒険者のコルト
そっちが勝手に被害受けたって思ってただけじゃん!
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とにかくこのままでは部屋を壊されかねない。
特に壁を壊されたら外から丸見えになるから、日本のニュースの中心になっちまう。
下手に抵抗できん。
死にたくないって気持ちはあるが、自分が死んだらその死因はどうなるのか。
それを考えたら、相手の気持ちを逆なでしないようにしないと、って言う気持ちも強くなるのも当然だろ?
「ま、魔王って……何のことだよっ! り、理由を教えろよ!」
「黙れっ! 甘言で我らをたぶらかそうと考えても無駄だ!」
「おい、こいつの言うことに耳を貸すな。……ハタナカ……いや、魔王っ。聞きたいことはあるだろうが、その前にこっちの話を聞け。質問や反論は許さん!」
な、何なんだこいつら。
クレーマー、神官、その次はこんなんが来た。
祖母ちゃん、祖母ちゃんの時はこんな奴ら来てたのか?
「あ、あの……コウジさん、何かしでかしたんでしょうか?」
お、おぉ、コルトっ。助けてくれっ!
でも、何か「しでかした」って言い方は、何となく印象良くないぞ?
悪いことをしたという前提みたいに聞こえるじゃないかっ!
「お嬢さん、ご安心を。それからここにいる皆さんも安心なさってください! 巨悪の根源は、今断ち切ります!」
「ま、待」
「黙れ! 貴様が何をしたか、それがどんな影響を及ぼしたか教えてやる」
うん、まずその話は聞きたい。
「今から約一か月前。我らフォーバー王国の女王直属師団の、我らの上司であるバーナー師団長は一時期行方不明となった。魔族の王を倒すため、国軍の約半分をその討伐計画に投入したのだ!」
そっちの世界の国名とか事情とか、本音を言えばすごくどうでもいいんだけどさ。
それに目の前にちらついている刃物の切っ先が……。
目に刺さりそうなんですがっ!
こえぇよ!
「師団長の部隊は他の部隊と共に調査済みの地点まで問題なく進んだ。しかしそこから先の未知の区域は他の部隊と共に苦戦した。連携も崩れ、各自の判断で進軍、撤退していった」
「運悪く師団長の部隊は魔族の部隊から不意打ちを食らい壊滅。しかし師団長は難を逃れたのだそうだ!」
そりゃ何より。
けどそっちの事情なんざ知らねぇよ。
俺がこんな目に遭わなきゃならない理由を言えっての!
「逃げた先が、救世主がどうのと冒険者の間で噂されていた場所。だがおそらくそこで魔術を食らったと思われる!」
「魔術?」
ここで回復効果がある魔法や薬を冒険者同士でやり取りすることはあるが……。
「声を出すな! ……師団長がかかったのは、おそらく幻術魔法。健康状態は良好のまま帰還できたのは喜ばしいことだ。しかし……、しかしっっ……。……あれが心身共に健康と言えるかっっ!」
「……師団長は、行方不明になっていた間の報告、そしてその後の通常勤務は何の問題もないが……。勤務時間が終わると、とにかく酒場を放浪し始めたっ!」
「黄色いスープがどうの、辛味の香ばしい香りが漂う麺がどうのと……。聞けばここでそのような物を目にしたと言うではないか!」
……あ……。
コルトー。
この二人になんか言ってやってくれー……。
あ……、おい……。
視線逸らすな。
おーーい。
「宮廷魔法師団の団長の話によれば、嗅覚に悪影響を及ぼす幻術を食らったに違いない、とのことだった! 師団長ほどの能力を持つ者を惑わす輩と言えば……」
「そこらにいる魔物なんぞ、師団長の敵ではないっ! 貴様があのダンジョンの支配者、魔王なのだろう!」
ちょっと待て。
思い当たることと言えば、カレーうどんと焼きそばをここで食ってただけだぞ?
オイこらお前らっ!
槍の柄を喉に押し付けんなっ!
つーか、何が魔法だよ!
お前らの世界にゃ、匂いのない食べ物しかないのかよ!
おい、お前ら、こいつらに何とか言ってやってくれっ!
って、その現場にいた奴は流石にいないか。
おいっ!
コルトっ!
これ、流石にシャレにならんぞっ!
「えぇ……、そうですね……。あれは、ちょっと、流石に……」
コルトーーーーッ!
てめええぇぇぇ!
「……状況確認した。このまま捕縛して至急帰還するぞ!」
「うむ。囮部隊の救助も急がねばならんしな!」
囮?
何のダメージも負っていそうにないこいつらがここに来るってのは変だとは思ってたが、死にそうな奴と一緒に同行すれば、何のダメージもないままここに来れるってこと?
おいおい、仲間をそんな目に遭わせてまでここに来るってこたぁ……。
俺、どんだけお尋ね者のレベルになってんだよっ!
「コウジさん……」
「こ、コルト……てめぇ……」
「まだ、情状酌量の余地はあると思います」
「コルトーーーーッ!」
俺は勢いよく屋根裏部屋の方に引っ張られた。
いや、ちょっと待て。
こいつらはそれでも扉をくぐってきたんだろ?
でも俺はその扉が見えねぇんだぞ?
俺、どうなっちまうんだ?!
この二人が先に立って俺を強く引っ張っている。
抵抗したくてもできゃしねぇ!
そして二人は壁から姿が消えた。
そして俺はっ……!
「痛ぇーっ!」
壁に押し付けられた形になり、尻もちをついた。
俺はそのまましばらく呆然として壁を見ていた。
「な……何なんだよ、一体……」
つむじ風にしては、被害が甚大だった。
主に俺の精神的に。
特に壁を壊されたら外から丸見えになるから、日本のニュースの中心になっちまう。
下手に抵抗できん。
死にたくないって気持ちはあるが、自分が死んだらその死因はどうなるのか。
それを考えたら、相手の気持ちを逆なでしないようにしないと、って言う気持ちも強くなるのも当然だろ?
「ま、魔王って……何のことだよっ! り、理由を教えろよ!」
「黙れっ! 甘言で我らをたぶらかそうと考えても無駄だ!」
「おい、こいつの言うことに耳を貸すな。……ハタナカ……いや、魔王っ。聞きたいことはあるだろうが、その前にこっちの話を聞け。質問や反論は許さん!」
な、何なんだこいつら。
クレーマー、神官、その次はこんなんが来た。
祖母ちゃん、祖母ちゃんの時はこんな奴ら来てたのか?
「あ、あの……コウジさん、何かしでかしたんでしょうか?」
お、おぉ、コルトっ。助けてくれっ!
でも、何か「しでかした」って言い方は、何となく印象良くないぞ?
悪いことをしたという前提みたいに聞こえるじゃないかっ!
「お嬢さん、ご安心を。それからここにいる皆さんも安心なさってください! 巨悪の根源は、今断ち切ります!」
「ま、待」
「黙れ! 貴様が何をしたか、それがどんな影響を及ぼしたか教えてやる」
うん、まずその話は聞きたい。
「今から約一か月前。我らフォーバー王国の女王直属師団の、我らの上司であるバーナー師団長は一時期行方不明となった。魔族の王を倒すため、国軍の約半分をその討伐計画に投入したのだ!」
そっちの世界の国名とか事情とか、本音を言えばすごくどうでもいいんだけどさ。
それに目の前にちらついている刃物の切っ先が……。
目に刺さりそうなんですがっ!
こえぇよ!
「師団長の部隊は他の部隊と共に調査済みの地点まで問題なく進んだ。しかしそこから先の未知の区域は他の部隊と共に苦戦した。連携も崩れ、各自の判断で進軍、撤退していった」
「運悪く師団長の部隊は魔族の部隊から不意打ちを食らい壊滅。しかし師団長は難を逃れたのだそうだ!」
そりゃ何より。
けどそっちの事情なんざ知らねぇよ。
俺がこんな目に遭わなきゃならない理由を言えっての!
「逃げた先が、救世主がどうのと冒険者の間で噂されていた場所。だがおそらくそこで魔術を食らったと思われる!」
「魔術?」
ここで回復効果がある魔法や薬を冒険者同士でやり取りすることはあるが……。
「声を出すな! ……師団長がかかったのは、おそらく幻術魔法。健康状態は良好のまま帰還できたのは喜ばしいことだ。しかし……、しかしっっ……。……あれが心身共に健康と言えるかっっ!」
「……師団長は、行方不明になっていた間の報告、そしてその後の通常勤務は何の問題もないが……。勤務時間が終わると、とにかく酒場を放浪し始めたっ!」
「黄色いスープがどうの、辛味の香ばしい香りが漂う麺がどうのと……。聞けばここでそのような物を目にしたと言うではないか!」
……あ……。
コルトー。
この二人になんか言ってやってくれー……。
あ……、おい……。
視線逸らすな。
おーーい。
「宮廷魔法師団の団長の話によれば、嗅覚に悪影響を及ぼす幻術を食らったに違いない、とのことだった! 師団長ほどの能力を持つ者を惑わす輩と言えば……」
「そこらにいる魔物なんぞ、師団長の敵ではないっ! 貴様があのダンジョンの支配者、魔王なのだろう!」
ちょっと待て。
思い当たることと言えば、カレーうどんと焼きそばをここで食ってただけだぞ?
オイこらお前らっ!
槍の柄を喉に押し付けんなっ!
つーか、何が魔法だよ!
お前らの世界にゃ、匂いのない食べ物しかないのかよ!
おい、お前ら、こいつらに何とか言ってやってくれっ!
って、その現場にいた奴は流石にいないか。
おいっ!
コルトっ!
これ、流石にシャレにならんぞっ!
「えぇ……、そうですね……。あれは、ちょっと、流石に……」
コルトーーーーッ!
てめええぇぇぇ!
「……状況確認した。このまま捕縛して至急帰還するぞ!」
「うむ。囮部隊の救助も急がねばならんしな!」
囮?
何のダメージも負っていそうにないこいつらがここに来るってのは変だとは思ってたが、死にそうな奴と一緒に同行すれば、何のダメージもないままここに来れるってこと?
おいおい、仲間をそんな目に遭わせてまでここに来るってこたぁ……。
俺、どんだけお尋ね者のレベルになってんだよっ!
「コウジさん……」
「こ、コルト……てめぇ……」
「まだ、情状酌量の余地はあると思います」
「コルトーーーーッ!」
俺は勢いよく屋根裏部屋の方に引っ張られた。
いや、ちょっと待て。
こいつらはそれでも扉をくぐってきたんだろ?
でも俺はその扉が見えねぇんだぞ?
俺、どうなっちまうんだ?!
この二人が先に立って俺を強く引っ張っている。
抵抗したくてもできゃしねぇ!
そして二人は壁から姿が消えた。
そして俺はっ……!
「痛ぇーっ!」
壁に押し付けられた形になり、尻もちをついた。
俺はそのまましばらく呆然として壁を見ていた。
「な……何なんだよ、一体……」
つむじ風にしては、被害が甚大だった。
主に俺の精神的に。
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