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王女シェイラ=ミラージュ
悪くも良くも、の価値観の相違
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シェイラっつったっけか、あの女王ジュニア。
あれ?
ジュニアって言い方は男を対象にするんだっけか?
んじゃ二世でいいか。
で、コルトもだったけど、流しに立つ俺の横に寄ってきた。
この位置には、避難してきた冒険者達には立たせない。
真後ろには俺の逃げ道があるし、食いもんを好き放題にされるわけにもいかないからな。
おそらく二世のやつは、ただの退屈しのぎに近寄ってきたんだろう。
この部屋や俺へは無関心。
自分の都合を押し付ける、そんな言動だ。
そんな奴が、俺の仕事の足を引っ張りに来るわけがない。
おそらく……。
「……何よ、この白い粒々」
だな。
関心があるのは作業の方か。
「米」
「ふーん」
……それだけかよ。
まぁいいけどさ。
水を入れてかき回す。
水が汚れたら捨てて、また水を入れる。
「ふーん……。綺麗になってくのね」
別に感想は欲しくねぇよ。
手伝う気が起きるか起きないか。
俺に関係あるのはそれだけだな。
「あ、そうだ、ニセイ」
「ニセイ? 何それ?」
あ、つい。
「あーと、シェイラ、だっけか。お前にもやっとくか」
「何を?」
「お前の母ちゃん言ってたろ? 一緒に居させたかったって奴のこと」
「あぁ、他に誰かいたんだったわね。今はもういないんでしょ? それが?」
「いや、そいつにノートと筆記具渡してたんだわ。何か書き留めておくものがあったら暇つぶしになるだろうなってな。お前にも用意しとくわ。忘れないうちに言っとく」
「あ、そう」
俺とニセイの間には、また米を研ぐ音だけ。
「あ」
ニセイが思い出したように声を出した。
でも気にしてらんねえよ。
「私の名前呼ぶの、畏れ多いって言わなかった?」
「……あ」
やばい。
いつまでもネチネチ言われるパターンじゃねぇか?
面倒くさい奴は大概そうだもんな。
口は禍の元だ。
ここはスルー。
「……別に許可とかどうとか言わないから、変な呼び名つけるのだけはやめなさい」
……なんか、ちょっとは素直じゃないか?
ニセイ……もとい、シェイラの方を見ると、こっちにやや背中を向けてるが、炊飯器の釜の中に視線を向けてる。
まぁ部屋の中を見ても何の変化もないしな。
さて、こいつの洗米は終わった。
早速炊飯っと。
で、次……。
足元の米袋は空っぽだった。
ストックの米袋は……シェイラの向こうか。
「あ、すまん。そこの……こいつと同じ袋そっちにあるだろ? ここに持ってきてくんないか?」
「え? あ、これ? まったく……はいはい」
「すまんな……って、え?」
「何よ? ……文句あるの?」
ドスン、と音を立てて俺の足元に置いた。
米袋の重さは何種類かあるんだが、シェイラが持ち上げて移動させた米袋は十キロ。
シェイラの見た目……十四才くらい。
十キロの米袋を表情を変えずに持ち上げて移動させる十四才の少女。
「し……しかも……片手で……だと……?!」
「何言ってんの? 普通でしょ?」
……こいつがもし、コルト並みに俺の仕事を手伝ってくれるなら……。
毎日うどんを食わせてもいい。
たとえ嫌がりながらだったとしてもだ。
嫌いじゃなきゃ、な。
※※※※※ ※※※※※
そんな思いは気の迷いだった。
夜の握り飯タイムのピーチクパーチクうるさいの何の。
お腹空いた。何も食べさせないのか。このお盆一つ丸ごと私の。その他いろいろ。
「お前さ、見て分からんか? ここに来る者のほとんどは苦しい思いをしながらやって来るんだぞ? けど俺は、みんながここに来る前に何をしてたかは分からん。だから贔屓なしに、ひたすら時間を守りつつ、無差別に握り飯配ってんだよ」
むきになって顔を突き出して言い返すのがまた何という我がままか。
「私の空腹の苦しさは伝わらないでしょ?!」
「身につけている物や外見を見比べたら、間違いなくこいつらの方が先だろ」
規則正しい行列は何とか維持。
順番に握り飯を受け取る冒険者達。
だがしかし。
「あ、ほらっ! 今の見たでしょ?! 順番飛ばして割り込んでっ!」
「行列に並べられないほどくたびれてる奴は、周りの者が気遣ってこうして持って行ってやってんだよ! 取りに来た奴が自分の物を取りに来たわけじゃねぇよ!」
グダグダ言わんと、ここでのルールはどうなってるの? くらい聞きに来いよ。
こっちからいちいち説明する気にならねぇよ。
けど、今まで見たことのない冒険者達の反応があった。
「コウジ! この握り飯、何か加えたか?! 味が……かなりいいんだが!」
「味だけじゃねぇ! 何か……腹持ちはいいし……力が湧いてきそうな……」
口々に言う冒険者達。
訳分んないことを言うのはシェイラだけにしてほしいんだがな。
大体握り飯に何にも小細工してねぇよ。
毎日毎回やってることと今回、全く変わらねぇよっ。
あれ?
ジュニアって言い方は男を対象にするんだっけか?
んじゃ二世でいいか。
で、コルトもだったけど、流しに立つ俺の横に寄ってきた。
この位置には、避難してきた冒険者達には立たせない。
真後ろには俺の逃げ道があるし、食いもんを好き放題にされるわけにもいかないからな。
おそらく二世のやつは、ただの退屈しのぎに近寄ってきたんだろう。
この部屋や俺へは無関心。
自分の都合を押し付ける、そんな言動だ。
そんな奴が、俺の仕事の足を引っ張りに来るわけがない。
おそらく……。
「……何よ、この白い粒々」
だな。
関心があるのは作業の方か。
「米」
「ふーん」
……それだけかよ。
まぁいいけどさ。
水を入れてかき回す。
水が汚れたら捨てて、また水を入れる。
「ふーん……。綺麗になってくのね」
別に感想は欲しくねぇよ。
手伝う気が起きるか起きないか。
俺に関係あるのはそれだけだな。
「あ、そうだ、ニセイ」
「ニセイ? 何それ?」
あ、つい。
「あーと、シェイラ、だっけか。お前にもやっとくか」
「何を?」
「お前の母ちゃん言ってたろ? 一緒に居させたかったって奴のこと」
「あぁ、他に誰かいたんだったわね。今はもういないんでしょ? それが?」
「いや、そいつにノートと筆記具渡してたんだわ。何か書き留めておくものがあったら暇つぶしになるだろうなってな。お前にも用意しとくわ。忘れないうちに言っとく」
「あ、そう」
俺とニセイの間には、また米を研ぐ音だけ。
「あ」
ニセイが思い出したように声を出した。
でも気にしてらんねえよ。
「私の名前呼ぶの、畏れ多いって言わなかった?」
「……あ」
やばい。
いつまでもネチネチ言われるパターンじゃねぇか?
面倒くさい奴は大概そうだもんな。
口は禍の元だ。
ここはスルー。
「……別に許可とかどうとか言わないから、変な呼び名つけるのだけはやめなさい」
……なんか、ちょっとは素直じゃないか?
ニセイ……もとい、シェイラの方を見ると、こっちにやや背中を向けてるが、炊飯器の釜の中に視線を向けてる。
まぁ部屋の中を見ても何の変化もないしな。
さて、こいつの洗米は終わった。
早速炊飯っと。
で、次……。
足元の米袋は空っぽだった。
ストックの米袋は……シェイラの向こうか。
「あ、すまん。そこの……こいつと同じ袋そっちにあるだろ? ここに持ってきてくんないか?」
「え? あ、これ? まったく……はいはい」
「すまんな……って、え?」
「何よ? ……文句あるの?」
ドスン、と音を立てて俺の足元に置いた。
米袋の重さは何種類かあるんだが、シェイラが持ち上げて移動させた米袋は十キロ。
シェイラの見た目……十四才くらい。
十キロの米袋を表情を変えずに持ち上げて移動させる十四才の少女。
「し……しかも……片手で……だと……?!」
「何言ってんの? 普通でしょ?」
……こいつがもし、コルト並みに俺の仕事を手伝ってくれるなら……。
毎日うどんを食わせてもいい。
たとえ嫌がりながらだったとしてもだ。
嫌いじゃなきゃ、な。
※※※※※ ※※※※※
そんな思いは気の迷いだった。
夜の握り飯タイムのピーチクパーチクうるさいの何の。
お腹空いた。何も食べさせないのか。このお盆一つ丸ごと私の。その他いろいろ。
「お前さ、見て分からんか? ここに来る者のほとんどは苦しい思いをしながらやって来るんだぞ? けど俺は、みんながここに来る前に何をしてたかは分からん。だから贔屓なしに、ひたすら時間を守りつつ、無差別に握り飯配ってんだよ」
むきになって顔を突き出して言い返すのがまた何という我がままか。
「私の空腹の苦しさは伝わらないでしょ?!」
「身につけている物や外見を見比べたら、間違いなくこいつらの方が先だろ」
規則正しい行列は何とか維持。
順番に握り飯を受け取る冒険者達。
だがしかし。
「あ、ほらっ! 今の見たでしょ?! 順番飛ばして割り込んでっ!」
「行列に並べられないほどくたびれてる奴は、周りの者が気遣ってこうして持って行ってやってんだよ! 取りに来た奴が自分の物を取りに来たわけじゃねぇよ!」
グダグダ言わんと、ここでのルールはどうなってるの? くらい聞きに来いよ。
こっちからいちいち説明する気にならねぇよ。
けど、今まで見たことのない冒険者達の反応があった。
「コウジ! この握り飯、何か加えたか?! 味が……かなりいいんだが!」
「味だけじゃねぇ! 何か……腹持ちはいいし……力が湧いてきそうな……」
口々に言う冒険者達。
訳分んないことを言うのはシェイラだけにしてほしいんだがな。
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毎日毎回やってることと今回、全く変わらねぇよっ。
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