85 / 196
未熟な冒険者のコルト
コルトの修練
しおりを挟む
過激な兵士の来訪は経験済み。
刃物を押し付けられる貴重な体験も。
だがあの時は二人だけだった。
まぁその親玉と思しき輩から謝罪は受けたからいいけどさ。
しかし今回は……五人か。
幸い、彼らに理性があって助かる。
「こ……ここはどこなんだ……?」
「ジョーキスト領内か? それとも我ら、シアーズ国内なのか?」
いきなりこんな質問してくる連中には、いつものような対応しかできない。
「何だそれ?」
もしもこの部屋にいる冒険者達が彼らの敵対する国の兵だったら、俺の命も危なかっただろうな。
理性がある、と評したのはそこんとこだ。
彼らは冷静に周りを見る。
自分達よりも装備がひどく傷んでいるのを確認していた。
「……我々は訳あって、地中深くトンネルを掘ってそれを迷路とし、敵国の領土内に向けて建築中だった」
「おい、リカード。それを言っていいのか?」
「この者はさっきの名前を聞いていなかったようだぞ? 問題ない」
おい。
おい。
間違っちゃいないけど。
人の悪口は、本人の耳に届かない所でしような?
「元々地中に空間が存在していたようなのだ。我々は地中深く掘り進み、目標地点に達した後水平方向に進んでいったのだが、その空間に当たってな」
膝に矢が当たったとか何とかって話はどっかで聞いたような気がしたが。
穴掘っていたらここの扉がある空間に当たったのか。
「更に進んでいくうちに、敵領地の建物の地下の建築物に当たってしまったようでな。敵に追われて逃げる途中でここに繋がる扉を見つけてな」
何なんだろうな、その扉ってやつは。
いや、ちょっと待て。
「敵に追われて逃げた先がここ?」
「うむ。出来ればわが軍が敗北せぬよう、ここに陣を敷かせてほしいのだがな」
おいおい。
待て待て待て。
その敵がここにやってきたらどうする。
って言うか、今までここに来た連中、全員魔物相手のピンチだったんだよな。
人相手のピンチって、どうすんだ。
ここにいる奴らも巻き添えにするほどの煮え切った戦場にしてほしくないんだが?
しかも五人でどうすると?
「……お前らがどう言おうと、この部屋は俺の家の一部だ。物を壊す行為は厳禁……」
「貴様っ! 我らを愚弄するかっ!」
結局疫病神来訪かよっ。
「すまんが、それは許さんよ」
「そうそう。コウジさんは覚えてねぇかもしれねぇが、俺もあの時ここにいたんだよ。こいつらは結局あの兵士と同じってことだよな」
「……こんな怪我だらけの身だが、その五人だけならすぐにでも息の根、止められるぜ?」
何か、次から次へと物騒なことを言い出し始めたぞこいつら。
「みなさん、ご安心を。その気になったら物の五秒で皆さんを……」
……コルトも随分でかい口を叩けるように……。
いや、ちょっと待て。
俺を巻き添えに……。
え?
おい。
おい。
コルトの歌は確かに聞こえた。
俺の前に立って、守ってくれてる冒険者達も聞こえてたはずだ。
なのに……。
「……コウジさん、どうです? すごいでしょ」
「あ……あぁ……。何……で……」
「私、自分でもこの力のことよく分からなくて、声を出す練習とかしてたんですよ? その成果が発揮できたんですね」
コルトの歌で眠ったのは、その兵士五人だけだった。
※※※※※ ※※※※※
「……う……うぅ……」
「ム……。んん……」
「……ん。あ、あっ! おい、起きろっ!」
ようやくお目覚めか。
随分ぐっすりと眠ってたようだな。
おかげでこっちは……。
「コウジさん。次のトレイ、持っていきますね」
「あいよー」
夜の握り飯タイムに間に合った。
残ってる握り飯も、あとトレイ一つ分だけ。
「あ、あの人たち、目が覚めたみたいですよ」
個人的には握り飯くれてやりたくはないが、順番待ちの行列にこいつらが加わっても、握り飯はまだ残りそうだ。
並ぶな。
並ぶんじゃねえ。
「……行列に並ぶとおにぎりもらえますよ? いかがです?」
余計な事言うなよ、コルト。
「……ここは……」
「ここに来た時はお疲れだったんですよね? 今はどうですか?」
「今は、なんともないっ。そう、それよりここは……」
コルトがこっちを見ている。
やなとこでこっちにふるなよ。
……分かったよ……。
「ここは怪我人とかを休ませるとこ。元気になったら出て行ってもらうとこ。以上」
感じ悪いな。
お互い見合わせてヒソヒソ話か。
けど思ったより素直な反応。
列の一番後ろについて、結局無事に握り飯と水を受け取った。
「……大人しくしてもらえてよかったですね」
いつの間にか近寄っていたコルトが、俺に小声でそう囁いた。
気楽なもんだ。
この部屋を自分の世界の一部だと思い込んでる。
「当然でしょ? コウジさん、この部屋のこときちんと説明しなかったじゃないですか」
うん、まぁ、うん。
そこんとこは、俺が悪かった。
刃物を押し付けられる貴重な体験も。
だがあの時は二人だけだった。
まぁその親玉と思しき輩から謝罪は受けたからいいけどさ。
しかし今回は……五人か。
幸い、彼らに理性があって助かる。
「こ……ここはどこなんだ……?」
「ジョーキスト領内か? それとも我ら、シアーズ国内なのか?」
いきなりこんな質問してくる連中には、いつものような対応しかできない。
「何だそれ?」
もしもこの部屋にいる冒険者達が彼らの敵対する国の兵だったら、俺の命も危なかっただろうな。
理性がある、と評したのはそこんとこだ。
彼らは冷静に周りを見る。
自分達よりも装備がひどく傷んでいるのを確認していた。
「……我々は訳あって、地中深くトンネルを掘ってそれを迷路とし、敵国の領土内に向けて建築中だった」
「おい、リカード。それを言っていいのか?」
「この者はさっきの名前を聞いていなかったようだぞ? 問題ない」
おい。
おい。
間違っちゃいないけど。
人の悪口は、本人の耳に届かない所でしような?
「元々地中に空間が存在していたようなのだ。我々は地中深く掘り進み、目標地点に達した後水平方向に進んでいったのだが、その空間に当たってな」
膝に矢が当たったとか何とかって話はどっかで聞いたような気がしたが。
穴掘っていたらここの扉がある空間に当たったのか。
「更に進んでいくうちに、敵領地の建物の地下の建築物に当たってしまったようでな。敵に追われて逃げる途中でここに繋がる扉を見つけてな」
何なんだろうな、その扉ってやつは。
いや、ちょっと待て。
「敵に追われて逃げた先がここ?」
「うむ。出来ればわが軍が敗北せぬよう、ここに陣を敷かせてほしいのだがな」
おいおい。
待て待て待て。
その敵がここにやってきたらどうする。
って言うか、今までここに来た連中、全員魔物相手のピンチだったんだよな。
人相手のピンチって、どうすんだ。
ここにいる奴らも巻き添えにするほどの煮え切った戦場にしてほしくないんだが?
しかも五人でどうすると?
「……お前らがどう言おうと、この部屋は俺の家の一部だ。物を壊す行為は厳禁……」
「貴様っ! 我らを愚弄するかっ!」
結局疫病神来訪かよっ。
「すまんが、それは許さんよ」
「そうそう。コウジさんは覚えてねぇかもしれねぇが、俺もあの時ここにいたんだよ。こいつらは結局あの兵士と同じってことだよな」
「……こんな怪我だらけの身だが、その五人だけならすぐにでも息の根、止められるぜ?」
何か、次から次へと物騒なことを言い出し始めたぞこいつら。
「みなさん、ご安心を。その気になったら物の五秒で皆さんを……」
……コルトも随分でかい口を叩けるように……。
いや、ちょっと待て。
俺を巻き添えに……。
え?
おい。
おい。
コルトの歌は確かに聞こえた。
俺の前に立って、守ってくれてる冒険者達も聞こえてたはずだ。
なのに……。
「……コウジさん、どうです? すごいでしょ」
「あ……あぁ……。何……で……」
「私、自分でもこの力のことよく分からなくて、声を出す練習とかしてたんですよ? その成果が発揮できたんですね」
コルトの歌で眠ったのは、その兵士五人だけだった。
※※※※※ ※※※※※
「……う……うぅ……」
「ム……。んん……」
「……ん。あ、あっ! おい、起きろっ!」
ようやくお目覚めか。
随分ぐっすりと眠ってたようだな。
おかげでこっちは……。
「コウジさん。次のトレイ、持っていきますね」
「あいよー」
夜の握り飯タイムに間に合った。
残ってる握り飯も、あとトレイ一つ分だけ。
「あ、あの人たち、目が覚めたみたいですよ」
個人的には握り飯くれてやりたくはないが、順番待ちの行列にこいつらが加わっても、握り飯はまだ残りそうだ。
並ぶな。
並ぶんじゃねえ。
「……行列に並ぶとおにぎりもらえますよ? いかがです?」
余計な事言うなよ、コルト。
「……ここは……」
「ここに来た時はお疲れだったんですよね? 今はどうですか?」
「今は、なんともないっ。そう、それよりここは……」
コルトがこっちを見ている。
やなとこでこっちにふるなよ。
……分かったよ……。
「ここは怪我人とかを休ませるとこ。元気になったら出て行ってもらうとこ。以上」
感じ悪いな。
お互い見合わせてヒソヒソ話か。
けど思ったより素直な反応。
列の一番後ろについて、結局無事に握り飯と水を受け取った。
「……大人しくしてもらえてよかったですね」
いつの間にか近寄っていたコルトが、俺に小声でそう囁いた。
気楽なもんだ。
この部屋を自分の世界の一部だと思い込んでる。
「当然でしょ? コウジさん、この部屋のこときちんと説明しなかったじゃないですか」
うん、まぁ、うん。
そこんとこは、俺が悪かった。
1
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる