俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

男戦士の手記:彼らは永遠の別れに備えた 彼らの行く末に幸あれ

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 俺は四人を部屋の隅に呼び、俺は彼らに向いた。
 件の男は俺の隣にいさせた。

「……言いづらいことだし余計なお世話かもしれん。だが、この男がそう言う理由に思い当たる節がある」

「……ここで面倒を見てもらった命の恩人にこんなことを言うのは失礼かもしれんが……昨日今日あった俺らの何を知ってる?」

 ここにいるだけで何となく英気を養えるような気がする。
 そんな場所で俺が彼らにしたことを命の恩人などと言うには、その表現はあまりに大げさすぎる。

 苦笑いをしながら軽くそんな話をする。
 そして本題に入る。

「この男、おそらくすでに……亡くなっている」

 四人はぽかんとしている。
 その男は俯いている。

 昨夜この男が握り飯を齧ったのを俺は見ていた。
 だが、それを飲み込んだところまでは見ていない。
 そして今朝、齧った分だけ口元から零れ落ちていた。
 食べかけの握り飯は手に握られたままだった。

「この部屋は、いろんな世界の奴らが来ることができる場所だ。俺もついさっきまで想像してなかった。ここの主のコウジも、神なんかじゃないと言っていたし、救世主と呼ばれることさえ嫌うほどだったからな」

「し……死んでるのにどうして俺達と会話できるんだよっ」
「そ、そうよ! こうして触れるじゃない。彼も私達に触れるでしょ?」

「……異世界の者が来ることができる場所。異世界と言うなら、死後の世界も異世界と言えなくはない。死んだ者がやって来るのは見たことはないがな」

 屍鬼などの魔物が来ることはない安全区域。
 つまり、純粋な霊魂ということだ。

「な……。いくら……なんでも……」
「もちろん俺の憶測で、妄想だ。だがここに来てからこの男は、何も一口も飲まず食わずだ。それに……」
「それに?」

 そうでなかったら一番何よりだ。
 俺の予測は当たってほしくない、と俺自身思っている。
 だが当たっていたとしたら、この四人はこのままでは……。

「永遠の別れが迫っている、と言えるはずだ。もし俺の予想が外れてたら、俺のことを愚か者呼ばわりして笑ってくれてもいい。だがもし当たっていたら……」

 悔いの残る別れになるだろう。
 仲間の死をいつまでも引きずったり、乗り越えないままだったりすれば、このパーティの先行きもかなり危うくなる。

 俺とは異なる世界の者達だから、彼らが存在していようがいまいが何の関係もない。
 だからといって、彼らに訪れると思われる不幸をそのまま放置していいはずがない。
 せめて何か対策を立てる猶予くらいあってもいいはずだ。

「な……にを馬鹿なことを! おいっ! お前も何か言ってやれよ!」
「そうよ! いきなり変なことを言われてるのよ? 言われたあなたが真っ先に反論すべきでしょう?」

「……本当は、俺から先に言わなきゃならん事だった……。すまない」

 本人にも自覚はあったらしい。
 四人の気が立ち始めた。

 俺は安心した。
 もしここが魔物達がひしめき合うダンジョンの中だったら、間違いなく悲劇が起こる。
 ここで思っていることをぶつけ合えば、その悲劇は回避できる、と。
 怒鳴り合う声を聞かされる周りの冒険者達には気の毒で申し訳ないとは思うが。

 だが、少ししてからコルトの歌声が聞こえてきた。

 彼らの持つ怒りの感情も、俺の申し訳なく思う気持ちも、そしてそれを見ていたサニーの戸惑いも、すべて暖かく包みこんで、眠りの時間が部屋中に訪れた。

 ※※※※※ ※※※※※

 俺は揺り起こされて目を覚ました。
 起こしたのは、件の五人のリーダーと思しき男。

 彼らは俺よりも早く目が覚めて、話し合いをしていたらしい。

「俺達は覚悟を決めた。そしてどんなことになろうとも後悔しないよう、ここで時間を過ごすことにした。だからあんたも覚悟を決めてくれ」

 俺にも覚悟を求める?
 何のことだ。

「あんたの予想が外れた時に、俺達から笑い話の種にされるって覚悟だよ」
「……は、はは。あぁ。そう言うことなら喜んで受け入れよう。笑いものにしてもらって構わん」

 俺は一つの憂いを消すことができた。
 彼らの表情が柔らかいものになったから。

 どんな話し合いをしたのかは聞かなかった。
 ただ、辛い思いや苦しい思いは生きていれば何度もするし、そんな思いはしたくないとも思う。

 けれど、そんな思いをする現実を全て回避することは難しい。
 それをどう受け止めるか。
 その受け止め方次第では、彼らのように前向きに取り組んで、容易く乗り越えることが出来るかもしれない。

 俺は今回は注意する立場になったわけだが、そんな俺でも彼らと同じ立場になるかもしれん。
 自戒と共に、この文章を読むことができる者達へ、俺からのアドバイスとしよう。
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