俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
108 / 196
王女シェイラ=ミラージュ

一枚しかない俺の舌先は……三寸はゆうにある

しおりを挟む
 さて。
 腹も落ち着いたし、気持ちも落ち着いた。
 ただでさえ気が立ってたんだ。特にシェイラは。
 それじゃ正常な思考も判断もできないっつーの。

「それで……どうするの? こいつら」
「何度も言う通り、俺には打つ手はないし、手を打つつもりもない」

 ……そんなに注視されてもな。

「理由を……聞いていいですか?」

 やはり襲われた元怪我人は心配するか。
 そりゃそうだよな。殺されかけたくらいだからな。

「理由って……。俺にはこいつらの行動を制限させる力はないし、やっちゃダメって禁止してもしちゃうだろ。したいんだから」

 したいからしちゃったら死体が増える。
 そんなこともあるわけだ。

「コウジ……。あなた本気で言ってるの?」
「他に手があるんなら教えてもらいたいもんだ。俺は静観。それしかできねぇよ」
「コウジさん……何か考えがありそうですね?」

 双剣戦士、何か鋭いな。

「……何でそう思う?」
「にやついてますよ? 何となく、そう見えます」

 まぁ腹に一物はあるわけだが。

「隠し事は良くないわよ? 特に私に」

 しょーがねぇなぁ。
 言葉も時には人を傷つける道具になるってこと、教えてやろうかね。

「まぁこいつらは俺の握り飯で金もうけを企んだわけだ。そして守銭奴なんて二つ名が生まれる程のことをしでかしてるわけだよな?」
「まぁ、そういうことね。そっち方面で随分実績を上げたってことよね」

 二人の冒険者は複雑な顔をしてる。
 まぁしょうがねぇよな。

「こいつら、そのうち誰かを敵に回すことになる。けどこいつら自身はそこまで考えてねぇはずだ」
「……敵に回す?」
「そんな相手、誰かいるのか?」

 四人に目を向けるが、口もガムテープで塞がってるため、こいつらは何も言えない。
 聞く気もないがな。

「そうだなぁ……。こいつらに殺されかけたって言ったな?」
「あぁ。こいつら、結構腕が立つぞ」
「で、あんたは普通の冒険者って訳だよな?」
「あぁ。それが?」
「その仕事の依頼人はどこかの組織だったりするのか?」
「いや、一般人だ。レアなアイテムが欲しいって頼まれてな」

 危険地帯でなけりゃ見つけられない代物か。
 そこで商売始めるこいつらも図太いというか向こう見ずというか……。

「その依頼人がもし国だったら?」
「国?」

 双剣の戦士も首をかしげてる。
 分かんないかな?

「国から依頼を受けた冒険者が、どこの馬の骨とも分からない奴に殺されかける。前金とかもらってなくても、依頼を受けてくれた冒険者の命が、魔物ではなくどこぞの者によって落とされかけたんだ」
「国がその真相を突き止めないわけにはいかない、か」
「ましてや守銭奴なんて噂が流れている最中だろ?」

 双剣の戦士が両手を叩く。
 分かったらしいな。

「そうかっ。おにぎりの救世主は守銭奴になったわけじゃなく、相変わらず救世主としての活動をしている。現に俺が確認したっ」

 救世主はやめろっつーの!

「この部屋に来る入り口はこいつらがいる場所だけじゃない。独り歩きした、コウジさんは守銭奴という噂もいずれは消える。じゃあ噂の出所はどこだって話になった時……」
「依頼を受けた冒険者に重傷を負わせた。それが同一人物で、国からの依頼なら……」

 元怪我人にも理解できたらしい。

「そ。国から追手がかかる。まぁそれで話は終わりになるが、もしこいつらが何かの組織の末端とかだったら……」「その組織からも追われるかもしれない? 国によって組織が潰されるかもしれないんだもん。この四人を生贄にすることで組織が存続できるかもしれないなら、喜んでこいつらの首を差し出すわよね」

 何かこいつら、青ざめてきてるような気がするが……気のせいだよな、うん。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...