俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

みんなだって怖く思う時はある

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「コルトおおぉぉぉ!」
「だって事実でしょーっ!」

 瀕死、重体、重症でここにやってくる冒険者達。
 しかし回復すれば、誰もが品行方正というわけじゃない。
 荒くれ者だって中にはいる。

 が、俺とコルトの言い争いで、そんな奴らも恐らく含んでいる全員が、なるべく俺達から遠ざかろうとしているのは気配で分かる。
 しかし今はそれを気にしてるどころじゃない。

「俺がいなくなったら、ここで誰が飯作って出せるんだっ! 米袋はあるけどさっ! それが切れたらここに食料持って来れるの、俺だけだっての分かってんだろ!」
「はうぅぅっ! コウジさんがあんな美味しそうなの食べるのが悪いんでしょーっ!」
「そもそもあの神官二人をっ、お前一人でっ、ピシッと言って聞かせてやりゃあこんなこと起きなかったんだっての!」

 俺の理論は間違ってはいない。間違っちゃいないはずだっ。
 コルトの過去にどんなことがあったか。
 それは実際目撃してはいない。
 けれども話は聞いたし、性格的に弱気なところがあるのはその経験によって生まれたものだろうなと理解できるし納得はできる。
 性格だって簡単に変えられるものじゃないことも知ってはいるが……。

 何が正しくて何が間違ってるか、何てのはそれぞれの世界によって基準は違う。
 けど、物事の道理は同じだろ?
 水が入ったコップを持ち上げて、それを逆さにすりゃ水は下へと落ちていく。
 健康状態良好で腹が減ったら、腹の虫が鳴るとは必ずしも言い切れないが、何かを食べたくなる。

 物事の自然の成り行きや生きている者の本能。
 その現象の説明ならば誰も文句の言いようがない。

 けど食い違いがあったり間違った認識を持たれたら、堂々と反論を言い切れよ。
「ふえぇ」とか「あぅぅ」とか言ってんじゃねぇよ。

「俺らはその、一か月前とやらの出来事は知らねぇけどよ」

 そばにいた、斧を二つ腰に付けた戦士が近寄って来た。
 事情を知らない奴に口出しされても、話がややこしくなるだけなんだがな。

「確かに、コルトちゃん、ちょいと必要以上にビビること多いよな。確かにコウジがいなきゃ俺らは助からねぇってことがあるかもしれねぇけどよ、でもコルトちゃんにもいてもらって助かった思いもしたことあるんだよ」

 ……だからどうした。
 関係ない話すんじゃねぇよ。

「別に、威張れってんじゃねぇけどよ。自分の身を守るためにはどっかの隅で体を丸めて隠れるのも手だが、胸張って堂々としてるのも意外と有効だぞ?」

 ……事情知らないくせにいいこと言うじゃねぇか。

「まぁ俺はこの体格だから隠れようったって隠れる場所がねぇ。だから堂々としてたら、ホレ」

 ペチ、とそいつは自分の頭を叩く。
 いい音するな。
 髪の毛一本もない、光を反射するほどの艶がある肌。
 見事な頭してるよ。

「光を反射して、魔物の目くらましに使えたりする」
「できるかっ!」

 しまったっ。
 ついツッコんじまったっ。

「ぶわはははは。ま、ここには命を狙う敵がいねぇんだ。さっきみたいにいきなりあんな風に、どこぞの国の役人みたいな名乗り上げられたら流石の俺らもビビるけどよ」

 まったくだ。
 特に俺の体は、こいつらと比べ物にならないくらい貧弱だしよ。

「みんなの世話してくれてるんだ。……今度はビビらねぇ。二人をぜってー守ってみせるさ」
「……俺としちゃ有り難いけどよ。そんだけ元気があったら、一刻でも早く身内にその顔見せた方がいいんじゃね?」
「あんたらにできる恩返しってば、ここでしかできねぇからなぁ。そういう意味では、さっきは何の力にもなれずすまんかったな」
「……だったら一つ願いを聞いてくれねえか」
「お? 何かしてやれることがあるのか? 言ってみろ言ってみろ」

 少し息を吸って溜めを作る。
 単純な思い付きじゃねぇってことを知ってもらわなきゃならんしな。

「俺を『救世主』呼ばわりするのやめろ」
「そいつぁ無理だ。事実だからな。わははは」

 即答かよ!
 しかも拒否しやがった!
 しかもみんなして笑ってやがる!
 くそっ! なんて事態だ!

「心配すんな。少なくとも魔王呼ばわりはしねぇからよ」

 余計な追撃すんじゃねぇっ!
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