俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

コルトの修練

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 過激な兵士の来訪は経験済み。
 刃物を押し付けられる貴重な体験も。

 だがあの時は二人だけだった。
 まぁその親玉と思しき輩から謝罪は受けたからいいけどさ。

 しかし今回は……五人か。
 幸い、彼らに理性があって助かる。

「こ……ここはどこなんだ……?」
「ジョーキスト領内か? それとも我ら、シアーズ国内なのか?」

 いきなりこんな質問してくる連中には、いつものような対応しかできない。

「何だそれ?」

 もしもこの部屋にいる冒険者達が彼らの敵対する国の兵だったら、俺の命も危なかっただろうな。
 理性がある、と評したのはそこんとこだ。
 彼らは冷静に周りを見る。
 自分達よりも装備がひどく傷んでいるのを確認していた。

「……我々は訳あって、地中深くトンネルを掘ってそれを迷路とし、敵国の領土内に向けて建築中だった」
「おい、リカード。それを言っていいのか?」
「この者はさっきの名前を聞いていなかったようだぞ? 問題ない」

 おい。

 おい。

 間違っちゃいないけど。
 人の悪口は、本人の耳に届かない所でしような?

「元々地中に空間が存在していたようなのだ。我々は地中深く掘り進み、目標地点に達した後水平方向に進んでいったのだが、その空間に当たってな」

 膝に矢が当たったとか何とかって話はどっかで聞いたような気がしたが。
 穴掘っていたらここの扉がある空間に当たったのか。

「更に進んでいくうちに、敵領地の建物の地下の建築物に当たってしまったようでな。敵に追われて逃げる途中でここに繋がる扉を見つけてな」

 何なんだろうな、その扉ってやつは。
 いや、ちょっと待て。

「敵に追われて逃げた先がここ?」
「うむ。出来ればわが軍が敗北せぬよう、ここに陣を敷かせてほしいのだがな」

 おいおい。
 待て待て待て。

 その敵がここにやってきたらどうする。
 って言うか、今までここに来た連中、全員魔物相手のピンチだったんだよな。
 人相手のピンチって、どうすんだ。
 ここにいる奴らも巻き添えにするほどの煮え切った戦場にしてほしくないんだが?

 しかも五人でどうすると?

「……お前らがどう言おうと、この部屋は俺の家の一部だ。物を壊す行為は厳禁……」
「貴様っ! 我らを愚弄するかっ!」

 結局疫病神来訪かよっ。

「すまんが、それは許さんよ」
「そうそう。コウジさんは覚えてねぇかもしれねぇが、俺もあの時ここにいたんだよ。こいつらは結局あの兵士と同じってことだよな」

「……こんな怪我だらけの身だが、その五人だけならすぐにでも息の根、止められるぜ?」

 何か、次から次へと物騒なことを言い出し始めたぞこいつら。

「みなさん、ご安心を。その気になったら物の五秒で皆さんを……」

 ……コルトも随分でかい口を叩けるように……。
 いや、ちょっと待て。

 俺を巻き添えに……。
 え?

 おい。

 おい。

 コルトの歌は確かに聞こえた。
 俺の前に立って、守ってくれてる冒険者達も聞こえてたはずだ。

 なのに……。

「……コウジさん、どうです? すごいでしょ」
「あ……あぁ……。何……で……」
「私、自分でもこの力のことよく分からなくて、声を出す練習とかしてたんですよ? その成果が発揮できたんですね」

 コルトの歌で眠ったのは、その兵士五人だけだった。

 ※※※※※ ※※※※※

「……う……うぅ……」
「ム……。んん……」
「……ん。あ、あっ! おい、起きろっ!」

 ようやくお目覚めか。
 随分ぐっすりと眠ってたようだな。
 おかげでこっちは……。

「コウジさん。次のトレイ、持っていきますね」
「あいよー」

 夜の握り飯タイムに間に合った。
 残ってる握り飯も、あとトレイ一つ分だけ。

「あ、あの人たち、目が覚めたみたいですよ」

 個人的には握り飯くれてやりたくはないが、順番待ちの行列にこいつらが加わっても、握り飯はまだ残りそうだ。

 並ぶな。
 並ぶんじゃねえ。

「……行列に並ぶとおにぎりもらえますよ? いかがです?」

 余計な事言うなよ、コルト。

「……ここは……」
「ここに来た時はお疲れだったんですよね? 今はどうですか?」

「今は、なんともないっ。そう、それよりここは……」

 コルトがこっちを見ている。
 やなとこでこっちにふるなよ。
 ……分かったよ……。

「ここは怪我人とかを休ませるとこ。元気になったら出て行ってもらうとこ。以上」

 感じ悪いな。
 お互い見合わせてヒソヒソ話か。
 けど思ったより素直な反応。
 列の一番後ろについて、結局無事に握り飯と水を受け取った。

「……大人しくしてもらえてよかったですね」

 いつの間にか近寄っていたコルトが、俺に小声でそう囁いた。
 気楽なもんだ。
 この部屋を自分の世界の一部だと思い込んでる。

「当然でしょ? コウジさん、この部屋のこときちんと説明しなかったじゃないですか」

 うん、まぁ、うん。
 そこんとこは、俺が悪かった。
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