俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
109 / 196
王女シェイラ=ミラージュ

結局ある程度はこっちが折れるしかないのだが 一応の落着

しおりを挟む
「ちょっと待って、コウジ。根本的な解決法じゃないんじゃない? それは」
「根本的な解決?」
「そう。こいつらが例え考えを改めたとしても、第二、第三のこいつらが現れる」

 あぁ、そういうことか。

「うん。その時は」
「その時は?」
「諦めろ」
「……コウジ」
「何だ?」
「そこに直れ。その口をぶった切ってくれる」

 わお。
 何という過激なことを。
 かの国の次世代の女王サマが仰せになられる言葉が、よりにもよってこれとはっ。

「しょうがねぇだろ? 金儲けに利用されるほどの価値があるってこと。そう解釈するしかない」
「私の力への評価としては有り難いわよっ。でも、そのおにぎりが必要な人にとっては、余計な出費を強いられるってことじゃないの?」
「俺の握り飯を受け取ることができる場所は、ここ以外にないのだが?」
「そんなこと分かってるわよ!」
「ここ以外で手に入ること自体あり得ないんだよ。それどころか、目に触れること自体ない。だから噂には余計な尾ひれがついちまう」

 握り飯の効果にばかり焦点が当てられる。
 誰が好き好んで、その握り飯を得るために自分の命を危険に晒すかっての。

 誰もがそう思ってるだろうことは、作ってる俺だって容易に想像できる。
 だからそんな状況からは目を逸らしたい。

 けど握り飯は欲しい。
 楽に手に入れられるなら、それくらいの出費なんか気に留める程じゃない。
 そう考える奴はごまんといるってことだ。

 ……思考が主旨からずれてるな。

「手に入らない物が手に入る。その分の代償は必要だろ? だがその代償の行き先は、俺とは無関係な場所にいく。俺がそこまで運べるわけがないからな。もちろんそこに運んでくれと頼むつもりもないし、むしろ拒否する」

 責任問題っていうトラブルが生まれそうなこととは極力距離を置きたい。
 俺が背負える責任は、せいぜいこの雑貨屋で精いっぱい。
 握り飯づくりで問題が起きりゃ、こっちはただの善意だから、やめてくれと言われりゃすぐにやめるさ。
 けど残念なことに、喜ぶ奴らが多すぎた。

「結局、お前さんの術の効果については、売買が成立している間は失効してるわけじゃないってことは分かる」

 俺一人で握り飯を作ってた頃には起きなかった事案だ。
 不本意だろうが、それだけシェイラの術の効果が評されている、価値がある。
 つまりは、そういうことだ。

「しかしこの部屋で休息できるだけでも助かる。だがそれを妨害……いや、拒絶……でもないな。コウジさんの意に反して立ち入り禁止にする者がいるのは、これは許せないことだ」
「そうです。我々の世界からここに来れるすべての扉をこの者達の私利私欲のため封じられる可能性もある」

 おっと、それはこっちにとっては勇み足になる話題だ。

「そっちの世界でのことなら、そっちで解決しろよ。扉を一度も見たことがない俺にどうしろと?」

 何でもかんでもおんぶに抱っこされてもな。
 そっちの世界のことはそっちで解決しろよ。
 もし介入できるんであるならば、このじゃじゃ馬の母親までしゃしゃり出てくるぞ?
 異世界間戦争の引き金になったりしてな。

 傍観者の立場に立てたら……。
 やべぇ。
 それはそれで面白そうだ。

「何ニヤニヤしてんのよ」

 顔に出ちまったか。

「まぁ結局はものの見方を変えれば、納得できる話にもなるし理不尽に感じる話にもなる。どのみち、お前が俺の手伝いをしている限りは、そういう意味では傍観だ」

 シェイラは不満そうだが、何度も言う通り手の届かない世界での話は、そっちで頑張って解決してもらうしかない。

「……で、こいつらはどうする?」
「俺は……しかるべきところに連行すべきと思うんだが。殺されかけたしな。手を下してもいいが、こいつらの不義な行為を晒す必要もある」
「おう、そんな話は俺らの耳の届かない所でしろよ。そっちの世界にとっちゃ、俺は部外者だぜ? 部外者に首突っ込まれたくはないだろ? ガムテープくらいならくれてやる。とっととこっから追い出しとけ」

 芋虫状態の四人をさらにまとめてひと塊。
 二人がかりでそれを転がして、ようやくこの部屋から退室と相成った。

「……こんな面倒なこと、二度とごめんだわ」
「楽してズルして金儲け。いい商売だな。こっちにはそんな効果は出ないってのになぁ。羨ましい限りだ」
「効果があっても、マネしてほしくないわね。それ相応の見返りであればいいけど」
「いいけど……って、お前、それ拒否しまくってるじゃねぇか」
「拒否? 見返りなんてあったかな」

 感謝を態度で表す連中を拒否して、他の見返りを求めるって、それはそれで生々しい話だと思うぞ?
 しかも一国の王女の小娘が、だ。

 その国、将来が心配だよ?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...