66 / 196
未熟な冒険者のコルト
外れてもらいたい俺の推理
しおりを挟む
異世界人同士で面倒事が起きたら、真っ先に逃げるに限る。
一応トラブル厳禁の注意はしておくがな。
そのトラブルにも種類はある。
言い争いだけならまだ見過ごすことはできる。
原因はなんであれ、厄介なのは暴力沙汰。
これは俺の手に余る。
手に余る、なんてもんじゃないがな。
だが、こんなトラブルは何をどうしていいやら分からん。
俺にしちゃ、それをトラブルと呼ぶには可愛すぎる。
いや、微笑ましいと言ってもいいくらいだ。
だがコルト本人にしちゃ、誰かに泣きつきたくなるトラブルということだろうな。
俺は今、コルトと俺の昼飯を運ぼうとしてプレハブに入ったところ。
コルトがいつもの昼の時間に、昼寝の時間ということで歌ったんだろう。
部屋にいる全員が静かな寝息を立てている。
そういうことでシュースも眠ってはいるが、それでもコルトの足の甲に手をかけている。
俺に気付いてこっちを見る目が怖い。
恨めしそうな顔で見ている。
「ふえぇ」とか言ったからだろ。
そいつの泣き声よりうっとおしい。
「ほれ。昼飯、持ってきたぞ」
「うぅ……はい……」
その返事は耳に入ったが待つつもりはなく、俺は足を止めることなくコルトの部屋の扉を開けた。
※※※※※ ※※※※※
こちらから話を聞くつもりは毛頭ない。
だから昼飯を食いながら、コルトが勝手に話を始めたのだが。
「シュースちゃんから話を聞いたんですけど」
コルトが誰かをちゃん付で呼ぶのも珍しい気がする。
もっとも異世界人の名前を知る気もないから、それ自体が珍しいことなんだが。
「……私のいた国でもかなり有名になってるみたいなんです」
「へー」
俺のことだってあちこちの異世界で有名になってんだから、考えてみりゃそうかもな。
「異界の部屋でおにぎりを配るエルフの女の子がいるって。名前はコルト。ダンジョンに入って、それ以来行方不明。死にそうなときに歌で体を癒してくれる、経験の浅い冒険者……だそうです」
これらの噂は別個で語られてるんだとか。
噂話をまとめると、そんな感じらしい。
俺にとっちゃ今更だな。
「で、あの子……シュースちゃん、私が見た通り、冒険者になって間もなくしてここに来ることになったんだそうです」
「へー」
お前だって経験浅いのに、よくそんな上から目線で他人を見れるもんだ。
見ることができるようなった、ってことなのか?
まぁどうでもいいか。
いや、ちょっと待て。
そんな新人冒険者が「コルト様をお守りします」って言ってたよな。
それは覚えている。
おかしくないか?
「お会いできてうれしいです」とか
「助けてくれてありがとうございます」とか
……あとは、そうだな。
「弟子にしてください」とかか。
コルトに頼る。縋る。
普通なら、そんな思いが見えそうな言葉が出てこないか?
でもあの子が言った言葉は、経験を重ねてきた冒険者なら、自分の胸を叩きながら言いそうな言葉だよな。
尊い存在に身を捧げる、みたいな。
まぁ「キュウセイシュ」の肩書を擦り付けることができた、とも言えるが……。
待て。
一体何から守ろうとしてるんだ?
他の異世界人から見たら、別世界の存在として受け取れる。
だが、自分らの世界から異界に移動した同郷の者が「キュウセイシュ」として活動しているって話を聞いたら……。
そいつに仕える、という意味で守るとしたら……。
そんな気を起こせるものか?
そもそもコルトだって経験の浅い冒険者って話だったはずだ。
邪心しか持ってない奴がその話を聞いたら……。
例えば……「あんなポンコツにそんなことできるわきゃねぇだろ」
とか、「だったらそんなとこでそんなことしてねぇで、国に戻って、そこで活動したらいいじゃねぇか」
とか、「そんな未熟な冒険者なら、もっと鍛えてやって恩を着せれば、その力は俺達のものだ」
とか思うだろう。
それにしてもだ。
それが事実だとしても、なぜコルトと面識がない者がそうまでしてこいつを守ろうとしたんだ?
「キュウセイシュ」なんて渾名がつく存在だ。
自分とは住む世界が違う、と普通は思わないか?
