俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

コウジが与えるペナルティ

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 コルトはしょげていた。

 二斧の戦士に、コルトの性格を理解してもらっていた。
 だが、そのままはダメだ、という叱りの意味も入ってた。
 否定されたときの辛さは分かる。
 だが、いつまでも俺にしがみつかれてもな。

「よし。お前にバツを与える」
「……バツ?」
「そう、バツだ。そうだなー……何がいいかなー……。そうだ。歌、歌ってもらおうか」
「歌?」

 俯き気味のコルトは俺の方を見てキョトンとしている。
 何でそんな提案をしてくるか、といった疑問符が浮かんでるように見える顔だ。

 プレハブを作ってしばらくしてから、ちょっと思うところがあったんでな。
 でもこの刃物の先が怖くて

「あぁ。何の音もなく、みんなの雑談くらいしかない。華やかさが欲しいなってな」

 いわゆるBGMだ。
 が、音楽を垂れ流すだけでは何の意味もないし、電気使用料も馬鹿にならない。
 その代わりをやってもらおう。

「魅了させる目的じゃなく、みんなの耳に触れりゃいい。ずっと歌う必要もない。決まった時刻に適当な時間の長さを決めて歌う」

 つまり声は大きくなくていいってことだ。
 誰だってできるはず。

「楽器もないですし、最初から最後まで覚えてる歌なんて……」
「歌詞なんて必要ないさ。あー、でも、らー、でもいい。最悪ハミングでも構わん」
「で、でも、大勢の人の前でなんて……」
「その戦士さんも言ってただろ。おどおどしすぎってよ。そういう場に慣れろってことだよ。別にきれいな歌声とか期待しちゃいねぇからっ」

 まったく……。
 またなんか口をパクパクさせてあうあう言ってらぁ。
 金魚かお前はっ。

「ふえぇとか言うようなレベルじゃねぇとバツにならんだろうがっ。何でもいいから度胸付けろよっ」
「でもほんとに歌なんて……」
「お前は酒場とかに出入りしたことはねぇのか? そこで流れてた音楽とか覚えてねぇのかよ! 歌いきれなんて言わねぇよ。覚えてる部分を繰り返すだけでもいい」

 コルトがここでする仕事は、握り飯配給の手伝いとアイテムの物作り。
 だがエルフという種族は、七十を超えた年齢でもさらに成長するらしい。
 つまり成長期を無駄にしてしまいかねないということだ。

 それに、いつも何かに怯えてばかりでは、行動範囲も狭まったまま。
 俺が死んだ後もここに居続けることになったら、間違いなく飢えて死んじまうだろうよ。

 効果はないかもしれんが何もしないよりはマシだ。

「で、でも……酒場には行ったことありますけど……」

 ……そうか。
 見捨てた仲間と一緒に、か。
 思い出したくもない、忘れたい過去ということか。

「子守歌とか歌ってもらったこともなかったか? 弟とか妹の面倒とか見なかったのか?」
「う……。それは、ありますが……」

 俺だって歌ってもらった。
 だが全部覚えてるわけじゃねぇし。
 歌うことが目的じゃねぇからな。

「よし、決まり。いいか? 度胸をつけろってことだよ。くれぐれも言っとく。別にきれいな声で歌えっつってんじゃねぇからな?」
「あうぅ……」

 耳障りな呻き声を無視して、夜の握り飯タイムが終わったら三分でもいいからやること、と押し付けた。

 そして夜の握り飯の配給が終わり、その時間がやって来る。

「コルト。言っとくが、必ずしも注目を浴びながら歌えってんじゃねぇからな? 鼻歌交じりで握り飯の仕事の後片付けをしてもいいし、道具作りに精を出しながらでもいい」
「あ……あぃ……」

 周りはコルトの声を気にしないだろうが、みんなから歌声を聞かれているという意識をコルトに持ってもらった上で、それを続けるのが理想だ。
 まぁ俺の個人的に、仕事のBGMが欲しいってのもあるんだがな。
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