俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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王女シェイラ=ミラージュ

シェイラの手記:錬金術師見習い少年のアール君ってば

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 アール……って名前らしいんだけど。
 錬金術師を目指してるらしくって、まだ見習いなんだって。
 師匠らしい人からはもっと勉強しなさい、といつも言われてるみたい。
 まぁ私もお母様から「社会勉強してきなさい」とは言われたけど……。

 でも見習いでよかった。
 もしもこの子が一人前だったら、正しいと思い込んでる自分の行動を押し通しただろうから。
 そしたらコウジはきっと、おにぎり作りを放棄してただろうな。

 とりあえず、昨日私も注意された、その目的について話し込んでみた。

「目的を変えず、最後までやり遂げるってことですね。つまり、あのおにぎりを作る目的よりも、僕の研究の目的を大事にするということで」
「違う」

 そんなことしたらまた最初のご飯粒の話に戻っちゃうでしょうに。

 ……屋敷にいた頃は、一通りの勉強はそれなりに習った。
 錬金術も、それなりに知識はある。
 技術の腕前は、見習い程度は簡単に超えてると思うけど、専門業を目指す人にはかなわないとは思う。
 けど、錬金術はなぜ存在するのか。
 それくらいは分かる……けど、誰かに説明するのはちょっと難しいかも……。

「何のために錬金術っていうのがあるのかってこととかは勉強した?」
「えっと、そんなことよりも、やっぱり師匠みたいな偉大な錬金術師になれるように、その技術をもっと高めるべきと思いまして」

 好きなことばかりをやらせてもらえてたっぽいかも。

「あちこち足を運んでいろんな物を見て回りなさいって言われました。この装備、ボロボロですけど、新品のを師匠が用意してくれたんですよね」

 ほら。
 やっぱり見聞を広めるようにってことじゃない。

「で、噂が聞こえてきまして」
「噂?」
「はい。なんか丸っぽい、白い塊の食べ物があるって聞きまして」

 随分あやふやな噂ね。

「回復薬にしては効果が高いって」

 考えてみれば、私はそういうことでここに来たんじゃなかったのよね。

「それで?」
「その場所の噂は、きけば聞くほど、伝説めいた話だなーとは思いましたが、助けてもらえるならどんな危険地帯でも問題ないかなって」

 か、軽くない?
 死んじゃうかもしれない場所に行くことになるっていうのに。

「……よくそんなところに行く気になれたわね」
「気ままな一人旅でしたからね。でもおにぎり……って言うんでしたっけ。研究のために持ち帰れないなんて、ちょっと残念ですね」

 まだ懲りてないのかしら?

「でも収穫はありますよ。怪我や病気が治るまでの様子とかは見れますから」
「まさか一人一人にその状況聞いてまわってたりは……」
「またコウジさんに止められるとますます研究しづらいですから、遠目で観察するくらいですよ。でも長期滞在する方はおられないようなので、期待するほどの収穫はないですけどね」
「……私はコウジの手伝いをさせてもらえてるけど、あなたはそうじゃないんだから、他の冒険者とトラブルが起きても誰もかばってくれないからね?」
「はーい」

 でも錬金術っていろんな物を作り出す術だと思うんだけど、ここで得る物といったらおにぎりの作り方だけじゃないの?
 まぁ本人がいいって言うならいいんだろうけど……。
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