なのに守ろうとする。
理由は簡単だ。
その存在が、自分の手に届く距離にいるから。
面識がないのに、なぜ手が届くと思えたか。
未熟な冒険者ということで親近感を覚えたか。
それはない。
未熟な冒険者だって数多く来た。
けれども誰一人としてそんなことは言わなかった。
それどころか、こんなに近づくことができて畏れ多いという思いを持つ者が多かった。
ということは……何かしらの共通点があったってことだ。
生まれ故郷は同じじゃないのは覚えてる。
コルトは自分で言っていた。自給自足の生活をしていたエルフの村の出身だと。
同じ世界、国から来たが面識はない。
同じ未熟な冒険者だが、他にも共通点はある。
畏敬の念はあるけれど、それ以上に、自分ならコルトを助けられる、と……確信? している。
そうだ。
まだ共通点があった。
それは、この部屋に来ることが……。
「……おい。まさか」
ある結論に達した俺はコルトを見た。
コルトは悲しそうな顔をしていた。
当てたくなかった。
だが、おそらく俺の予想は……多分ビンゴだ。
一応トラブル厳禁の注意はしておくがな。
そのトラブルにも種類はある。
言い争いだけならまだ見過ごすことはできる。
原因はなんであれ、厄介なのは暴力沙汰。
これは俺の手に余る。
手に余る、なんてもんじゃないがな。
だが、こんなトラブルは何をどうしていいやら分からん。
俺にしちゃ、それをトラブルと呼ぶには可愛すぎる。
いや、微笑ましいと言ってもいいくらいだ。
だがコルト本人にしちゃ、誰かに泣きつきたくなるトラブルということだろうな。
俺は今、コルトと俺の昼飯を運ぼうとしてプレハブに入ったところ。
コルトがいつもの昼の時間に、昼寝の時間ということで歌ったんだろう。
部屋にいる全員が静かな寝息を立てている。
そういうことでシュースも眠ってはいるが、それでもコルトの足の甲に手をかけている。
俺に気付いてこっちを見る目が怖い。
恨めしそうな顔で見ている。
「ふえぇ」とか言ったからだろ。
そいつの泣き声よりうっとおしい。
「ほれ。昼飯、持ってきたぞ」
「うぅ……はい……」
その返事は耳に入ったが待つつもりはなく、俺は足を止めることなくコルトの部屋の扉を開けた。
※※※※※ ※※※※※
こちらから話を聞くつもりは毛頭ない。
だから昼飯を食いながら、コルトが勝手に話を始めたのだが。
「シュースちゃんから話を聞いたんですけど」
コルトが誰かをちゃん付で呼ぶのも珍しい気がする。
もっとも異世界人の名前を知る気もないから、それ自体が珍しいことなんだが。
「……私のいた国でもかなり有名になってるみたいなんです」
「へー」
俺のことだってあちこちの異世界で有名になってんだから、考えてみりゃそうかもな。
「異界の部屋でおにぎりを配るエルフの女の子がいるって。名前はコルト。ダンジョンに入って、それ以来行方不明。死にそうなときに歌で体を癒してくれる、経験の浅い冒険者……だそうです」
これらの噂は別個で語られてるんだとか。
噂話をまとめると、そんな感じらしい。
俺にとっちゃ今更だな。
「で、あの子……シュースちゃん、私が見た通り、冒険者になって間もなくしてここに来ることになったんだそうです」
「へー」
お前だって経験浅いのに、よくそんな上から目線で他人を見れるもんだ。
見ることができるようなった、ってことなのか?
まぁどうでもいいか。
いや、ちょっと待て。
そんな新人冒険者が「コルト様をお守りします」って言ってたよな。
それは覚えている。
おかしくないか?
「お会いできてうれしいです」とか
「助けてくれてありがとうございます」とか
……あとは、そうだな。
「弟子にしてください」とかか。
コルトに頼る。縋る。
普通なら、そんな思いが見えそうな言葉が出てこないか?
でもあの子が言った言葉は、経験を重ねてきた冒険者なら、自分の胸を叩きながら言いそうな言葉だよな。
尊い存在に身を捧げる、みたいな。
まぁ「キュウセイシュ」の肩書を擦り付けることができた、とも言えるが……。
待て。
一体何から守ろうとしてるんだ?
他の異世界人から見たら、別世界の存在として受け取れる。
だが、自分らの世界から異界に移動した同郷の者が「キュウセイシュ」として活動しているって話を聞いたら……。
そいつに仕える、という意味で守るとしたら……。
そんな気を起こせるものか?
そもそもコルトだって経験の浅い冒険者って話だったはずだ。
邪心しか持ってない奴がその話を聞いたら……。
例えば……「あんなポンコツにそんなことできるわきゃねぇだろ」
とか、「だったらそんなとこでそんなことしてねぇで、国に戻って、そこで活動したらいいじゃねぇか」
とか、「そんな未熟な冒険者なら、もっと鍛えてやって恩を着せれば、その力は俺達のものだ」
とか思うだろう。
それにしてもだ。
それが事実だとしても、なぜコルトと面識がない者がそうまでしてこいつを守ろうとしたんだ?
「キュウセイシュ」なんて渾名がつく存在だ。
自分とは住む世界が違う、と普通は思わないか?
なのに守ろうとする。
理由は簡単だ。
その存在が、自分の手に届く距離にいるから。
面識がないのに、なぜ手が届くと思えたか。
未熟な冒険者ということで親近感を覚えたか。
それはない。
未熟な冒険者だって数多く来た。
けれども誰一人としてそんなことは言わなかった。
それどころか、こんなに近づくことができて畏れ多いという思いを持つ者が多かった。
ということは……何かしらの共通点があったってことだ。
生まれ故郷は同じじゃないのは覚えてる。
コルトは自分で言っていた。自給自足の生活をしていたエルフの村の出身だと。
同じ世界、国から来たが面識はない。
同じ未熟な冒険者だが、他にも共通点はある。
畏敬の念はあるけれど、それ以上に、自分ならコルトを助けられる、と……確信? している。
そうだ。
まだ共通点があった。
それは、この部屋に来ることが……。
「……おい。まさか」
ある結論に達した俺はコルトを見た。
コルトは悲しそうな顔をしていた。
当てたくなかった。
だが、おそらく俺の予想は……多分ビンゴだ。
1
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる