83 / 196
未熟な冒険者のコルト
男戦士の手記:異世界という枠に当てはまる世界
しおりを挟む
この安全区域で支給される食事は、昼食分はない。
その説明も予めしてある。
この部屋で、いつもやや空腹感を覚えるのは、俺達にいつまでもここに居させないコウジの工夫なんだろうと思う。
自分の住処の方が居心地がいいのは当たり前だ。
だからと言ってすぐに追い出すのではなく、気持ちを落ち着けてから出て行けるのは、ここに来る前にどんな思いをしたか、それを思いやってくれてるのだろう。
昼もコルトちゃんの歌声を聞かせてもらった。
俺はもう一休みできたら体調はほぼ万全だ。
だがサニーはもう少し休みが必要のようだ。
そして夜の握り飯タイムも終わる。
あの五人の顔にも笑顔が戻ってきた。
が、一人だけ気になる存在がいる。
今朝も、そして今も俺に握り飯を譲ってくれた男だ。
何も飲まず食わずで平気なはずがない。
しかし穏やかな笑みを浮かべている。
ほかの四人は、そろそろここを出ようという気持ちを漲らせている。
それに比べて、この男は何かこう……。
「世話になったな。俺達はそろそろここを出ようと思う」
「うん。とにかくあのダンジョンを脱出して、まずはみんなに無事を報告しなきゃね」
「……お前ら四人になっても、あそこからは出られると思う。頑張れよ」
その男がいきなりそんなことを言う。
俺は自分の耳を疑った。
サニーはぽかんとしている。
そして、それ以上に……。
「な……にを馬鹿なことを」
「え? 一緒に帰るだろう?」
「ここに残ってどうするの?」
「ひょっとして、まだ休み足りないか? 無理はさせるつもりはないぞ?」
仲間の四人の慌てようは当然だろう。
しかし俺には……。
たった二回。
たったの二回だけだが、握り飯の受け取り拒否が気になって仕方がない。
水もそうだ。
俺は思い立ってコウジのところに行って聞いてみた。
「……あそこにいる男、いるのが分かるよな?」
「……あぁ? トラブルはご免だぞ?」
文句タラタラ言われたが、いるのは見えると言う。
「コウジ……。お前、俺達の神様か何かか?」
コウジは固まった。
そして俺を凝視する。
「……お前は……バカか? 俺はこの世界の人間だっつっただろうが」
分かってる。
一応確認だ。
俺の予測を確実にするためのな。
そしてその予測は……。
あの五人はまだ揉めている。
離脱したがってる男の目はどこかで見たことがある。
それを今思い出した。
俺の知り合いの冒険者と一緒に、行きつけの酒場で飲んでた時だった。
「体にガタがき始めてな。この仕事で身につけた技術を生かして、この町の商店街の職人の仲間入りしようと思ってんだ」
「……辞めるのか?」
「あぁ。冒険者業は……引退だな」
「そうか……。命あっての物種だからな」
そんな会話をした相手は一人や二人じゃない。
そして一抹の寂しさはあった。
だがお別れということとは別だ。
別の形で、今現在も関わってもらってるからだ。
……あの男の目は、そんな彼らと同じような目をしている。
余計なおせっかいかもしれない。
だが彼らは、このままでは……。
「おい、ザイル。どうしたんだ? 何かあったのか?」
サニーが心配そうに聞いてきた。
あった、と言えばあったんだろう。
どういう理屈かは知らない。
この空間ならではの現象なんだろう。
そして、その主であるコウジも説明不可能な現象だと思う。
「あぁ……。俺から少し離れててくれないか? 彼らと話がしたいんだ」
サニーからの返事は聞こえなかった。
あの五人に気持ちを向けられていたせいだったからかもしれん。
周りの冒険者達は、あまりあの五人に関心を向けておらず、思い思いに雑談を楽しんでいた。
それでも俺は、部屋の片隅に五人を誘導した。
その説明も予めしてある。
この部屋で、いつもやや空腹感を覚えるのは、俺達にいつまでもここに居させないコウジの工夫なんだろうと思う。
自分の住処の方が居心地がいいのは当たり前だ。
だからと言ってすぐに追い出すのではなく、気持ちを落ち着けてから出て行けるのは、ここに来る前にどんな思いをしたか、それを思いやってくれてるのだろう。
昼もコルトちゃんの歌声を聞かせてもらった。
俺はもう一休みできたら体調はほぼ万全だ。
だがサニーはもう少し休みが必要のようだ。
そして夜の握り飯タイムも終わる。
あの五人の顔にも笑顔が戻ってきた。
が、一人だけ気になる存在がいる。
今朝も、そして今も俺に握り飯を譲ってくれた男だ。
何も飲まず食わずで平気なはずがない。
しかし穏やかな笑みを浮かべている。
ほかの四人は、そろそろここを出ようという気持ちを漲らせている。
それに比べて、この男は何かこう……。
「世話になったな。俺達はそろそろここを出ようと思う」
「うん。とにかくあのダンジョンを脱出して、まずはみんなに無事を報告しなきゃね」
「……お前ら四人になっても、あそこからは出られると思う。頑張れよ」
その男がいきなりそんなことを言う。
俺は自分の耳を疑った。
サニーはぽかんとしている。
そして、それ以上に……。
「な……にを馬鹿なことを」
「え? 一緒に帰るだろう?」
「ここに残ってどうするの?」
「ひょっとして、まだ休み足りないか? 無理はさせるつもりはないぞ?」
仲間の四人の慌てようは当然だろう。
しかし俺には……。
たった二回。
たったの二回だけだが、握り飯の受け取り拒否が気になって仕方がない。
水もそうだ。
俺は思い立ってコウジのところに行って聞いてみた。
「……あそこにいる男、いるのが分かるよな?」
「……あぁ? トラブルはご免だぞ?」
文句タラタラ言われたが、いるのは見えると言う。
「コウジ……。お前、俺達の神様か何かか?」
コウジは固まった。
そして俺を凝視する。
「……お前は……バカか? 俺はこの世界の人間だっつっただろうが」
分かってる。
一応確認だ。
俺の予測を確実にするためのな。
そしてその予測は……。
あの五人はまだ揉めている。
離脱したがってる男の目はどこかで見たことがある。
それを今思い出した。
俺の知り合いの冒険者と一緒に、行きつけの酒場で飲んでた時だった。
「体にガタがき始めてな。この仕事で身につけた技術を生かして、この町の商店街の職人の仲間入りしようと思ってんだ」
「……辞めるのか?」
「あぁ。冒険者業は……引退だな」
「そうか……。命あっての物種だからな」
そんな会話をした相手は一人や二人じゃない。
そして一抹の寂しさはあった。
だがお別れということとは別だ。
別の形で、今現在も関わってもらってるからだ。
……あの男の目は、そんな彼らと同じような目をしている。
余計なおせっかいかもしれない。
だが彼らは、このままでは……。
「おい、ザイル。どうしたんだ? 何かあったのか?」
サニーが心配そうに聞いてきた。
あった、と言えばあったんだろう。
どういう理屈かは知らない。
この空間ならではの現象なんだろう。
そして、その主であるコウジも説明不可能な現象だと思う。
「あぁ……。俺から少し離れててくれないか? 彼らと話がしたいんだ」
サニーからの返事は聞こえなかった。
あの五人に気持ちを向けられていたせいだったからかもしれん。
周りの冒険者達は、あまりあの五人に関心を向けておらず、思い思いに雑談を楽しんでいた。
それでも俺は、部屋の片隅に五人を誘導した。
1
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる