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未熟な冒険者のコルト
コルトの手記:女魔法剣士からのアドバイス
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魔法剣士の女の人からお話しを聞けました。
魔力についてです。
いつの間にかみんなが眠っちゃってるのを見てほんとに怖かった。
私一人じゃ何にもできないもん。
誰かが押しかけてきたらどうしようって。
タイミングよくコウジさんが来てくれたから、安心して泣きそうになっちゃった。
でも魔法剣士さんが目を覚ました後であんな風に言ってくれたから、体中から力が抜けそうになっちゃった。
でもでも、びっくりしたら体が固まるってほんとにあるんだねぇ。
よく考えてみたら、私にそんな力があるってことだよね?
今までそんなこと言われたことなかったのに。
って言うか、冒険者の養成所でもそんな話聞いたことなかった。
実際に歌を歌って人の体を癒すなんて人も見たことなかったし。
ほんっとに、まさか私に?! って感じだった。
ずっと前から、魔法と魔術ってどう違うんだろう? って思ってた。
魔法は呪文を唱えることで魔力を射出する方法なんだって。
魔術は、そんな方法を含めて、魔力を外に出して効果を発揮するあらゆる手段らしいんだって。
その場合、射出というより放出することが多いらしいって言ってた。
で、私の場合、まずは適正なんだけど、回復と防御補助の方が効果を出しやすいんじゃないかって。
魔法や武術ばかりじゃなく、他の人の魔力の傾向を判定することまでできるなんて、あの人すごいなー。
で、体の一部や道具を使って射出するより、放出する方が適してるって言われた。
即効性は魔法と比べて低いけど、範囲はより広くなるし対象の数も多くできるんだって。
もちろん調節も出来るし、消費した魔力は休憩しなくても回復できるから、威力は低いけど私に適してるんじゃないかって。
「冒険者を選んだのは、選んだ仕事を間違えたようなものね。これからはきっと、『あなたがいてくれてよかった』って、みんなそう言ってくれるかもね」
誰かにそう言ってもらいたかった。
あの時までは、いてもいなくてもあんまり変わらなかった。
冒険者として成長していたかもしれないけど、成長前と成長後の差がよく分からなかったから。
だからうれしくて、泣きそうになった。
「へぇ。バツでねぇ。じゃあバツを与えてくれたコウジにも感謝しないとね」
「は、はい……」
「これからバツを受け続けることにも感謝しないとね」
「え……」
そうだった。
そういうことになるんだった。
自分に向いてる職業があるって言われるとうれしいけど、最初はやっぱり恥ずかしいよね。
人前で歌うんだよ?
みんな注目するもの。恥ずかしいよ。
……でも、酒場に行ったときに歌う人はたまに見かけたけど、見てる人はあんまりいなかったような気がする。
うーん……どうなんだろ。
「まぁでも効果も当然だけど、聞く人が気持ちよく聞ける声を出さないと、有り難がられることもないよ?」
……それもそうだよね。
嫌々歌って、聞く人を不愉快にさせて、だけど体力とか回復させて、だけど恨まれこそすれ感謝されないって、どんだけ可哀そうな歌い手さんなんだろ。
「場所にあった声量になるように調節できるようになって、喉を傷めず、声を響かせて、感情を込める。たとえハミングとかだったとしてもね」
「人前に立つのも想像しなかったけど、そんなことまで気を遣うんですかぁ?!」
そんなこと考えたこともなかった。
恥ずかしいのにさらにそんなことまで考えなきゃならないなんてっ。
魔力を高める鍛錬なしに、さらに多くの人を元気にさせる力があるって聞いた時には驚いて喜んだけど、喜んでばかりもいられなさそう……。
「自分に向いてる仕事であっても、質を上げる努力は常に心掛けないとね。怠けてたら向上どころか力の維持すら難しくなるよ?」
冒険者だろうが、魔物と関係のない商店街で働く人たちの職業だろうが、それはどれも変わらないんだって。
私もあの人から、さらにきつく言われちゃった。
「そんな歌い手に簡単になれそうなのは、そんな性質を持つ魔力の持ち主だからってのは分かるけど、それだけじゃダメだよ?」
「それだけじゃダメ? って言われても……」
「今のところはスキャットやハミングだけでしょ?」
「はい。歌詞をしっかり覚えてる歌は全くありませんから……」
「今はそれでもいいよ。でも本気でその方面に進んでいくなら、歌詞は覚えないとダメ。同じ歌ばかりも飽きられるし、同じメロディを聞かされても退屈になっちゃう」
「はうぅ……」
曲作りや歌詞作りにも手を広げなきゃダメ、とも言われちゃった。
でも、何の能力を持ってない人が一流を目指すよりは、はるかに平たんな道のりなんだって。
「そんな魔力の持ち主は、やっぱり重宝されるからね。同じ苦労するのなら、報われやすい仕事を選ぶ方がいいと思うよ?」
……うん。
私、まずそっちを目指すっ。
コウジさんのおにぎりに負けないくらい、たくさんの人を元気にしてあげたいしっ。
魔力についてです。
いつの間にかみんなが眠っちゃってるのを見てほんとに怖かった。
私一人じゃ何にもできないもん。
誰かが押しかけてきたらどうしようって。
タイミングよくコウジさんが来てくれたから、安心して泣きそうになっちゃった。
でも魔法剣士さんが目を覚ました後であんな風に言ってくれたから、体中から力が抜けそうになっちゃった。
でもでも、びっくりしたら体が固まるってほんとにあるんだねぇ。
よく考えてみたら、私にそんな力があるってことだよね?
今までそんなこと言われたことなかったのに。
って言うか、冒険者の養成所でもそんな話聞いたことなかった。
実際に歌を歌って人の体を癒すなんて人も見たことなかったし。
ほんっとに、まさか私に?! って感じだった。
ずっと前から、魔法と魔術ってどう違うんだろう? って思ってた。
魔法は呪文を唱えることで魔力を射出する方法なんだって。
魔術は、そんな方法を含めて、魔力を外に出して効果を発揮するあらゆる手段らしいんだって。
その場合、射出というより放出することが多いらしいって言ってた。
で、私の場合、まずは適正なんだけど、回復と防御補助の方が効果を出しやすいんじゃないかって。
魔法や武術ばかりじゃなく、他の人の魔力の傾向を判定することまでできるなんて、あの人すごいなー。
で、体の一部や道具を使って射出するより、放出する方が適してるって言われた。
即効性は魔法と比べて低いけど、範囲はより広くなるし対象の数も多くできるんだって。
もちろん調節も出来るし、消費した魔力は休憩しなくても回復できるから、威力は低いけど私に適してるんじゃないかって。
「冒険者を選んだのは、選んだ仕事を間違えたようなものね。これからはきっと、『あなたがいてくれてよかった』って、みんなそう言ってくれるかもね」
誰かにそう言ってもらいたかった。
あの時までは、いてもいなくてもあんまり変わらなかった。
冒険者として成長していたかもしれないけど、成長前と成長後の差がよく分からなかったから。
だからうれしくて、泣きそうになった。
「へぇ。バツでねぇ。じゃあバツを与えてくれたコウジにも感謝しないとね」
「は、はい……」
「これからバツを受け続けることにも感謝しないとね」
「え……」
そうだった。
そういうことになるんだった。
自分に向いてる職業があるって言われるとうれしいけど、最初はやっぱり恥ずかしいよね。
人前で歌うんだよ?
みんな注目するもの。恥ずかしいよ。
……でも、酒場に行ったときに歌う人はたまに見かけたけど、見てる人はあんまりいなかったような気がする。
うーん……どうなんだろ。
「まぁでも効果も当然だけど、聞く人が気持ちよく聞ける声を出さないと、有り難がられることもないよ?」
……それもそうだよね。
嫌々歌って、聞く人を不愉快にさせて、だけど体力とか回復させて、だけど恨まれこそすれ感謝されないって、どんだけ可哀そうな歌い手さんなんだろ。
「場所にあった声量になるように調節できるようになって、喉を傷めず、声を響かせて、感情を込める。たとえハミングとかだったとしてもね」
「人前に立つのも想像しなかったけど、そんなことまで気を遣うんですかぁ?!」
そんなこと考えたこともなかった。
恥ずかしいのにさらにそんなことまで考えなきゃならないなんてっ。
魔力を高める鍛錬なしに、さらに多くの人を元気にさせる力があるって聞いた時には驚いて喜んだけど、喜んでばかりもいられなさそう……。
「自分に向いてる仕事であっても、質を上げる努力は常に心掛けないとね。怠けてたら向上どころか力の維持すら難しくなるよ?」
冒険者だろうが、魔物と関係のない商店街で働く人たちの職業だろうが、それはどれも変わらないんだって。
私もあの人から、さらにきつく言われちゃった。
「そんな歌い手に簡単になれそうなのは、そんな性質を持つ魔力の持ち主だからってのは分かるけど、それだけじゃダメだよ?」
「それだけじゃダメ? って言われても……」
「今のところはスキャットやハミングだけでしょ?」
「はい。歌詞をしっかり覚えてる歌は全くありませんから……」
「今はそれでもいいよ。でも本気でその方面に進んでいくなら、歌詞は覚えないとダメ。同じ歌ばかりも飽きられるし、同じメロディを聞かされても退屈になっちゃう」
「はうぅ……」
曲作りや歌詞作りにも手を広げなきゃダメ、とも言われちゃった。
でも、何の能力を持ってない人が一流を目指すよりは、はるかに平たんな道のりなんだって。
「そんな魔力の持ち主は、やっぱり重宝されるからね。同じ苦労するのなら、報われやすい仕事を選ぶ方がいいと思うよ?」
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